Feature NAFICの特長

special Interview

「食」の知識と「農」の知識。

日本初の学内オーベルジュに食のプロも賛同 日本初の学内オーベルジュに食のプロも賛同
  • 荒井現在、日本の重要課題である地方創生において、私は「食」が大きな役割を果たすと考えています。例えば、山深いレストランであっても、味が美味しい、宿泊ができる、土産物も買えるとなれば、多くの人を寄せつけ、地域に価値をもたらす存在となります。ただ、日本には食を拠点とした地域づくりという観点がなかった。そこで、その担い手となる人材育成を目指し、「なら食と農の魅力創造国際大学校(以下NAFIC)」の開校に至りました。
  • 平松NAFICの目的を聞いて、「私の人生はこれだ」と感動しました。フランス料理界の門を叩いて40年以上の時を経た今、次世代の育成という恩返しが私に与えられた使命だったからです。料理の技術を教える学校は星の数ほどありますが、経営やサービスについても教え、成功に導く学校は今までなかった。しかもオーベルジュ併設は初の試みでしょう。
  • 荒井奈良は国内外から多数の観光客に訪れていただいておりますが、その値打ちはまだ十分に認知されていません。というのも、「泊」=宿泊施設において納得の提案ができていないから。しかし、食と泊が整えば、奈良はすごいポテンシャルを発揮できます。NAFICの実践施設としてはもちろん、このオーベルジュが奈良の食と泊の規範となってほしい。同じ理想を持つ平松会長に運営をお任せできることに感謝しています。
2つの学科の化学反応が双方の発展につながる 2つの学科の化学反応が双方の発展につながる
  • 平松奈良は大都市でありながら、空気がきれいで、食べ物も美味しい。その代表が大和野菜ですよね。
  • 荒井奈良は土壌が肥沃で、寒暖の差が大きいことから、良質の野菜ができます。
  • 平松私たち料理人は生産者がいなければ何もできません。良い食材があるから、美味しい料理を作ることができる。だから料理人は足を使っていい食材を探します。生産者に「こんなものが欲しい」と依頼することもありますね。私の店に“桃のコンポート”という名物メニューがあるのですが、使う桃は山梨の農家に生産や収穫の方法までこだわって、味が凝縮された小さいサイズの桃を作っていただきました。
  • 荒井農家は効率や利益を求めるだけでなく、料理人、それを口にするお客様、消費者のことまで考えて生産することが重要ですね。さらに、「この時期はこの栄養素が多い」「調理や温度によって味わいも口溶けも変わる」といった野菜の魅力や特長を料理人に提案していくことも必要ではないでしょうか。
  • 平松もちろんです。料理人と生産者が互いに提案し、刺激しあえば、素晴らしい化学反応が起きます。それが料理界、農業界の発展につながるのです。
  • 荒井そういった意味でも、全国で初めて「食」と「農」が連接した育成施設・NAFICの意義は多大です。
  • 平松これから「食」「農」の世界で成功するには、料理人は農業や食材の知識を、生産者は食のニーズを知り、共に経営やマーケティングといったセンスに優れていることが不可欠。これを学べることこそ、NAFICの醍醐味だと思います。
飛鳥からの国際都市・奈良の「食」「農」を世界へ 飛鳥からの国際都市・奈良の「食」「農」を世界へ
  • 荒井奈良はシルクロードの終着地。飛鳥時代から外国人で賑わう国際都市でした。そのため、諸外国から奈良に伝わり、全国に広まった食材も数多くあります。
  • 平松広まるという点では、私が審査員を務める国際料理コンクール「ボキューズ・ドール」では、意外な食材がテーマに取り上げられます。誰も知らなかった、見向きもされなかった食材が世界のトップシェフの発想により新たな料理に生まれ変わった瞬間、その食材は世界中のレストランに広まるのです。
  • 荒井大和野菜をはじめ、奈良の食材の良さには自信があり、私自らトップセールスをしていますが、ここからさらに広まる可能性があるわけですね。
  • 平松そうです。NAFICのオーベルジュで奈良の食材を使い、奈良らしさを存分に表現していきます。また、NAFICに全国のトップシェフが集い、学生と共に「Farm to Table」というコンセプトそのままに、奈良の「食」と「農」を世界にも発信していこうと思っています。
  • 荒井NAFICでフランス料理、オーベルジュと「洋」にこだわったのは外国人観光客の誘致はもちろん、いにしえより国際色豊かな奈良の食と農の世界発信も視野に入れてのことです。欧米には料理も居心地も良いオーベルジュが数多くあり、人びとが癒やされ、鋭気を養っています。日本でそういった施設を食、農、サービス、経営の真髄を知った人材が手がければ、より精度の高いものができる。奈良だけでなく、それが全国に広がれば地方の文化度の格段の向上にもつながるでしょう。つまり、NAFICは地方創生も担う大きな事業と位置づけられるのです。
ふるさとのリーダーとして活躍を期待 ふるさとのリーダーとして活躍を期待
  • 平松現代のフランス料理に多大な影響を与え、“料理の神様”と称されるフェルナン・ポワン氏の『若者よ、ふるさとに帰れ。その町の市場に行き、その町の人のために料理を作れ』という根本原理があります。私はこれからの奈良、日本にはこの理念が不可欠だと思います。奈良で育ち、学んだ人が奈良の食、農を支える。NAFICから奈良、そして自身のふるさとに貢献できる優れた人材を一人でも多く育てたいし、全力を尽くす所存です。
  • 荒井私はNAFICで「食」「農」のリーダーとなる人材輩出を実現したいと思っています。そのためにオーベルジュの整備をはじめ、これまでになかったカリキュラムを策定しました。NAFICの卒業生が、奈良、日本、そして世界の「食」「農」を牽引してくれることを期待しています。
  • なら食と農の魅力創造国際大学校 校長 平松 博利

    1952年生まれ。横浜市出身。東京YMCA国際ホテル専門学校入学と同時にホテルオークラ入社。フランスで修行後、1982年、東京・西麻布に「ひらまつ亭」開業。2001年、パリで日本人オーナーシェフとして初のミシュラン1つ星を獲得。「ひらまつ」をはじめ複数のレストランブランドを有す敏腕経営者でもある。
    現在株式会社ひらまつ 会長。

  • 奈良県知事 荒井 正吾

    1945年生まれ。大和郡山市出身。東京大学法学部卒業後、運輸省(現:国土交通省)入省。米国シラキュース大学マックスウェル行政大学院卒業、同大学行政学修士取得。2001年、参議院議員初当選、外務大臣政務官、参議院文教科学委員長などを歴任。2007年、奈良県知事就任。趣味は散歩。座右の銘は「好事不如無(好事も無きに如かず)」

(平成28年4月1日現在の内容です)