Staff Blog

スタッフブログ

  • 2023.08.18

    文化村クリエイション vol.4 山本糾  第1回 現場レポート

    文化村クリエイション vol.4 山本糾
    第1回 現場レポート 2023.7.22-23

     

     
    ■「文化村クリエイション vol.4 山本糾」について
    写真家・山本糾(やまもと ただす)さんを招聘し、7~10月に数回の撮影と、2024年1~2月になら歴史芸術文化村(=文化村)で、新作を含む展覧会を開催する予定です。
    「文化村クリエイション」は新作の創作を行うと同時に、創作を開いていくことを試みています。創作の過程には、必ずしも作品に表れない発想のかけらや逡巡があります。一見無駄とも思える部分へ宿る豊かさに、触れるきっかけとなることを目指しています。
    山本さんの創作を開く方法として、今回はドキュメンタリー映像を制作しています。映像作家・奥田しゅんじさんが初回の撮影から同行し、その様子を映像撮影しています。
    山本さんは一貫して様々な形態の水をモノクロで撮影し、この世界にはたらく大きな力のようなものを捉えようとしてきました。これまで全国各地で撮影をしてきた山本さんは、奈良でどのような作品を制作するのでしょうか。

     

    7月22日~23日、本プロジェクト初回のロケハン/撮影を行いました。メンバーは山本さんと映像・奥田さん、本企画担当の遠山の3名です。
    こちらでは、2日間の様子を遠山がレポートします。


    7月22日(土)晴れ

    9時 文化村集合。
    普段から、撮影したい場所を探すロケハンをしつつ、撮れそうな場所とタイミングがあれば撮影もしていくとのこと。
    これまでの作品でモチーフとして登場したことのある、滝や河川、古墳、森などを中心に、この日は10か所程を車で回りました。

    ○行燈山古墳
    崇神天皇陵といわれる行燈山古墳。文化村周辺には古墳が多数点在しており、こちらも車で10分程のご近所です。景色に覚えがあり、どうやら以前いらしたことがあるとのこと。
    被写体とするかどうかは、場所そのものの良し悪しというよりは、作品にした際にどうか、という観点が強いようです。

    ○箸墓古墳
    撮影は基本的に曇りに行うとのこと。陽の当った部分を強調せず、なるべく全てを均一に捉えたい、と話す山本さん。絵画で言えば、オールオーヴァーのような。
    この日の午前中は快晴。撮影のために再訪するかは持ち帰り検討です。

     

    箸墓古墳

    ○天理ダム
    ダムは他でなかなかない圧倒的なスケールが魅力のひとつとか。今年は梅雨の降水量が少なく、放水しているダムは少ないようです。

    ○桃尾の滝
    暑い日で、子どもたちが水遊びをしていました。滝も水量は少なく。

    ○龍王山
    数百基にのぼる古墳群や城跡が山中に残る龍王山。
    垂直にまっすぐ生える木と倒木の混在する森に関心を持たれたようで、スマートフォンで撮影し、モノクロ加工してイメージを確認されていました。

    ○室生ダム
    午後は室生方面へ。
    室生ダムでは一部放水しており、ちょうど曇ってきたタイミングで、今回初めて山本さんがカメラと三脚を取り出しました。ロケハンでなくても、常に作品となり得る場所は探しているという山本さん。ずっと見つからない時もあれば、通り過ぎた後に気になって少し戻るようなこともあるとのこと。撮影した写真が、必ずしも全て作品になるとも限りません。

     

    室生ダム

    ○龍鎮の滝
    室生赤目青山国定公園内、大きな岩が印象的な一帯です。車道から脇道に逸れ、川沿いをしばし上ると神社と滝がありました。
    森が深く、水のスピードも速いため、このような場合はもう少し明るい方がよいとのこと。

    ○垂仁天皇陵
    奈良市方面へ。
    古墳は、木々の垂直と濠の水平のコントラストが大きなポイント。また、濠が結界としてしっかり隔てているのも魅力のようです。

    ○磐之媛陵、ウワナベ古墳
    山本さんが奈良県内でこれまで撮影されたことがある場所が、垂仁天皇陵と磐之媛陵の2か所です。(2008-09年)作品のつくり方も常に変化していくため、一度撮影した場所に再度取り組む可能性もあるということです。


    7月23日(日)晴れ

     

    9時 文化村集合。

    ○鶯の滝
    車で向かい、奈良奥山ドライブウェイを通っていった先、春日山原始林の中に鶯の滝はあります。奈良市内を流れる佐保川の源流です。
    今回のロケハンでは2回目、カメラを構えておられました。曇っている間にシャッターを切り、陽が射すと手が止まる、雲の動きと息と合わせての撮影が印象的でした。

    ○春日宮天皇 田原西陵
    結界のすぐ手前では畑が営まれており、天皇陵と生活が密接しています。

    ○柳生
    柳生新陰流の発祥の地として知られる柳生。いくつかの場所を見て回りました。


    その場所で何を見て、考えているのか、少しずつ伺うことができました。
    次回の撮影にどのようにつながっていくのか、楽しみです。


    文:遠山きなり

    (なら歴史芸術文化村アートコーディネーター、文化村クリエイション企画者)

     
  • 2023.06.21

    「幼児向けアートプログラム」の実践事例紹介をしました。


    2023/05/28に大阪で「語り合い、響き合う 旅するMOSAICO」シンポジウムが開催され、
    私たち職員が1年間企画、実践した「幼児向けアートプログラム」の事例紹介をしました。

     

    世界各地で巡回展が行われている、レッジョ・チルドレンの展覧会「もざいくー描くこと、言葉、素材が紡ぐ物語りー」の監修をおこなったレッジョ・チルドレンの Educator(元、ディアーナ幼児学校教師、
    ドキュメンテーションセンター長、現在国際広報・研修担当)Marina Castagnetti氏を講師にお迎えし、
    展覧会が世界を巡回する意味を日本国内での実践事例なども交えながら語り合う場となりました。

    「幼児向けアートプログラム」では「そざいきち」「てでかんがえる」2つの事業を行っています。
    「そざいきち」では0-6歳の未就学児を対象に、自然の素材や身近なもの などを使用し、素材との出会い、あそびを楽しみます。
    「てでかんがえる」では就学前の5-6歳の子どもたちが、奈良の文化や素材に触れ、みんなで相談し考えながら探究や創作活動を行います。

     

    2022年度の「そざいきち」では「ひかりとかげ」「いろらぼ」「つむ・ならべる・つながる」の3プログラムを開催しました。


    3ヶ月間開催した「つむ・ならべる・つながる」ではサイズの違う塩化ビニールパイプを用意しました。

    期間中に6回参加した2歳のAちゃん。当初はパイプを並べる、積む、崩す遊びをしていました。 最初は難しかった「パイプを繋ぐ」ことに何度も何度も挑戦し「できた」と呟きました。 
    同じテーマを長期間提供すると、何度も参加する子どもがいて、難しいことにも挑戦し少しづつ遊び方が変容します。 またスタッフと子どもとの関係や、環境にも変化が生まれました。 

     

     

    「てでかんがえる」では奈良県の素材を活用し、vol.1では「和紙」、vol.2では「粘土」を使用しました。

    vol.2「粘土」の事例です。

    6日間同じメンバーで「粘土」で何ができるか相談しながらすすめました。

    粘土の形状が変わることを発見、共有した子どもたちは、粘土に「ふつう」「ドロドロ」「かたい」「かたくない」「ふわふわ」「つるつる」など名前をつけて「どんな粘土で何をしたか」を発表しました。

     

     

    年度末にはプログラムを振り返る「そざい あそび まなび展」を開催しました。 

    来館者に子どもの姿や表情、言葉を共有してもらうために、写真や動画に重点を置いた展示です。

    プログラムをミニ体験できるスペースも設けました。 

     

     私たちが大切にしていること。

    ・奈良県の素材を活用し子どもの頃から親しむ。 

    ・子どもが何をするか、事前に想像して道具や環境を準備する。 

    ・子どもの実際の行動を見て、翌日以降の道具、環境を用意する。

    ・子どもの学ぶ機会を奪っていないか。

    ・選択、失敗、挑戦する場所になっているか。

     

    多くの方に文化村の取り組みを紹介することができ、沢山の貴重なご意見をいただきました

    これからも、日々どのように子どもと向き合うか、どうすべきだったのかを話し合い、

    改めて子どもと向き合っていきたいと思います。

    そして今後は、奈良県内の保育士、幼稚園教諭、教育関係者の方々と意見交換や情報共有の場も設け、一貫した課題と価値観を共有し、取り組みを継続したいと考えています。 

  • 2023.05.31

    なりきり調査員!馬のハニワで実測体験

    2023年4月16日に、開村一周年記念展「山辺の道」関連ワークショップを開催しました。

     

     

     

    天理市の荒蒔古墳(6世紀)より出土した馬形埴輪は、1年前の開村展「やまのべの文化財-未来に伝えるわたしたちの至宝-」ではチラシの顔となり、展示室入口で我々を出迎えてくれた、思い出深い埴輪です。その馬形埴輪と同じく荒蒔古墳から出土した、馬具の装飾がない(裸馬の)馬形埴輪の実寸大木馬が、今年の春完成しました!
     
    木馬を制作するにあたり、3Dデータを計測したのが奈良県立大学の山田修先生です。今回は、山田先生を講師にむかえ、3Dデータを応用して量産された1/5サイズのレプリカを使って実測作業を体験しました。

     

     

     

    「スコヤ」という自立する金属のものさしを立てて、埴輪の側面の穴の上下と左右の位置を取ります。実測図のシートに縦軸と横軸の目盛りを記入して、レプリカの下に敷いたシートの目盛りと照らし合わせながら、円の接点を記入する仕組みです。埴輪の穴の真横(水平の位置)から見つつ、スコヤの目盛りをミリ単位までとらえるために、ものすごい低姿勢で、目をこらして約90分。そろそろお開きにしようと、こちらから声を掛けても集中し続けている方がいて驚きました。

     

     

    「難しい分達成感があった」「ものさしで測って絵を描くのがおもしろい」というコメントが、アンケートに寄せられました。「ほかのハニワの実測もやってみたい」というご意見は複数あり、作業自体はとても地味ながら、大変好評ということが分かりました。

     

    荒蒔古墳出土の馬形埴輪型木馬は、文化財修復・展示棟の1階ロビーに常駐しています。大人が乗っても大丈夫なので、ぜひまたがって記念写真を撮っていって下さい!

     
  • 2023.04.26

    AIRってなんだろう?ーなら歴史芸術文化村滞在アーティスト誘致交流事業を終えてー

     

    nakaio

     

    突然ですがAIR(エイ・アイ・アール)という言葉をご存じですか?

    この言葉は、アーティスト・イン・レジデンスの略で、アーティストが一定期間その土地に滞在し、日頃制作していない環境下で作品制作を行い、発表などを行うことをいいます。滞在することで、その土地の人々や環境に触れることができ、アーティストにとって刺激のある活動です。AIRは世界各地で行われており、募集内容や支援内容も様々でアーティストは自分にあったものを選び、審査等を経て滞在し活動ます。                              写真:衣笠 名津美

     

    onishi奈良県では、天理市が平成30年度より、アーティストを誘致し、市民がアートに触れる機会を創出するなど「芸術文化に出会える街」として先行的な取り組みを展開していたことから、今回なら歴史芸術文化村開村を機に「なら歴史芸術文化村滞在アーティスト誘致交流事業」として継承することとなりました。第1回目のアーティストとして選ばれたのは、美術家の中尾美園さん(前期)、ダンサー/パフォーマンスアーティストの大西健太郎さん(後期)のおふたりです。

    ぜひ以下のURLより、この半年間の記録をご覧下さい。

     

    滞在記録・記録集 https://sites.google.com/view/narabunkamura-air2022

     

    記録映像 なら歴史芸術文化村YouTubeチャンネル

     

     

  • 2023.03.30

    文化財をもっと身近に!なら歴史芸術文化村の体験型ワークショップ

     なら歴史芸術文化村では、来村者のみなさんに文化財を身近に感じてもらうために、様々な体験型ワークショップを開催しています。今回は中でも「下張り文書 解体ワークショップ」と、「見る 知る 学ぶ 仏像のつくり方」をご紹介します。

     

     令和4年12月27日に「下張り文書 解体ワークショップ」を開催しました。屛風や衝立に下張りとして使われている古文書をはがすワークショップです。今回のワークショップで使用した衝立は、奈良県内のとある旧家に伝えられたものです。家屋の解体にともなって衝立を文化村で引きとり、下張り文書を取り出すためワークショップを行うことになりました。

     講師として、現在なら歴史芸術文化村の絵画・書跡等修復工房で日々装潢文化財の修理をおこなっておられる株式会社文化財保存の今田淳さんをお招きしました。はじめに模型を用いながら衝立の構造について理解を深め、その後実際に衝立の骨組みに張り重ねられている下張り文書をはがしていきます。さまざまな古文書が何層にも重ねられており、1枚1枚はがすのはとても大変です。講師の方の丁寧なご指導のもと、参加者のみなさんは黙々と取り組んでおられました。

     はがした古文書に書かれている内容については奈良県文化財保存課の山田淳平主査より解説を行いました。下張りとして用いられていたのは「豊心丹(ほうしんたん)」と呼ばれる薬の包み紙や、薬の効能、販売先などが記されている文書であることが分かりました。豊心丹は西大寺の叡尊(えいそん)が創製したと伝えられる伝統的な薬です。

     ワークショップの参加者からは「文書をはがすのに没頭できて楽しかった。」「知らないうちにほかの参加者と協力しながら作業ができた。」などの声を多くいただきました。

     

    解体のようす

     

    古文書

     

     「見る 知る 学ぶ 仏像のつくり方」は令和5年2月23日に開催しました。奈良県内には多種多様な仏像が数多く伝わっていますが、その材料やつくり方に関しては知らないことも沢山あるのではないでしょうか?

     午前中は日本彫刻史の大家であり、とくに仏師研究に成果をあげられている根立研介さん(奈良県学芸政策顧問/京都大学名誉教授/公益財団法人美術院理事長)をお招きして、仏像制作の歴史や構造・技法について理解を深めるための講座を行っていただきました。

     午後は、国内外の彫刻文化財を対象とした文化財の技法材料や保存修復に関する研究をおこなっておられる東京藝術大学文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室の岡田靖さん(准教授)と同大学院の博士後期課程を修了され、現在は奈良で活動されている重松優志さんに塑像の構造・技法についての解説と制作実演をしていただきました。塑像は土でできた仏像のことをいいますが、縄を巻いた心棒に何層にも重ねて土を盛り上げていきます。工程が進むにつれて盛り上げる土の種類も変わります。参加したみなさんも実際に使われる土に触れながら、その手触りの違いを感じとっていました。参加者からは「実際に材料にさわったり、道具を使ったりすることができて面白かった。」「仏像制作に興味がわきました。」などの声をいただきました。

     

    講義

     

    塑像

     

     

     

    下張り文書 解体ワークショップ(仮名称)」は連続講座として令和5年度夏に、「見る 知る 学ぶ 仏像のつくり方(仮名称)」は参加者様ご自身で仏像制作を体験していただく連続講座として令和5年度下半期にそれぞれ開催予定です。詳細が決まり次第ホームページのイベント欄でお知らせいたします。みなさまのご参加を心よりお待ちしております。

  • 2023.02.27

    文化財修復・展示棟 修復工房見学ツアー

    受付で配布の整理券

                     受付で配布の整理券

     

    来月OPENから1周年を迎えるなら歴史芸術文化村。道の駅でもある当施設には毎日のようにバスツアーやハイキングツアーのみなさんがショッピングやトイレ休憩に立ち寄っていきます。

    日々、さまざまなツアーの立ち寄り場所として利用されていますが、実は文化財修復・展示棟でも“ツアー”を毎日開催しています。

     

    今回は、文化財修復・展示棟の「修復工房見学ツアー」をツアー担当者がご紹介したいと思います。

     

    このツアーは、文化財修復・展示棟で公開している4分野(考古遺物、歴史的建造物、絵画・書跡等、仏像等彫刻)の修復工房を専門職員の解説付きで巡ります。

    所要時間は約40分、ですが参加者のみなさまと盛り上がってしまって時間がオーバーすることもしばしば。

     

    ツアーでは、中で作業している方たちのご紹介、修理している文化財について、そもそも文化財修理ってどんなことをしているのか、各分野全工程を紹介しはじめるときりがないので、ぎゅぎゅっと要点をわかりやすくお話しするように心がけています。

    とはいえ、修理や文化財の話がメインなので「ソウコウブンカザイ」*1や「イチボクヅクリ」*2「ヒワダブキ」*3など聞いたことがあるようなないような…耳で聞くだけだと意味や構造がぱっと思い浮かばない単語も出てきます。(*1装潢文化財-主に紙や絹を中心とする素材で構成された絵画や書跡といった美術工芸品、*2一木造-像の主要部分を1本の木から刻み出したもの、*3檜皮葺-檜の樹皮を用いた屋根葺き)

     

    ツアーを聞いていて「よくわからない

    そう思ったら気軽にわたしたちにお尋ねください。

    参加人数は最大でも10名程度の少人数なので気軽に質問が出来ますし「なぜ?」「どうして?」と思ったことを知って、もっとそのことについて知りたくなる、知ったことから興味を持ち好きになってもらえたらと思っています。

     

    文化財はどれも作られてからずっとたくさんの人たちが残したい、守りたいと思って今まで受け継がれ残ってきました。そして、文化村で修理してさらに未来へ繋ごうとしています。

    ここ文化村で文化財の魅力を知って、身近な文化財をさらに未来へ伝えよう、そんな思いをもつ文化財ファンを増やしていきたい、そんな気持ちでツアーをしています。

     

     

    修復工房見学ツアーは、休館日を除く毎日13時から文化財修復・展示棟の受付にて整理券を配布しています。先着10名程度なので、日によってはすぐいっぱいになってしまうことも。どうしても参加したい!と思ってくださる方は13時より少し早く来てください。

     

    ツアーは14時30分からで、集合場所は1Fロビー奥 薬師寺三重塔模型の前あたりです。

    (2023年3月1日よりツアー開始時刻は14時に変更になります。)

     

     

    みなさまのご参加をお待ちしています。

  • 2023.01.10

    多坐弥志理都比古神社本殿の修理現場を見学!

    多神社

     

    現在、なら歴史芸術文化村の歴史的建造物修復工房では、奈良県文化財保存事務所が田原本町に位置する多坐弥志理都比古神社本殿(おおいますみしりつひこじんじゃほんでん)(県指定文化財)の修理を行っています。

    先日、文化財保存事務所の方にご案内いただき、多坐弥志理都比古神社(通称、多神社)の修理現場を見学してきました。

    現在、拝殿の奥にある本殿は素屋根に覆われて解体修理が行われています。

    素屋根

      

    写真は今年の6月に撮影したもの。

    屋根の銅板葺(どうばんぶき)を剥がすと野地板(のじいた)が見えてきます。

    (左奥が解体中の銅板、右手前が野地板。)

    野地板

      

    さらに野地板を解体すると、旧野垂木(のだるき)と旧野地板が見えてきました。

    見学させていただいた時は、この旧野地板の解体作業をしているところでした。

    旧野垂木

     

    本殿の屋根は昭和52年(1977)に桧皮葺(ひわだぶき)から銅板葺に改変されており、桧皮葺屋根の下地である旧野地板や裏板が一部残っていることを確認できました。

    この旧野地板や裏板に、桧皮を固定する竹釘が残っているところも見せていただきました。

    修理では、このように部材の年代を調査・記録しながら解体を進めていきます。

     

    また、第一・二殿は墨書から享保20年(1735)に建てられたことがわかりましたが、第三・四殿は建立年代がわかる資料が見つかっておらず不明です。

    発掘調査によって、昔は現在の拝殿の場所に旧本殿があったことが明らかになっています。

    拝殿は宝暦9年(1759)に建てられましたので、第三・四殿は享保20年から宝暦9年の間に建立されたと考えられるそうです。

     

    現本殿を建てる時に、旧本殿の部材を転用している可能性があり、特に第三・四殿には転用材が多く使われていることがわかりました。

    写真中央の四角い穴がある材は、現在、本殿の肘木として使われていますが、この穴は活かされていないため、別の建物の転用材と考えられるようです。

    転用材

     

    部材をよく見ると、一つひとつに白いラベル(番付札)が貼られています。

    文化財の修理では、できる限り部材を再使用することが原則ですので、解体後に元の場所に戻せるよう場所を記載した番付札を貼ります。

    現本殿は各殿とも約160種類もの部材で構成されているようです。

    全てに番付札を貼り、図面も書いていく作業はとても大変な作業であることが想像できます。

    番付札

      

    ちなみに、部材の一部が傷んでいる場合はその部分のみを補修して使います。

    一方、再使用できない部材は新しい部材に交換し、今回の修理で取り替えたことがわかるよう焼印を押します。

    この方法は奈良県では明治30年ころから実践していますが、今では文化庁としてのルールになっているようです。

     

     

    修理に携わる方からの解説を直接聞くことができて、あっという間に見学時間が終わり、多くのことを学ぶことができました。

    ここでご紹介できたものはほんの一部ですので、ぜひ修復工房見学ツアーにご参加いただき、お伝えできればと思います。

    また、文化村の工房内では主に年代などを調査し記録する作業が実施されています。

    ぜひご来村ください!

     

     

    ※2022年11月23日に修理現場を見学するバスツアーが開催されましたが、現在は多神社本殿の一般公開はしておりません。

    ※各修理団体の休業日(主に土日祝日)には、原則として修理技術者が不在となります。

    なお、作業日においても常時作業が見学できるわけではなく、作業内容によっては修理技術者が不在となる場合があります。あらかじめご了承いただきますようお願いいたします。

     

  • 2022.11.27

    幼児向けアートプログラムvol.1「和紙」

    【幼児向けアートプログラム てでかんがえるvol.1和紙】

     

    9月に開催された全6回のプログラム。

    同じメンバーで「和紙」という素材と向き合い、子どもたちは大人が想像する行動を超えて、見る・触る・匂う・試す、それぞれの方法で和紙を確かめ、発見したことを声に出して伝えてくれました。

     

    触る

    「ざらざら」「けばけば」「ずっとさわっていたい」

    ちぎる

    「ホコリみたいなのがでてきた」「さらさらしてる」

    画用紙と比べる

    「あたたかい」「ちょっと和紙とはちがう」

    色水を垂らしてみる

    「あながあきそう」「なんであかないんだろう?」「かわくとパリパリになる」

     

    子どもたちからは「なぜ?」と「発見」を繰り返す姿が見られました。

     

    和紙1

     

    5歳のNくん

    「和紙ってかみだからとんでいきそう」といって紙飛行機を折り、その後も畳んだり丸めたり、ちぎったりして和紙を確かめていました。

    4日目は、お気に入りの和紙を選んで外へ。

    「ういてる」「なぜ?」「とんだ」「くっついた」

    Nくんが部屋に戻ってからも風を楽しめるように、と思いサーキュレーターを準備。

    サーキュレーターを見つけるとすぐに方向を変えたり、持ち上げたりして、「和紙と風」を楽しんでいました。

    和紙だけでなく他の素材も飛ぶのかどうか実験し、量りを使って重さを確かめる姿も見られました。

     

    和紙2和紙3和紙4和紙5和紙6

     

    4歳のHちゃん

    和紙を触ったときに、「ずっとさわっていたい」「よごれてるようにみえる」と言っていました。

    2日目に白楮(しろこうぞ)が室内に置いてあることに気が付き、触ってみてどうだった?と聞くと「かさねてみればちょっとしかきもちよくないけど、かさねなかったらきもちいい」と応えていました。

    和紙を汚れているように見えると言っていたのはどこかな?と聞くと、楮の木をしばらく見つめてから「もしかしたらこれかな?」と指を差していました。

     

    和紙7和紙8

     

    また、各週の子どもたちの気持ちを繋ぐために和紙をお持ち帰りして、Hちゃんはエビフライを作ってくれました。

    「しっぽはあかいマジックでぬったけど、ここ(衣の部分)はちょっときいろだからそのままにした」と言って和紙は真っ白ではなく、色があることを発見していました。

     

    和紙9

     

     

    子どもたちは日を重ねるごとに、自分の疑問と向き合い、「はっけんはっけん!」「みんなみて!」など物凄いことを発見したんだという自信に溢れた姿が増えました。

    最終日には、和紙はみんなにとって何?と投げかけると「最強!」と応えてくれた子どもがいました。

     

    和紙10和紙11

     

     

    10月には『てでかんがえるvol.2粘土』を実施し、子どもたちが疑問を持ち、発見する姿のほか、たくさんの成長が見られました。

    そざいきちは12月から1階体験学習室に移動し、13日(火)~27日(火)に『つむ・ならべる・つながる』のプログラムを行います。

    ぜひご参加ください!

  • 2022.10.13

    大事なものを失ったときのエピソード~アートコミュニケーターの活動

    「もしよかったら、大切なものをなくしたエピソードを教えてもらえませんか」

    文化村に滞在し(2022年8月~9月)作品を制作したアーティストの中尾美園さんの成果展の会場で、学生さんが話しかけます。

    エピソード

     これは、なら歴史芸術文化村が取り組んでいるアートコミュニケーターの活動の一端です。文化村に来ていただいた方に、アートをより身近に楽しんでもらうための架け橋の役割を、現在、奈良芸術短期大学の14名の学生さんが担ってくれています。

     中尾さんは、解体される家にのこされた様々なものを拾い上げ、四角形に切り取り、日本画の技法で模写し作品化しました。今、私たちの身の回りで失われていくもの。それが、百年後千年後には、貴重な文化財になるかもしれない。ものに対する視点、気づきがテーマの一つです。
     アートコミュニケーターの活動は、アーティストが伝えたいことを、来村者にどうアプローチするかが難しいところです。「大切なものをなくしたエピソード」は、中尾さんのアドバイスを受けながら学生さんが企画しました。
    アドバイス 学生さんの問いかけに、この日は3時間ほどの間に10人の方がそれぞれのエピソードを文章にしてくれました。ある方は、古い建物で拾ったという石をこすり絵で表現してくださいました。「作品について深まった」「もう一度作品を観にいきます」など好評でした。

    森本さん益子さんエピソード10石
    学生さんも「みなさん、エピソードがあっていろいろ聞かせてもらえてうれしかった」「時間のない方もいるので「今お時間いただいていいですか」からはじめるとスムーズだった」「正面に立つのではなく横や斜め後ろに立つ」など、コミュニケーションを通して得ることが多いようです。
     アートコミュニケーターは、主体的なプレイヤーです。これまで、来村者と会話を楽しみながらの作品鑑賞や鑑賞ポイントに関連したワークショップなど、学生さんならではのアイデアを活かした様々な活動を行ってきました。

     芸術文化体棟で展示などが行われている期間中の土日祝日を中心に活動しています。文化村に来られた折には、アートコミュニケーターとの対話を楽しんでいただけたらと思います。この看板が目印です。

    看板


     

     
  • 2022.09.26

    ”アートの架け橋” 学生の「アートコミュニケーター」活躍中!

     なら歴史芸術文化村では、対話や体験を通して気づきを広げ、新しいことを知る楽しさへとつなげていくことを活動の理念としています。芸術文化においても、来村者が作品をより深く知ることでアートを楽しめるよう、アーティストや作品と来村者をつなぐ担い手としての「アートコミュニケーター」を育成する事業に取り組んでいます。
     今年度は、奈良県唯一の芸術系大学である奈良芸術短期大学の学生さんが参加し、意欲的に活動を行っています。
    ただいま実施している、中尾美園さん(なら歴史芸術文化村令和4年度前期滞在アーティスト)の作品展示でも下記のとおりアートコミュニケーターの皆さんが活動します。
     “アートの架け橋”として活躍している学生のみなさんとの、アートを通じた交流に是非ご参加ください。

                            

    1.活動日時:10月1日(土)、10月2日(日)
    今後も展覧会にあわせて活動予定

    2.場所:なら歴史芸術文化村 芸術文化体験棟3階

    3.活動するアートコミュニケーター

    10月1日(土)奈良芸術短期大学美術科デザインコース2年生2名 日本画コース   1年生1名

    ・10月2日(日)奈良芸術短期大学美術科日本画コース 1年生1名 クラフトデザインコース 1年生1名
    4.参加方法:事前予約不要、参加費不要
      現地のアートコミュニケーターに気軽にお声がけください。