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  • 2024.07.25

    令和6年度平常展「文化財修理の現場から」開催中です!

     

    2024713日(土)より、文化財修復・展示棟地下1階にて令和6年度平常展「文化財修理の現場から」がはじまりました!(916日〔月・祝〕まで)

     

    なら歴史芸術文化村の文化財修復・展示棟では、「歴史的建造物」、「考古遺物」、「絵画・書跡等」、「仏像等彫刻」の4分野の修復工房を通年公開しています。

    また、学芸員の解説のもと、それぞれの工房を見学する「修復工房見学ツアー」もおこなっています。

    本展示では、4分野の文化財の作業工程をご紹介するとともに、現場で日々使用される道具・材料や、修理技術者の思いの一端を紹介するなど、見学ツアーから一歩踏み込んだ内容をお届けします。

     

    ◎仏像等彫刻修復工房

    展示室でまずご覧いただくのが「仏像等彫刻修復工房」です。

    この工房では主に木でつくられた仏像などの彫刻や工芸品を対象に、公益財団法人美術院が修理をおこなっています。

    こちらのコーナーには、仏像修理で使われる道具がぎっしりと並んでいます。どの道具がどの段階で使われるのか、仏像の修理工程パネルとあわせてご覧いただくと、より理解が深まります。

     

    木彫に使われる道具のうち、たとえば斧(よき)は木材の大きな面を割るときに使用する道具ですが、よくみてみると、刃の裏表に34本の線が刻まれています。

    技術者の方に取材したところ、この線には“ある思い”が込められているとのこと。その答えは・・・ぜひ展示室でご確認ください。

     

    ◎絵画・書跡等修復工房

    つづいては「絵画・書跡等修復工房」です。

    この工房では、絵画、書跡、古文書など、紙や絹などに墨や絵具を用いて絵や書がかかれた装潢文化財(そうこうぶんかざい)の修理が、株式会社文化財保存によっておこなわれています。

     

    たとえば掛軸装(かけじくそう)の場合、中央部に絵や書がかかれた「本紙」(ほんし、絹・紙のいずれでつくられていても本紙と称します)があり、その周囲に「表装裂」(ひょうそうぎれ)を施して本紙を保護しますが、これらの裏側にはさらに34枚の裏打紙(うらうちがみ)が重ねられており、本紙を支える構造になっています。

     

    装潢文化財の本格修理では、古い裏打紙を取り外し、さまざまな種類の刷毛(はけ)を用いて新たな裏打紙を打ちます。

    刷毛によって用途や使用箇所が異なり、それに応じて刷毛自体の大きさや使われている毛の材料もちょっとずつ違うので、展示室でその違いを見比べてみてください。

     

    ◎歴史的建造物修復工房

    絵画・書跡等修復工房のとなりの部屋は、「歴史的建造物修復工房」のコーナーです。

    この工房では、奈良県文化財保存事務所が、主に木造の歴史的建造物を修理しています。

    建造物の修理では多くの場合、現場に修理作業をおこなうための出張所をつくりますが、文化村工房では現地で解体した部材を運び込み、調査や修理などをおこなった後、現地に再度部材を運び込み組み立てています。

     

    ここでは、修理の際に建造物の状態を記録するための製図用具一式を展示しています。ひとつひとつの道具が使いこまれたこだわりの逸品です。

     

    また、現在修理中の多坐弥志理都比古神社本殿(おおいますみしりつひこじんじゃほんでん)の彩色にかかわる調査図・見取図(みとりず)も展示しています。

    調査の結果、第4殿向拝(こうはい)柱の東方には、現在みられる彩色(上層)とは別の、古い彩色痕が下層から発見されました。今回はその上層と下層の調査図・見取図を並べているため、違いを見比べていただけます。

     

    ◎考古遺物修復工房

    最後にご案内するのは「考古遺物修復工房」です。

    この工房では、天理市教育委員会文化財課が、市内の遺跡の発掘調査現場で出土した考古資料(土器などの遺物)の整理・復元作業にあたっています。

     

    ここでは柳本立花遺跡(やなぎもとたちばないせき)を中心とした出土品を展示するほか、奥には巨大な盾形埴輪と、文化村工房で復元された円筒埴輪(いずれも柳本立花遺跡出土)を展示しています。

    円筒埴輪の復元作業の様子は修理工程パネルに一部掲載していますので、作業の様子と照らし合わせながら実物をご覧ください。

     

    さらに、一連の整理作業で用いられる道具も展示しており、現場の作業風景が想像できるレイアウトとなっています。

    豊田狐塚古墳(とよだきつねづかこふん)出土の須恵器が置かれているそばには、実際に記録された実測図も展示中。どのように図化されているのか、ぜひ注目してみてください。

     

    ◎ハンズオンコーナー

    そして4工房を巡ったあとは、ぜひ中央のハンズオンコーナーへお立ち寄りください。

    木材の匂いや和紙、鉋(かんな)くずの手触りの違い、考古遺物の接合・復元・実測体験など、4工房で紹介した材料や道具に関わるものを手に取って感じていただけます。

     

    当記事では展示の一部をご紹介しましたが、展示室ではさらに魅力的な道具や材料を展示しています。

    本展示で文化財修理の現場をより身近に感じていただくとともに、文化財修理の意義についても想いをめぐらせていただけますと幸いです。

     

    今後は4工房の技術者の方々を囲んでお話をうかがう座談会や、学芸員によるギャラリートークも開催予定です。

    皆様のお越しをお待ちしております!

     

    【関連イベント】

    ●学芸員によるギャラリートーク

    日程:2024727日(土)、97日(土)

       11:0011:40

    会場:文化財修復・展示棟 地下1階展示室

    料金:無料

    ※当日直接展示室にお越しください。

     

    ●文化村4工房の技術者による座談会

    日程:202487日(水)

       13:3015:00

    会場:芸術文化体験棟 3階セミナールームA・B

    定員:30名(要予約)

    料金:無料

    ※詳細情報、お申し込みはこちらから

     

    【展示概要】

    日程:2024713()916(月・祝)

    休館日:月曜日(月曜が祝日の場合は翌平日)

    開館時間:9:0017:00(入室は16:30まで)

    会場:文化財修復・展示棟 地下1階展示室

    入場料:無料

    主催:なら歴史芸術文化村

    協力:株式会社 文化財保存、公益財団法人 美術院、天理市教育委員会、奈良県文化財保存事務所