深層崩壊とは
表層崩壊とは、雨などが原因で厚さ0.5~2.0m程度の表土が、表土と岩盤の境界に沿って滑落するがけ崩れ等の斜面崩壊をいいます。
一方で、記録的な雨が降った場合、表土の下にある岩盤の割れ目をとおって、地中深くまで雨水がしみ込みます。その結果、岩盤内に地下水が集中し、岩盤を支える力が弱くなることで、「深層崩壊」が発生します。
紀伊半島大水害では、この「深層崩壊」が多数発生し、甚大な被害となりました。
深層崩壊の規模
深層崩壊は、表層崩壊に対して発生頻度は低いものの、表土だけでなく岩盤まで崩壊するため、崩壊する土砂の量が表層崩壊よりもはるかに多くなります。
下図は、平成23年紀伊半島大水害の際に、大塔町赤谷地区で発生した深層崩壊です。この深層崩壊は高さ約600m、崩壊土砂量約900万m3に達します。これは、東京スカイツリー(634m)約1本分の高さ、東京ドーム(120万m3)約7.5杯分の量に匹敵し、想像を絶する規模の土砂が崩壊していることが分かります。
紀伊半島大水害で発生した深層崩壊(奈良県五條市大塔町赤谷地区)
深層崩壊による被害
深層崩壊は規模が大きいため、崩壊地だけでなく、その周辺にも影響を及ぼし、複数の被害が広範囲に生じます。
まず、崩壊した土砂の直撃による被害が考えられます。
崩壊土砂の直撃による被害イメージ
平成23年紀伊半島大水害では、五條市大塔町清水(宇井)地区で深層崩壊が発生しました。崩壊の規模が大きかったことから、土砂は川を越えて対岸の集落にまで乗り上げ、家屋や道路を破壊しました。
紀伊半島大水害での崩壊土砂による被害(奈良県五條市大塔町清水[宇井]地区)
次に、崩壊した土砂が河川に流れ込み、河川をせき止める「河道閉塞」と呼ばれる現象の発生が考えられます。河道閉塞が発生すると、河川がせき止められてしまうため、上流側で浸水被害が発生する可能性があります。
湛水による浸水被害イメージ
平成23年紀伊半島大水害では、天川村坪内地区の熊野川で、深層崩壊によって河道閉塞が発生しました。これにより、上流側で水位が上昇し、集落が浸水被害を受けました。
紀伊半島大水害での湛水による浸水被害(奈良県吉野郡天川村坪内地区)
さらに、河道閉塞が決壊した場合、たまった水が土砂とともに一気に下流域に流出し、下流の広範囲の地域に土石流などが起こる可能性があります。
河道閉塞の決壊による氾濫被害
平成23年紀伊半島大水害では、五條市大塔町清水(宇井)地区の熊野川を河道閉塞していた箇所(下図赤点線で囲った部分)が決壊し、多くの水と土砂が一気に流れ出ました。
紀伊半島大水害での河道閉塞決壊の様子(奈良県五條市大塔町清水[宇井]地区)
平成23年紀伊半島大水害に関してはこちら → 「紀伊半島大水害」