奈良県

大和当帰の栽培についてCultivating Yamato tōki

ヤマトトウキの特徴ヤマトトウキの特徴

トウキはセリ科の多年生植物で、その根を乾燥させた「当帰」は、多くの漢方薬や生薬製剤に使われる重要な生薬の一つである。トウキにはヤマトトウキとホッカイトウキの2系統があり、ヤマトトウキの方が品質が良いとされている。特に五條市の大深産のものが良品とされていたが、現在では、吉野地方でわずかに栽培されているだけになっている。

栽培管理の要点栽培管理の要点

育苗期の管理

  1. 1圃場の選定:排水が良く、耕土の深いやややせ地を選ぶ。
  2. 2播種:3月下旬~4月上旬、種子間隔が1cm程度となるようにばら播きする。本圃10a分の苗数(5,300本)を確保するために、100平方メートル程度の育苗圃、3リットル程度の種子が必要になる。
  3. 3覆土:山土で種子が隠れる程度に覆土した後、コンパネなどを当てて鎮圧する。その後、切りわらまたは籾殻で土が見えない程度に覆い十分潅水をした後、黒い寒冷紗を被せる。
  • 種子間隔が1cm程度となるように播種

  • 山土で覆土

  • コンパネを当てて鎮圧

  • 切りわらで覆い、潅水後、寒冷紗で被覆

  1. 4出芽:20日程度で出芽・展葉する。ほぼ全体が出芽すれば寒冷紗を除去する。
  • 種子

  • 出芽・展葉した様子(播種後20日程度)

  1. 5肥料:肥料が効き過ぎて大苗(根部の太い苗) になると抽だいし易いので播種時には無施肥とし、生育の様子を見て追肥を行う。
  2. 6間引き:間引き過ぎたりして間隔が広過ぎると大苗になるので注意する。密生しているところを間引く程度で良い。
  3. 7除草:適宜除草する。

本圃の管理

  1. 1圃場の選定:排水の良好な圃場を選ぶ。
  2. 2土つくり・畦立て:定植までに堆肥2t/10aを投入、耕うんする。元肥を施用後、畦立てをする。また、排水を良くするため畦はできるだけ高くし 、畦幅は1.2m程度 畦間(通路 )は0.3m程度とする。
  3. 3定植:使用する苗は 茎の太さが鉛筆の太さ(直径7~8mm)位のものを選ぶ。太い苗を植えると、抽だい・開花して根部が肥大せず商品価値が無くなる。定植は条間50cm×株間25cm程度の2条植えとし、根が地上に出ないよう深植えにする。
  • 定植方法の図

  • 開花した様子

  • 一年間養成した苗(鉛筆の太さ7~8mmが良)

  • 畦の肩から35cmに下方斜め45度の角度で定植

  • 定植直後

  • 定植後の潅水(苗の乾燥に注意)

  1. 4施肥:元肥として、有機質肥料をチッソ成分量で20kg/10a施用する。
    追肥として5月、6月、7月に有機質肥料をチッソ成分量で5kg/10aを、9月に化成肥料をチッソ成分量で5kg/10aを条間に施用する。

施肥基準

※苦土石灰でpHを調整する(改善目標値:pH6.0~pH6.5)

  1. 5敷わら:定植後、できるだけ早く敷わらを行い、雑草の抑制と土壌の乾燥を防ぐ。
  2. 6除草:管理機や除草剤を組合せ、除草の簡素化を図る。
  3. 7収穫:11月以降、株全体が黄化し始める。さらに黄化の進んだ12月上中旬の晴天日を選んで掘り上げる。

管理機による除草作業

収穫後の調整・加工方法

  1. 1掘り上げ後、竹べらなどで土を払う。

掘り上げ後、竹べらなどで土を払い、5~6株を束ね葉の部分をわらでくくる。

  1. 2束ねた株をはざ掛けする。(雨が直接かからないようにする)

はざ掛け風景

  1. 32月末~3月初め、株が十分に乾燥した頃に、はざから下ろし地上部を切って、60℃の湯に2分程度漬け硬直している状態を柔らかくする。更に、代謝を促進し有効成分を高めるために40~45℃の湯に浸し、1~2分程度もみ洗いした後、十分に水洗いする。(2回目の乾燥もはざでする場合は、地上部を残して湯もみする)
  • 湯もみ作業

  • 水洗い後の様子

  1. 4再度、棚やはざ掛けで乾燥させる。

棚で乾燥する様子

  1. 54月末頃、完全に乾燥すれば、等級別に分けて出荷する。地上部を残して乾燥した場合ははざから下ろして葉を切り、等級別に分けて出荷する。

等級別に分けて出荷

病害虫防除

キアゲハ

特徴
年3回の発生、蛹で越冬する。定植後~10月にかけて、絶えず幼虫が見られる。小さい幼虫は黒っぽい。はじめ1~2枚の葉が軸だけにされた被害が目立つ。
対策
畑を見て回り、幼虫を見つけしだい捕殺する。発生が多い場合は、薬剤で防除する。

キアゲハの終齢幼虫

クロモンシロハマキ

特徴
4月~9月にかけて、5回の発生を繰り返す。土中や被害株で繭をつくり越冬する。7~8月の高温時に発生が多い。孵化した幼虫は、芽や葉柄の内部に食入し、糞を外に出す。芽や葉柄基部に食入した幼虫は、根部まで食害する。
対策
初期の被害を見逃すと防除が難しいので定期的 に防除する。幼虫は、株元近くの芽や葉柄から食入するので、株元にも薬剤がかかるように散布する。被害株が次の発生源になるので、集めて肥料袋に入れるか焼却する。

地際の食入部から糞が噴出

葉柄芯部を食害する幼虫

ハダニ類

特徴
夏期、高温で乾燥が続くと発生が多くなる。ハダニ類が葉に寄生すると葉の表面がカスリ状に白くなり、さらに被害が進むとクモが巣を張ったように株全体が白くなり、新葉の展開も止まり、衰弱して最後には枯れる。
対策
発生の初期の段階に薬剤で防除する。

ダニの被害を受けた圃場と被害葉

ウドノメイガ

特徴
発生は6月~9月。幼虫が葉をつづり食害する。特定の株に被害が集中する。
対策
被害が株の一部分に限られる場合は、幼虫を手で潰す。発生が多い場合は、薬剤で防除する。

複数の葉をつづるのが特徴

病害

病気の発生は少ないが、クロモンシロハマキにより地上部を加害されると軟腐病などの発生を招き易い。まず、害虫防除に努める。

作付け体系作付け体系