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【宝山寺】荘厳な建築とノスタルジックな雰囲気を味わう
生駒山の中腹に位置する宝山寺は、商売の神様を祀る日本三大聖天のひとつ。現世利益を求める多くの人々の信仰の寺として、古くより栄えてきた。生駒山中に約10年の年月をかけて完成した伽藍には、山中の寺院ならではの独特な寺院建築物が並び、そのそれぞれには様々な神様・仏様が祀られている。高台から望む眼下の風景と、寺院周辺を含めたこの場所ならではのノスタルジックな雰囲気の中を歩きながら、ほかでは感じられない“非日常”の世界に出会ってほしい。
イメージ:【宝山寺】荘厳な建築とノスタルジックな雰囲気を味わう
灯籠が並ぶ石畳の参道を進むと、その先で出迎えてくれるのは石造りの「一の鳥居」。石造りの鳥居としては、国内でも特に背の高いものとして知られている。実はこの「一の鳥居」は、もともとは近鉄生駒駅の近く(参道の入口)に建っていた。昭和50年代の駅前再開発事業により、現在の場所に移築されたのだ。故に一の鳥居ながら、二の鳥居よりも本堂に近い場所に建っている。
宝山寺のように、寺院で鳥居を見かけることがまれにあるが、それはその寺院が天部の神様を祀っているから。天部の神様とは、仏教成立以前のバラモン教の神々であり、仏教の成立後は仏教の守護神として位置づけられている。この天部の神様は穢(けが)れを嫌うことから、参拝者は鳥居をくぐり身を清めて参拝をする。宝山寺は「生駒聖天」「生駒の聖天さん」と呼ばれ、鎮守神として歓喜天が祀られている。毎月1日・16日は「歓喜天御縁日」で、商売繁盛など現世利益を祈願する人々が数多く参拝する。
「一の鳥居」に続く、石畳の参道。左右には整然と灯籠がたち並ぶ。
鳥居の大しめ縄は、毎年12月16日に新しいものに入れ替えて新年を迎える。
鳥居の前に立って、木々の隙間からのぞき見るまちの景色も味わい深い。
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「惣門」の正面にある階段の途中に、「地蔵堂」がある。ここに並ぶのは、福徳地蔵尊像や融通観音像など6体の石像。福徳地蔵尊像と融通観音像は宝山寺ができた当初に寄贈されたもので、そのほか4体は昭和に入ってからこの場所に居られるとの
こと。
この融通観音像、実は双子だという。といのも、まったく同時期に制作された、よく似た姿のもう一体の融通観音像があり、そちらは奈良市三碓の添御県坐神社(そうのみあがたにいますじんじゃ)に居られると伝えられているそうだ。直線距離で約5kmほどの場所から、互いが互いの方を向き合うかたちで立っているという。確かに、この場所から融通観音様が見つめられている視線の先には、奈良市のまちを見渡すことができる。
地蔵堂の少し手前には「惣門」が。薬医門と呼ばれる形状をしており、真横からみると屋根を支える本柱が中心より前にせり出しているのが分かる。
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五間四面・重層の護摩堂様式で建立された本堂は、同寺で最古の建造物。本尊として、宝山寺の中興開山者である湛海律師により作られた不動明王像が祀られている。軒下の「阿修羅場」と書かれた額は、東寺学頭大僧正賢賀の筆(明和5年/1768年)。護摩祈祷はこの本堂で行われ、中は祈祷の際に出る煤(すす)の影響もあり暗くてよく見えないが、「宝山寺」と書かれた額もあるそうだ。この額は、宝山寺ができるよりも前に、弘法大師が縁起の良い言葉として「宝山寺」と書いたもの。そんな額がこの宝山寺に辿り着いたと考えると、不思議な縁を感じる。
瓦葺きの本堂の隣には、檜皮(ひわだ)葺の聖天堂拝殿が建つ。棟や破風の数が多く、寺院建築としては非常に珍しい外観をしている。建物の手前が外拝殿、そのすぐ後方が中拝殿、一番奥が大聖歓喜天(聖天)を祀る聖天堂。
本堂の後ろに見える岩壁は「般若窟」。弥勒菩薩が安置されている。立ち入ることはできない。
本堂の少し手前には「天神」も。縁のある牛の像がたくさん奉納されている。
「絵馬堂」の絵馬。心の文字と錠前が描かれた絵柄にも、ちゃんと意味がある。よく見て、よく考えて願いを書こう。
本堂の奥には、湛海律師作の本尊・不動明王像が祀られている。
聖天堂手前の拝殿。きらびやかな飾り灯籠で荘厳されている。
歓喜天が持っている巾着を模した賽銭箱。歓喜天の好物で、食べると身が清められる大根の絵柄が彫られている。
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歩く際の楽しみ方
歩く際の楽しみ方
宝山寺は、生駒山の中腹にある山岳寺院。そのため、境内の所々に奈良のまちの景色を見下ろせるスポットが存在する。歩き疲れたら、美しい景色を眺めながらひと休みするのもオススメ。そしてもう一つ、寺院内では「交差した大根」と「巾着袋」の柄に、さまざまな場所で出会う。これは、歓喜天の好物であるという大根と、手に持っている砂金袋を表したもの。ゆっくりと歩きながら、これらの柄を探してみよう!