文化村クリエイション vol.4 山本糾
第2回 現場レポート 2023.9.22
■「文化村クリエイション vol.4 山本糾」について
写真家・山本糾(やまもと ただす)さんを招聘し、7~10月に数回の撮影と、2024年1~2月になら歴史芸術文化村(=文化村)で、新作を含む展覧会を開催する予定です。
「文化村クリエイション」は新作の創作を行うと同時に、創作を開いていくことを試みています。創作の過程には、必ずしも作品に表れない発想のかけらや逡巡があります。一見無駄とも思える部分へ宿る豊かさに、触れるきっかけとなることを目指しています。
山本さんの創作を開く方法として、今回はドキュメンタリー映像を制作しています。映像作家・奥田しゅんじさんが初回の撮影から同行し、その様子を映像撮影しています。
山本さんは一貫して様々な形態の水をモノクロで撮影し、この世界にはたらく大きな力のようなものを捉えようとしてきました。これまで全国各地で撮影をしてきた山本さんは、奈良でどのような作品を制作するのでしょうか。
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9時文化村集合。メンバーは前回と同様、山本さん、撮影の奥田さん、遠山の3名です。
今回は、葛城市の二上山と當麻寺を訪ねました。
カメラと三脚を持っての登山は体力の消耗が激しく、登頂は断念しましたが、石切場では少し撮影をすることもできました。
途中で伺ったお話を少しご紹介します。
前回のロケハンでも出た「場所」という言葉は、山本さんの制作に通底している大切な考え方であるようです。
具体的な「場所」ではなく、概念的な「場所」。写真の中の「場所」だけではないけれど、写真がつくる「場所」かもしれない。
「場所」を提示したい、これまでの作品でも「場所」をつくることをやってきているのだと思う、言葉にすることは難しいけれど、と仰っていました。
山本さんは、世界を動かす大きな力が可視化されているようなところを撮影したい、とも以前お話しされていました。無限に広く動き続ける世界に、作品という点を打つ、場所をつくる、そんな試みなのかしら、と感じています。
1日の終わりに、前回奈良で撮影した写真の編集したデータを、少しだけ見せていただきました。
室生ダム(宇陀市)や鶯の滝(奈良市)など、同じ場所へ行き、撮影する姿を見ていたにも関わらず、それは全く別のもので、山本糾さんの作品になっていました。
プリントして初めて見える部分もあるかと思いますが、山本さんが撮影・加工・編集を行った写真はすでに、私が見ている世界と、山本さんが見ている世界が如何に異なっているかを実感させるものでした。風景をそのまま切り取るのではなく、自分の作品を作っている、という山本さんの言葉が思い出されました。
文:遠山きなり
(なら歴史芸術文化村アートコーディネーター、文化村クリエイション企画者)