文化村クリエイション vol.4 山本糾
第1回 現場レポート 2023.7.22-23
■「文化村クリエイション vol.4 山本糾」について
写真家・山本糾(やまもと ただす)さんを招聘し、7~10月に数回の撮影と、2024年1~2月になら歴史芸術文化村(=文化村)で、新作を含む展覧会を開催する予定です。
「文化村クリエイション」は新作の創作を行うと同時に、創作を開いていくことを試みています。創作の過程には、必ずしも作品に表れない発想のかけらや逡巡があります。一見無駄とも思える部分へ宿る豊かさに、触れるきっかけとなることを目指しています。
山本さんの創作を開く方法として、今回はドキュメンタリー映像を制作しています。映像作家・奥田しゅんじさんが初回の撮影から同行し、その様子を映像撮影しています。
山本さんは一貫して様々な形態の水をモノクロで撮影し、この世界にはたらく大きな力のようなものを捉えようとしてきました。これまで全国各地で撮影をしてきた山本さんは、奈良でどのような作品を制作するのでしょうか。
7月22日~23日、本プロジェクト初回のロケハン/撮影を行いました。メンバーは山本さんと映像・奥田さん、本企画担当の遠山の3名です。
こちらでは、2日間の様子を遠山がレポートします。
7月22日(土)晴れ
9時 文化村集合。
普段から、撮影したい場所を探すロケハンをしつつ、撮れそうな場所とタイミングがあれば撮影もしていくとのこと。
これまでの作品でモチーフとして登場したことのある、滝や河川、古墳、森などを中心に、この日は10か所程を車で回りました。
○行燈山古墳
崇神天皇陵といわれる行燈山古墳。文化村周辺には古墳が多数点在しており、こちらも車で10分程のご近所です。景色に覚えがあり、どうやら以前いらしたことがあるとのこと。
被写体とするかどうかは、場所そのものの良し悪しというよりは、作品にした際にどうか、という観点が強いようです。
○箸墓古墳
撮影は基本的に曇りに行うとのこと。陽の当った部分を強調せず、なるべく全てを均一に捉えたい、と話す山本さん。絵画で言えば、オールオーヴァーのような。
この日の午前中は快晴。撮影のために再訪するかは持ち帰り検討です。
○天理ダム
ダムは他でなかなかない圧倒的なスケールが魅力のひとつとか。今年は梅雨の降水量が少なく、放水しているダムは少ないようです。
○桃尾の滝
暑い日で、子どもたちが水遊びをしていました。滝も水量は少なく。
○龍王山
数百基にのぼる古墳群や城跡が山中に残る龍王山。
垂直にまっすぐ生える木と倒木の混在する森に関心を持たれたようで、スマートフォンで撮影し、モノクロ加工してイメージを確認されていました。
○室生ダム
午後は室生方面へ。
室生ダムでは一部放水しており、ちょうど曇ってきたタイミングで、今回初めて山本さんがカメラと三脚を取り出しました。ロケハンでなくても、常に作品となり得る場所は探しているという山本さん。ずっと見つからない時もあれば、通り過ぎた後に気になって少し戻るようなこともあるとのこと。撮影した写真が、必ずしも全て作品になるとも限りません。
○龍鎮の滝
室生赤目青山国定公園内、大きな岩が印象的な一帯です。車道から脇道に逸れ、川沿いをしばし上ると神社と滝がありました。
森が深く、水のスピードも速いため、このような場合はもう少し明るい方がよいとのこと。
○垂仁天皇陵
奈良市方面へ。
古墳は、木々の垂直と濠の水平のコントラストが大きなポイント。また、濠が結界としてしっかり隔てているのも魅力のようです。
○磐之媛陵、ウワナベ古墳
山本さんが奈良県内でこれまで撮影されたことがある場所が、垂仁天皇陵と磐之媛陵の2か所です。(2008-09年)作品のつくり方も常に変化していくため、一度撮影した場所に再度取り組む可能性もあるということです。
7月23日(日)晴れ
9時 文化村集合。
○鶯の滝
車で向かい、奈良奥山ドライブウェイを通っていった先、春日山原始林の中に鶯の滝はあります。奈良市内を流れる佐保川の源流です。
今回のロケハンでは2回目、カメラを構えておられました。曇っている間にシャッターを切り、陽が射すと手が止まる、雲の動きと息と合わせての撮影が印象的でした。
○春日宮天皇 田原西陵
結界のすぐ手前では畑が営まれており、天皇陵と生活が密接しています。
○柳生
柳生新陰流の発祥の地として知られる柳生。いくつかの場所を見て回りました。
その場所で何を見て、考えているのか、少しずつ伺うことができました。
次回の撮影にどのようにつながっていくのか、楽しみです。
文:遠山きなり
(なら歴史芸術文化村アートコーディネーター、文化村クリエイション企画者)