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芸術文化体験棟
イベント

  • 修復<わたくし>工房見学ツアー (文化村クリエイション vol.6 若木くるみ 関連企画)

    開催期間

    2024年7月20日(土)~9月23日(月・祝)(期間中の毎週 土曜、日曜、祝日に開催)

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    申込不要無料

     

    招聘作家・若木くるみさんの修復工房(スタジオ)を、企画担当者がご案内します。
    途中、若木さんへの質問コーナーもあります。お気軽にご参加ください!
    *9月22日は代理の職員がご案内します。

     
    本企画は、文化村クリエイション vol.6 若木くるみ 「修復わたくし」の関連企画として実施します。
    詳細はこちら

     
     
    また、なら歴史芸術文化村 文化財修復・展示棟では、4分野(建造物、考古学、絵画・書跡等、仏像等彫刻)の修復工房を通年公開しています。
    毎日14:00~14:45には、専門職員が案内する「修復工房見学ツアー」を開催しますので、ぜひ併せてご参加ください。
    詳細はこちら

    イベント概要

    • 日時

      2024年7月20日(土)~9月23日(月・祝)の毎週 土曜、日曜、祝日

    • 時間

      15:00~15:30

    • 会場

      芸術文化体験棟3階 スタジオ301・302

    • 料金

      無料

    • 定員

      10名程度

    • 申し込み

      不要。開始時間に会場へお越しください。

    • その他

      本ツアー開催時以外もスタジオは入室可能です

    • 主催

      なら歴史芸術文化村

  • 文化村クリエイション vol.6 若木くるみ 「修復わたくし」

    開催期間

    2024年7月20日(土)~9月23日(月・祝)(休館日を除く)

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    申込不要無料

     文化村クリエイションは、先進的な取り組みを行うアーティストを招聘し、制作・発表を行うとともに、創作の過程を開いていく試みです。vol.6では美術家・版画家の若木くるみさんを招聘します。

     見ると思わず「なるほど…」「おもしろい…!」と唸ってしまう若木さんの作品。確かな技術に裏打ちされ、複製、転写、反転などの特性を駆使して、版画の可能性を拡張しています。何よりそこには、心から創作を楽しむ様子と、日常の悲喜こもごもを創作のエネルギーへと転換する鮮やかさがあります。技法を礎に、しかし囚われることなく創作の「おもしろさ」を貪欲に追求する様子は、力強くしなやかです。
     高校生の頃、将来の夢は修復家だった若木さん。文化財の修復工房を通年公開している、なら歴史芸術文化村の文化財修復・展示棟を訪れ、その憧れが蘇ったといいます。本企画ではスタジオを修復工房に見立て、修復家になりきって修復作業(制作)を行います。それは同時に、若木さんが自分自身の「修復」を試みる機会でもあるようです。
     期間中は毎日、公開制作と作品展示を並行して行います。また本物の修復工房は立ち入ることができませんが、こちらでは修復家(若木さん)とお話しすることもできます。変容していく創作と展示、そして修練の場へ、ぜひ何度も足をお運びください。
    (*会期終了)

      


    ■作家コメント

     高校生の頃、奈良や京都には絵画修復の仕事があると知り、勉強は苦手だけど手先が器用だった自分の道はこれしかないと打ち震えました。すぐに修復専門学校の資料を取り寄せたものの、学費が高くて進学を諦めたのでした。
     そんなことはすっかり忘れて、先日初めて、なら歴史芸術文化村を訪れ修復工房を見学しました。かつての手仕事への憧れを思い出したと同時に抱いた率直な感想は、「もし修復家になっていたらネタ出しの苦闘から解放されていたのかな…」というものでした。
     大学では木版画を専攻したのですが、版画の可能性を追い求めるあまり、ここ最近は波を刷ったり道路を刷ったり、トリッキーな版表現に傾倒していました。
     飽き性ゆえ、完成度は度外視で実験作ばかりを量産してきましたが、文化財修理の現場に触れてからは、じっくり腰を据えて納得のいくまでひとつの課題にかじりついてみたいと思うようになりました。
     既存の作品を守り伝える修復の仕事と、まだ見ぬ表現を模索する現代美術とは、本来相容れないものなのかもしれません。それでも、修復の手つきや眼差しを持って作品と対峙することで、今までおざなりにしてきたやりきることへの真剣さを身につけられはしないでしょうか。
     文化財の宝庫である奈良というこの土地で、手仕事に没頭できる幸せを噛み締めながら、自分のふざけた制作姿勢を修復したいと思っています。

    若木くるみ 


     

    ■プロフィール
    若木くるみ(わかき くるみ)
    美術家、版画家、ランナー。1985年北海道生まれ。2008年京都市立芸術大学美術学部美術科版画専攻卒業。木版画制作の他、身近な物を版として使用する版画作品や、自身が作品の一部となる作品の制作を行う。ランナーとしても活動し、246kmのマラソン・スパルタスロンを完走する経験も持つ。
    主な受賞歴に第12回岡本太郎現代芸術賞(2009)、六甲ミーツ・アート大賞(2013)、京都市芸術新人賞(2022)、個展に「若木くるみの制作道場」(坂本善三美術館, 熊本, 2013)、「版ラン!」(富山県美術館TADギャラリー, 2018)、グループ展に「京都新鋭選抜展」(京都文化博物館, 2021)、「TARO賞の作家Ⅲ 境界を越えて」(川崎市岡本太郎美術館, 神奈川, 2023)他。


    ■関連企画

    修復<わたくし>工房見学ツアー
    若木さんの修復工房(スタジオ)を企画担当者がご案内します。途中、若木さんへの質問コーナーもあります。お気軽にご参加ください!

    日時:期間中の毎週 土曜・日曜・祝日 15:00~15:30
    *申込不要
    詳細はこちら

    アーティストトーク
    これまでの活動、今回の試みや手応えについて、若木さんにお話を伺います。

    日時:9月7日(土)15:00~16:00
    *申込不要
    詳細はこちら
      

    ■フライヤー
    フライヤー表紙画像 フライヤー(PDF)はこちら (デザイン:関川航平)
      

      
      
    ■アーカイブ写真
     

     

    スタジオの様子


    見学ツアーの様子

     

    リサーチの様子

     

    展示の様子

     

    アーティストトーク

    アーティストトーク(9月7日)
     
    ■記録映像

     
     
    ■レビュー
     
    つねに前景化する身体
     

     平野春菜(アートコーディネーター)
     

    滞在期間と場所が限定されるアーティスト・イン・レジデンスプログラム(以下、レジデンス)において、若木は滞在の日々をカウントダウンするかのように猛烈な勢いで作品を生み出している。いわゆるレジデンスは、アーティストが日常生活から離れ創作活動に集中できる場を与えるものとされる。しかし若木を見ていると、レジデンスとは自分の身体を定められた場所に固定し、終わりまでの時間をどう駆け抜け、自身をどう提示するかという一連のパフォーマンスのようでもある。
     
    少し時間を遡るが、京都芸術センターで開催されたグループ展「のっぴきならない遊動:黒宮菜菜/二藤建人/若木くるみ」(2017年5月25日〜7月2日、企画:黒宮菜菜)において、若木は本展開幕の前日、日本海側である福井県小浜から京都市内の出町柳までをコースとする「鯖街道ウルトラマラソン2017」(同年5月24日開催)に参加している。トレイルランを含む過酷な道のりを、鯖が描かれたユニホームを身に着けて見事完走。同展ではその走行を記録した映像作品《鯖街道 77km》も展示された。出展作としては、京都芸術センターの和室をフル活用し、畳をひっくり返して剥き出しになった板の間にチョークで描いたドローイングを縦横無尽に展開したインスタレーションが要ではあったものの、開幕前日に77kmの山道を打破する、という選択肢を取れること、そのメンタリティをアーティストでありランナーである若木を語る上での重要な点として言及しておきたい。
     
    若木はその後、飛騨山脈の山荘に滞在する「雲ノ平山荘アーティスト・イン・レジデンスプログラム」(2020年)や、石巻市の複合施設「モリウミアス」(2021年)、「金沢湯涌創作の森 AIRプロジェクト」(2023年)など様々な土地での個性的なレジデンスに参加する。よじ登った針葉樹に和紙を当て、樹皮の模様をフロッタージュで写しとる「森版画」シリーズや、水に流したいと思う出来事を水彩色鉛筆で画用紙に描き、寄せる波にぶつけることで描画イメージの流出を試みた(しかし実際は、波の力で画用紙が砕けてしまった)「波版画」ワークショップの考案、降り積もった雪のテクスチャーを墨汁で転写する「雪版画」など、滞在場所の環境に応じた独自の表現手法を編み出してきた。いずれの手法も、もとの版が自然物や現象であるため版画と名付けながらも複製技術からは遠く距離があり、否が応でも制作プロセスを観客に想起させることで、イメージを認識するよりも先に印刷行為をする若木自身の身体を強く印象づけている。
     
    「COUNTER POINT」(2022年)というレジデンスに参加した若木は、創作場所であるFabCafe Kyoto / MTRL KYOTOの備品であるデジタル刺繍ミシンに出会い、版画から離れた表現を試行した。下絵のドローイングをデータ化しミシンにインストールすると、若木の描きが刺繍として再現される。どんぶりに見立てたポケットから刺繍で描かれた箸が糸の麺を掴んでいる様子や、プリントされたロゴマークのワニに捕まって食べられてしまった人を刺繍で追筆するなど、支持体である既成服の構造を活かしたイメージを続々と繰り広げ、3ヶ月余の間に数十着が完成。その販売会は、ファストファッション界の最大手にかけて「唯一無二クロ」と銘打たれているものの、データ化した下絵と規制服の支持体という点で、厳密には複製が可能である。ここで若木が版画というメディアに立ち戻ろうとしているように見えることは興味深い。(プログラム終了後、若木は刺繍からあっさりと離れ木版画に戻っている。)
     
    なら歴史芸術文化村でのレジデンス「修復わたくし」では、若木がスタジオに滞在する約60日間がすべて一般公開とされていた。観客と和やかに言葉を交わしながらも、若木の手元は常に描画や印刷行為などで忙しなく動いている。若木の版画作品には「見立て」をユーモラスに取り入れる手法が多用されるが、このレジデンスでは、制作する若木自身を修復家に見立てるという前提に依ってこそ、展示された数多の作品群が改めて活き活きと見えてくるものだった。自らの身体を手放しで提示するのではなく、見立ての構造の内に置くこと。それは、観客の視線に晒され続けるなかで身体を確実にコントロールするための技術であるようにも思われる。版画家、ランナー、パフォーマンスアーティスト。これらの異なる側面を繋ぎ合う中心に若木の強靭な身体がある。

    イベント概要

    • 日時

      2024年7月20日(土)~9月23日(月・祝)

    • 時間

      10:00~17:00

    • 休館日

      月曜日 (8月12日、9月16日、9月23日は開館)、8月13日、9月17日

    • 場所

      芸術文化体験棟3階 スタジオ301・302

    • 料金

      無料

    • 主催

      なら歴史芸術文化村

    • アクセス

      JR・近鉄天理駅からは直行デマンドシャトルが便利です。詳細はアクセスページをご確認ください。

  • ヴァイオリン体験会

    開催期間

    2024年6月29日(土)

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    無料申込終了

    幼児向けアートプログラムでは音を楽しむことを通して子どもたちの個々の感性や表現能力を

    はぐくむことをねらいとしてヴァイオリン事業に取り組んでいます。

    ヴァイオリンを見て・聴いて・触れる体験をお楽しみください。

     

    申し込み①10:00~10:40

    ご好評につき定員に達したため申し込み受付を終了いたしました。

    申し込み②11:00~11:40

    ご好評につき定員に達したため申し込み受付を終了いたしました。

    ※臨時駐車場(天理市営駐車場)の場所はこちら

     

     

     

     

     

     

    イベント概要

    • 日時

      2024年6月29日(土)

    • 時間(詳細)

      ①10:00~10:40  ②11:00~11:40

    • 会場

      芸術文化体験棟3階/セミナールームAB

    • 講師

      安野英之先生 上田真紀郎先生

    • 料金

      無料

    • 定員

      対象:ヴァイオリン未経験の3歳以上の未就学児(保護者同伴)        各回10名(先着順)

    • 申し込み

      事前申込(6月8日申込開始)※定員になり次第受付終了

    • その他1

      参加者だけではなく、ご来場のみなさまにも楽しんでいただけますように観覧自由で開催いたしますので、お気軽にお越しください。 ※当日は混み合いますので、臨時駐車場(天理市営駐車場)をご利用ください。

    • その他2

      当日は文化村の広報として、ヴァイオリン体験会の様子を写真や動画で撮影することがありますのでご了承ください。

  • そざいきち「ぎゅっとする にゅっとでる」

    開催期間

    2024年5月1日(水)~7月28日(日)(水・日のみ開催)

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    当日整理券無料

    「ぎゅっ」と力をくわえると形が変わる。
    「ぎゅっ」としたり「にゅっ」としたりするとどんな形が見えるかな?
    たくさん試して好きな「ぎゅっ」と「にゅっ」を探してみよう。

    ※チケットはお一人様2枚まで。それ以上ご希望の方はもう一度お並びください。

    ※「そざいきち」は大変ご好評をいただいており、特に日曜日はチケットが早めになくなる可能性がございます。

    イベント概要

    • 日時

      期間:2024年5月1日(水)~7月28日(日)/水・日のみ開催

    • 時間(詳細)

      水 ①13:30~14:20/日 ①10:30~11:20 ②13:30~14:20

    • 会場

      芸術文化体験棟 1階 体験学習室

    • 料金

      無料

    • 定員

      各回先着5名

    • 申し込み

      当日受付・チケット制

    • チケットについて①

      水、日(午前、午後どちらの回も)9:00~配布。文化財修復・展示棟1階入口のチケットホルダーから各自お取りください。

    • チケットについて②

      参加にはお子様1人につき、チケット1枚が必要です。

    • チケットについて③

      チケットはお一人様2枚まで。それ以上ご希望の方はもう一度お並びください。

    • チケットについて④

      「そざいきち」は大変ご好評をいただいており、特に日曜日はチケットが早めになくなる可能性がございます。

    • 服装について

      汚れても良い服装でご参加ください。

    • 保護者の方へ①

      開始10分前までにチケットをお持ちの上、芸術文化体験棟 1階 体験学習室前にお越しください。

    • 保護者の方へ②

      0~3歳のお子様は保護者同伴でご参加ください。ただし保護者の入室はお子様1名につき1人までとなります。

    • 保護者の方へ③

      4歳以上の保護者の方はお子様が見える範囲でお待ちください。

    • 主催

      なら歴史芸術文化村

  • 公開オペレーション「ドリームランド」 泉太郎

    開催期間

    2024年3月20日(春分の日・水)~28日(13:30~16:30)

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    申込不要無料

     泉太郎は2024年の二⽉初頭から、なら歴史芸術⽂化村の一室を大窓付き工房倉庫と名付け、滞在しています。連⽇の移動、滞在、思索の中で、「ドリームランド」と名付けたインスタレーション及びオペレーションを構想しました。春分の⽇である3⽉20⽇から3⽉28⽇まで「ドリームランド」を初めて公開、稼働させます。

      世界各国の太陽神話における移動や旅、陵墓や古代の倉庫における権威性や禁忌を下地として、発電システムやベッドタウンなど現代社会のインフラや滞在制作についての問題意識から、オルフィスムからオルフェウス、兵馬俑、GPSなどへの考察、連想、交換を限りなく繰り返し、有機性(動的)と無機性(静的)を⾏き来するような、新たなオペレーションの機構を構想しています。多様な興味により導き出されたキーワードは必然的に密接しながらも、ジャングルのように複雑に絡まりながら躍動し、循環しています。  

     本企画は、2022年に創設された当村にて、出身地奈良県における泉太郎初の企画となります。昼夜二分の⽇、太陽が東の山並みに昇り南中を経て西に少し傾いたころ、「ドリームランド」は開園します。 8⽇間限定の特別な機会となります。 

    イベント概要

    • 日時

      2024年3月20日~28日

    • 時間(詳細)

      13:30~16:30

    • 会場

      芸術文化体験棟3階

    • 料金

      無料

    • 申し込み

      事前申し込み不要、先着順(4人程度/時間)

  • 講演会とトークセッション アートが人の心にもたらすもの

    開催期間

    2024年3月10日(日)(13時~17時頃)

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    要申込無料

    アートに興味がある方、高齢者・認知症患者のご家族・介護者、何かを始めたい、挑戦したいと思っている方へ

     

     

    文化村アートコミュニケーション

    講演会とトークセッション

    アートが人の心にもたらすもの

     

    なら歴史芸術文化村は、アートを通してコミュニケーションを育み、文化村と人、人と人、人と社会をつなぎ、アートによって心が豊かになることを広げていきたいと考えています。今回はお二人の講師の方に講演をお願いし、終了後は参加者ともに交流し対話を行います。

     

     

    ○講演「アートコミュニケーターになってみませんか」

    伊藤達矢氏(東京藝術大学社会連携センター教授)

    アートを通したつなぎ手の役割を担うのがアートコミュニケーターで、文化村はその養成を進めています。2011年より東京藝術大学×東京都美術館のアートコミュニケーター[とびらー]の育成の企画運営に携わり、この分野を牽引している伊藤達矢さん(東京藝術大学社会連携センター教授)に、アートコミュニケーターの魅力についてお話しいただきます。

    (プロフィール)
    アートプロジェクトのディレクションなど多様な文化プログラムの企画立案に携わる。特に、2011年より東京藝術大学と東京都美術館の連携によるアートを介してコミュニティを育む取り組み「とびらプロジェクト」の企画運営や2023年「共生社会をつくるアートコミュニケーション共創拠点」のプロジェクトリーダーを務めるなど多くの事業を手掛ける。

     

    ○講演「アートリップ しあわせになるアート鑑賞~認知症患者とその家族へのアプローチ」
    林容子氏(一般社団法人アーツアライブ代表理事)

    〈アートをケアに活かす〉

    感じたことを気軽に話しあう作品鑑賞法が、高齢者や認知症患者に好影響をもたらすことが報告されています。今回の講演会では、美術館や高齢者施設で実践されている林容子さん(一般社団法人アーツアライブ代表理事)をお招きし、映像で事例紹介いただきます。

    (プロフィール)

    コロンビア大学大学院にて芸術経営学で日本人初のMFA(芸術学修士)を取得。キュレーターとして国内外のアートプロジェクトの企画運営に携わったのち、一般社団法人アーツアライブを立ち上げ、認知症当事者を含む高齢者などを対象としたアートプログラムや、ビジネスパーソンのためのアートを活用した企業研修を行っている。

     

    〈スケジュール〉

    13:00~   開催挨拶

    1時間程度  講演 伊藤達矢氏「アートコミュニケーターになってみませんか」

    1時間半程度 講演 林容子氏「アートリップ しあわせになるアート鑑賞~認知症患者やその家族へのアプローチ」

    16:00~   質疑応答、講演者と参加者によるトークセッション

     

     

    ○文化村では、アートコミュニケーター養成の一環として、対話による作品鑑賞の進行役であるファシリテーターの育成を進めます。ご興味のある方は、今回の講演会にもぜひご参加ください。

     

     

     

     

     

    イベント概要

    • 日時

      2024年3月10日(日)13時~17時頃

    • 会場

      なら歴史芸術文化村芸術文化体験棟3階セミナールームC

    • 講師

      伊藤達矢さん(東京藝術大学教授社会連携センター教授)林容子さん一般社団法人アーツアライブ代表理事)

    • 料金

      無料

    • 定員

      30人

    • 申し込み

      下記申し込みフォームより2月1日(木)9:00~申し込み開始します

    • 主催

      なら歴史芸術文化村

    • 対象

      18歳以上

  • 「こども狂言体験教室 はじめての狂言!」成果発表会 及び 伝統芸能早春公演「能・狂言の世界を楽しむ」

    開催期間

    2024年2月4日(日)(14:00~17:00)

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    要申込無料

       奈良県は芸能の発祥の地とされており、さらに多武峰や春日大社の神事に奉仕する大和四座が置かれ、猿楽が隆盛し、能や狂言へと発展した地でもあります。なら歴史芸術文化村では、古来より伝わる能楽や狂言を通して、日本の伝統芸能に親しみ、郷土への誇りと愛着を育み、また、子どもの豊かな人間性を育むことを目的として、「こども狂言体験教室 はじめての狂言!」を1月から4回にわたり、開催してまいりました。

    画像は「こども狂言体験教室 はじめての狂言!」練習のようすです。


    この度、小学生の参加者のみなさんが、これまでの練習の成果として、狂言「()呂波(ろは)」の発表に挑戦します。また、成果発表会終了後には、能楽協会に所属する能楽師・狂言師の皆様による能楽及び狂言公演も実施します。ぜひ、この機会にご家族おそろいで伝統芸能の世界をお楽しみください。

       「こども狂言体験教室 初めての狂言!」成果発表会  14時~

        伝統芸能早春公演「能・狂言の世界を楽しむ」      1520分~せんとくん

     

    イベント概要

    • 日時

      2024年2月4日(日)

    • 時間(詳細)

      14:00~17:00

    • 会場

      なら歴史芸術文化村 芸術文化体験棟ホール

    • 料金

      無料

    • 定員

      200名

    • 申し込み

      下の申込みボタンからお申込みください

    • 主催

      なら歴史芸術文化村

  • 2月の耳の頂から尻尾の先/アラートからノート 3月の耳の頂から尻尾の先/ノートから盾の部屋

    開催期間

    2024年2月1日(木)~3月28日(水)(※月曜日休館、月曜日が祝日の場合は翌平日が休館)

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    申込不要無料

    スタジオ301(大窓付き工房倉庫)滞在:泉太郎
    「二月の耳の頂から二月の尻尾の先/アラートからノート」
    「三月の耳の頂から三月の尻尾の先/ノートから盾の部屋」

     

     本プログラムは、来村者がアーティストとの交流を軸にその思考に触れ、奈良を再発見すること、気づきにつなげることを目的に行っています。このたび、映像や立体、ドローイング、パフォ-マンス等多様な手法で、豊かな修辞や機智を複雑に織り込んだ作品を制作し、海外でも評価が高い泉太郎(美術作家・奈良県橿原市出身)を迎えます。

     

     泉太郎は近年、未知のものと人間の在り方を延々と交換し続けるプロセスを提案したり、文明を再解釈して導き出した儀式的ともいえるシステムにより、慣習や禁忌を批評しています。昨年開催された個展(「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.」東京オペラシティアートギャラリー)では、観光地化された古墳、禁足地としての御陵や陵墓参考地の構造を組み込んだ作品を発表しました。

     

     今回、作家は、大窓付き工房倉庫と名付けたスタジオ301(芸術文化体験棟3階)で構想し、蓄えます。前期(第一期)は、泉が「待機状態」と呼ぶ、認識できる(動きのある)範囲と認識できない(停止)範囲の間にある状態を続け、後期(第二期)は、構想の一部を封印し、一部を蓄え、一部を公開します。

     

     泉は、出身地である奈良について「古代に都市機能の中枢として栄えた場であり、現在の都市や文化の未来の姿を示唆するような地域です。長い時間をかけて、新しく目が一つ二つ生えねば間に合わないくらいに、隅々まで見ないといけないと考えています。これまで様々な都市で展覧会を開催してきた泉にとって、奈良県では初の企画となり、本企画を端緒に、長期的な目線で文化村における構想を練り込みます。

               

    「ある岩の窪みの奥に、どうしても公開されたくない人がいた。その人は驚かされて、怯えている。私は301号室を、大窓付き工房倉庫と名付けた。毎日そこで、考えを連ねている。そして不器用を押してまで、公開されたくない人のための設えを、少しずつ重ねている」 泉太郎

                

    ■プログラム
    スタジオ301(大窓付き工房倉庫)滞在:泉太郎

    泉太郎の考えの編み方を、いくつかの方法で垣間見ることができます。

    第一期(2月初旬〜3月中旬)では、一から滞在についての環境を作り、構想します。

    第二期(3月中旬〜3月下旬)では、滞在期で構想、準備した方法を、オペレーション、インスタレーションとして公開します。→イベント案内

     

      ※アーティストが来場していないときがあります。
     

      泉太郎プロフィール

    1976年生まれ、奈良県橿原市出身、東京都在住 。
    近年の主な個展に「Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.」(東京オペラシティ アートギャラリー、2023年、東京)、「ex」(ティンゲリー美術館、2020年、バーゼル)、2017年 「突然の子供」(金沢21世紀美術館、石川)「Pan」(パレ・ド・トーキョー、パリ)など。横浜トリエンナーレやメディアシティソウルなどのグループ展、豊田市美術館、国立国際美術館、東京都現代美術館、東京国立近代美術館、森美術館、原美術館などの展覧会に参加。
    東京都現代美術館、国立国際美術館、金沢21世紀美術館、M+、François Pinault Foundation、Kadist Art Foundation、ダラス美術館などに作品が収蔵されている。

     

    作家スティトメント(ドリームランドについて)

     

    イベント概要

    • 日時

      2024年2月1日(木)~3月下旬 ※月曜日休館、月曜日が祝日の場合は翌平日が休館

    • 会場

      なら歴史芸術文化村芸術文化体験棟3階スタジオ301ほか

    • 料金

      無料

    • 主催

      なら歴史芸術文化村

    • 助成

      令和5年度文化庁文化芸術創造拠点形成事業

  • こども狂言体験教室「はじめての狂言!」

    開催期間

    2024年①1月14日(日) ②1月20日(土) ③1月27日(土) ④2月3日(土) ⑤2月4日(日)(時間は下記をご確認ください)

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    要申込無料

    室町時代から伝わる「笑い」の伝統芸能「狂言」。

    小学生を対象に楽しくわかりやすくおけいこし、最後にはその成果を発表していただきます。
    狂言を「観る」「知る」「演じる」。日本の心、笑いの演劇を大いに楽しみましょう!

     

    <日 時> *全5回

      第1回稽古 1月14日(日) 13時30分~15時

      第2回稽古 1月20日(土) 18時30分~20時
      第3回稽古 1月27日(土) 13時30分~15時
      第4回稽古 2月 3日(土) 18時30分~20時
      発 表 会 2月 4日(日) 14時~14時30分 

            ※発表会終了後、能・狂言による公演会を開催

    イベント概要

    • 日時

      2024年①1月14日(日) ②1月20日(土) ③1月27日(土) ④2月3日(土) ⑤2月4日(日)

    • 時間(詳細)

      ①③13:30~15:00 ②④18:30~20:00 ⑤14:00~14:30

    • 会場

      なら歴史芸術文化村 芸術文化体験棟ホール

    • 講師

      能楽師 大蔵流狂言方 善竹隆司(ぜんちく たかし)

    • 料金

      無料

    • 定員

      10名(小学生限定)

    • 申し込み

      途中申込も受け付けています。お申し込みはお電話ください。TEL0743-86-4480

    • その他

      持ち物:筆記用具・メモ帳・タオル・飲料水等                     動きやすい服装でお越しください

    • 主催

      なら歴史芸術文化村

    • 問い合わせ先

      狂言体験教室係(奈良新聞社内) 0742-32-2115

    詳しくはこちら(チラシPDF) 詳しくはこちら(チラシPDF)

  • 文化村クリエイション vol.5  展覧会「伊庭靖子の見かた、描きかた」

    開催期間

    2024年3月5日(火)~3月24日(日)(月曜休館)

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    申込不要無料

     

     文化村クリエイションは、先進的な取り組みを行うアーティストを招聘し、制作・発表を行うと共に、創作の過程を開いていく試みです。vol.5では画家・伊庭靖子さんをお招きし、奈良県内でモチーフを探し、なら歴史芸術文化村のスタジオにて3ヶ月間公開制作を行いました。本展では新作を中心に展示します。
     伊庭さんは自身で撮影した写真を基に、精細な油彩画を描きます。陶器やクッションといった具体的な対象を描きながらも、それらの「質感」が前景化し、鑑賞者の記憶を呼び起こすような作品の制作を試みてきました。モチーフは匿名性が高く日常にありふれたものが選択され、思い入れは意図的に排除されてきました。
     約20年ぶりとなる滞在制作、失敗してもよいから色々試したいと話していた伊庭さん。奈良の地域性もあり、モチーフには遺跡から出土した陶片や古墳の風景、近代建築の室内などが選ばれました。歴史や人の気配あるものが否応なく醸す、情緒や物語性を許容するのか、試行期間となりました。ここでの制作を経て、作品は今後どのように変化していくのでしょうか。作家の現在地をぜひご覧ください。

     

     

    ■公開制作 *終了しました

    伊庭さんが制作するスタジオの様子を公開します。また公開制作に併せて、近年の風景作品を1点展示します。

    日程|2023年12月2日(土)~2024年2月25日(日)の土曜午後・日曜
     土曜日 13:00~17:00
     日曜日 9:00~17:00
     *お休み…12月23日, 24日, 30日, 31日

     

    ■スタジオトーク *終了しました
    その時々に制作で取り組んでいることや考えていることを、伊庭さんにお話しいただきます。

    日程|
    2023年12月3日(日), 12月17日(日), 2024年1月7日(日), 1月21日(日), 2月4日(日), 2月18日(日)
    時間|13:00〜13:30
    定員|5名程度(事前申込不要・当日先着順)

     

    ■展覧会 *終了しました

    公開制作で制作された新作を中心に展示します。

    日程|2024年3月5日(火)〜3月24日(日) *月曜休館
    時間|9:00〜17:00

     

    ■見かたガイド

    公開制作中に配布していたものを掲載しています。
    これまでの伊庭さんの取組みを簡単にまとめました。

    見かたガイド(PDF)

      

    ■プロフィール

    伊庭靖子(いば やすこ)

    1967年京都市生まれ。
    嵯峨美術短期大学版画科専攻科修了。フランス・モンフランカン(ダイムラークライスラーグループアート・スコープ、1999年)、ニューヨーク(文化庁在外研修員、2001-02年)にて滞在制作。
    主な個展に、「まなざしのあわい」(東京都美術館、2019年)、「まばゆさの在処」(神奈川県立近代美術館、2009年)。国立新美術館、府中市美術館、横須賀美術館、平塚市美術館、滋賀県立近代美術館など多数の展覧会に参加。神奈川県立近代美術館、資生堂アートハウス、東京都現代美術館、国立国際美術館、The Cleveland Museum of Art(米国)など、国内外の美術館に作品が所蔵されている。

     

    ■過去作品

     

    過去作品1

    《Untitled 2008-13》 撮影:加藤成文

     

    過去作品2

    《Untitled 2009-02》 撮影:加藤成文

     

    過去作品3

    《Untitled 2018-02》 撮影:木奥惠三

     

    過去作品4

    《Untitled 2023-05》

    ■記録映像
     
     
    ■レビュー
    アーティスト・関川航平氏と伊庭靖子氏による対話を軸として、安河内宏法氏にテキストを執筆いただきました。関川氏には、文化村クリエイションの印刷物デザインを当初より依頼しています。この対話は、フライヤーデザインに向けた打ち合わせ内での会話をさらに深めるため、改めて機会を設けたものです。
     
    取りこぼすことで、「確かまっていく」

     
    安河内宏法(京都芸術センタープログラムディレクター)
     
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     2024年2月下旬、伊庭靖子が滞在制作を行っているスタジオで取り交わされた伊庭と関川航平の会話は、スタジオの壁面にかけられた、そのときには伊庭自身が「どうやって完成させようか、まだ悩んでいる」と語っていた制作中の作品群の状態に呼応するかのように、行きつ戻りつしながら進んでいった。しかし現時点から、ふたりの会話を振り返るのなら、その日のふたりの言葉は、あるひとつの問いをめぐって発せられていたように思われる。その問いとは、「つまるところ伊庭靖子は、画家として何を行っているのか」というものである。
     こうした問いを俎上に乗せることは、奇異に思われるかもしれない。伊庭と言えば、1990年代半ばのデビューから、モティーフこそ変化してきたものの、一貫してモティーフの「質感」を克明に描き出すことを通して、「触れたい」という欲望を鑑賞者に喚起させる作品を制作し続けてきたからである。伊庭自身が嫌悪感を持っている様子で「さんざん、写真のようだと言われてきた」と語るように、その作品は、画家が見ている物や風景を精緻に描き出すものと見なされることが多かったように思われる。伊庭の作品に対するこうした解釈に即して前述の問いを考えるのなら、「伊庭は画家として、まるでカメラになったかのように対象を眺め、精緻に描き出している」と応えることができるだろう。
     しかしながら、こうした応えは妥当なものだろうか。例えば、本カタログに掲載されている、なら歴史芸術文化村に滞在中に制作した作品群は、どれほど世界の客観的な姿を描き出しているだろうか。あるいは、伊庭がかつて手掛けた、陶磁器やクッションをクローズアップし描いた作品はどうか。それらの作品が「精緻な描写」によって描き出されていることは否定しないものの、モティーフを極端にクローズアップし描く作品群を見ていると、画家の意図が対象の客観的な姿を描き出すこととは別のところにあるように思えてくる。
     では改めて、伊庭靖子は、画家として何を行っているだろうか。この文章では、伊庭と関川の間で取り交わされた言葉を辿りながら、この問題を考えてみたい。
     
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    なら歴史芸術文化村で滞在制作を始めた伊庭は、最初に作品のモティーフを探すためのリサーチを行ったという。「私は自分で撮影した写真をもとに絵を描いています。今回はせっかく奈良に来たので、奈良らしい風景を撮影しようと古墳に出かけたのですが、あまり良い風景に出会うことができませんでした。結局、古墳に行くまでの参道や人の家の庭などを撮影しました。風景であれば何でも良いわけではなく、風景の中に、例えば木々が作るリズムであったり、雲の配置が形づくるリズムであったりが見えてくることがあります。私がモティーフに選ぶ風景は、そうしたリズムを備えています」
     こうした伊庭の言葉を受けて、関川は「その話を聞いて、伊庭さんの目は、果たして何の目なのだろう、と思いました」と反応する。「例えば水彩をやっている人であれば、     細やかな陰影に意識が向くだろうし、ペン画をやる人だったら、ある物の輪郭線を拾っていくように眺めると思います。つまり、風景にリズムを感じるときに、葉っぱ1枚1枚が形づくるリズムを見て取ることもあれば、葉の集合をひとつの単位として、それらが形づくるリズムを感じることもあるだろうと思います。それで言えば、伊庭さんがどのような視点から風景にリズムを感じているのか、と。同時に、その視点は何によってもたらされているのだろうとも思いました。ペン画を手掛ける人ならば、その精細な描画材の特徴によって、葉っぱ一枚一枚にリズムを見て取るかもしれないように、伊庭さんが用いる筆や油絵具、あるいはキャンバスの大きさなどが伊庭さんの見方にも影響を与えているのでしょうか」
     伊庭は「確かに版画と油絵とでは、私自身の見方が全く違うような気がします。版画のときは物のかたちの方に目が行きますが、油絵では、風景の中の細かい葉のかたちは目に入らないです。例えば笹の葉のまとまりと杉の葉のまとまりを遠目から見ると、全く様子が違っているように見えますよね。私が風景を見て反応するときは、葉っぱが寄り集まったときに生まれる質感の違いに反応していると思います。そして、それを描いていくときには、編集を加えて、どうやってぼかしていくかを考えます。心地よい手触り感をどのように感じさせるか。風景の作品を描くときも、かつてクッションをモティーフにした作品を描いていたときと似た動機を抱いています」
     ここで語られていることは、伊庭の制作が目に映るすべての要素を拾い上げ、それらを克明に描こうとする態度とは別の機制によって動いているという事実である。その機制を、関川は「取りこぼす」という言葉で言い表す。「伊庭さんは質感を浮かび上がらせるために、伊庭さんの見出している質感と拮抗する要素を、意図的に取りこぼそうとしているのではないかと思いました。形を見えなくすることで質感を浮かび上がらせる、葉っぱのディティールを隠すことで別の質感を強く感じさせる、というように」 
     事実、伊庭の制作プロセスを知るとき、こうした関川の指摘は妥当なもののように思える。先述した通り、伊庭は自身が撮影した写真をもとに制作をするのだが、写真を撮影した後はその写真を手掛かりに、予め、同系色で明度差のみを変えた絵具をカラーパレットのように数十種類準備し、その絵具を用いて制作を進めていく。すなわち、伊庭は、逐一モティーフの固有色に合わせて絵具を作っていくのではなく、ある作品の中で使う絵具の色数を最初に限定し、その限定した色数の中でやりくりをし、制作を進めているのである。
     伊庭は「自分の制作が『取りこぼす』という言葉で言い表されるとは、これまで思ってもみなかったのですが、考えてみると、取りこぼすのがうまく行った作品に対して、自分は手ごたえを感じているように思います。取りこぼしが少ない作品は、形が見えすぎたり、写真に寄りすぎたりして、うまく自分の絵になっていないような気がします」と語る。
     
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    モティーフを選び、写真に撮り、その写真をもとに、うまく取りこぼしながら絵を描くこと。こうした伊庭の行為を形容するには、どのような言葉がふさわしいのかと関川は考える。「例えば、目の前のペットボトルを描こうとするとき、その行為は、かたちを紙の上に『模倣する』や『写し取る』、あるいは『省略する』や『要約する』と言えるかもしれないし、場合によっては『塑像する』や『規定する』とも言えるかもしれません。しかし伊庭さんの行為は、いま言ったものとは違う気がしています。ここまでの話で確認したとおり、伊庭さんは質感を描いてはいるけれど、その質感はおそらく客観的に確認できたり、誰かと一緒に同じ対象物を見るかのように共有できるものではないような気がします」
     これを受けて伊庭は、自身が絵の中で表したいと考える「質感」について説明する。「私の作品を見る人には、モティーフが持っている理想的な質感を想像したり、あるいはかつてそのモティーフに触れた際の質感の記憶を思い出したりして欲しいと思っています。私は作品を通して、鑑賞者の想像や記憶へとつながっていくというような、そのような回路が作れたら良いと考えています」
     伊庭のこうした意図が成功していることは、多くの人が認めるところであるだろう。伊庭の風景画が、どこか特定の場所を描いたものであることは間違いない。しかし伊庭は、それがどこなのかを示す要素を作品の中で強調することはないし、時に固有名で表すことのできる対象が絵の中に描かれないことだってある。こうした意味合いにおいて、伊庭が描くのは匿名的な風景であると言えるだろう。しかし、そうした風景を見ているにも関わらず、あるいは、匿名的であるがゆえに、私たちの感覚は動き出す。鑑賞者は伊庭の作品の前で、自身がかつてどこかで見た樹木の葉がかたちづくるふわふわとした質感を思い出し、穏やかな風が木々の葉を揺らすときの音を聴くことになる。
     つまり伊庭は、モティーフが持つ質感を再現しているのでもなければ、鑑賞者がモティーフに見出す私的な感覚を表現しているのでもない。伊庭が作品で扱うのは、モティーフに誘発されるかたちで鑑賞者が感知する物の「質感」である。その「質感」はモティーフと鑑賞者の内面のどちらか一方においてではなく、双方にまたがる仕方で、あるいは両者の「あわい」に成立する。
     
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    では、「あわい」に生じる「質感」を描き出す伊庭の制作行為は、果たしてどのように形容すれば良いのだろうか。関川は、「確かまっていく」という言葉を考えつく。「確かまっていく」とは不思議な言い回しだが、そこには「広まる」や「高まる」のように、対象の自立的な運動によって、何かが「確かになっていく」というニュアンスが込められている。
    ここまで確認したとおり、伊庭は、自身が撮影した写真をもとに、それを「取りこぼす」ことによって描いていく。また、そこで伊庭が描き出そうと試みるのは、客観的な仕方では実在しない「質感」である。こうした伊庭の制作は、言うなれば、丹念に見つめ精緻に描き出すことによって「確かなもの」を画面に定着させようとする画家の振る舞いとは、全く逆の態度によって行われる。「取りこぼす」ことを通して、捉え難い感覚が画面に表れていく。関川が用いた「確かまっていく」という言葉は、このような伊庭の絵画イメージの成立過程を言い当てている。
    モティーフと〈私〉の「あわい」に生じる捉え難い感覚が「確かまっていく」ように仕向けること。伊庭と関川の対話においては、「伊庭が画家として行っている行為」をこのように言い表すことになった。
    興味深いのは、そうした伊庭の行為を視覚的にイメージする際に私が想像するものとは異なったイメージを、伊庭自身が抱いているということである。
    一方に物や風景があり、もう一方にそれを見ている〈私〉がいる。その「あわい」になにがしかの感覚が成立する。その感覚を画面に定着させる画家の行為をイメージするとき、画家は物と〈私〉のあいだにキャンバスを置くと想像するのが一般的ではないだろうか。しかし、伊庭は自分がキャンバスを置く位置は、物の向こう側であると言う。
    「私が手掛けているのは具象画であるので、私の絵を見てくれる人は、例えば風景や陶器やクッションのような、具体的な物を最初に目にします。私が見てほしいと思っているのは、具象的な物を通して見える感覚です。制作するときの感覚として、物と〈私〉の間にキャンバスを置くようなイメージを持っていると、ひょっとしたら描く対象を抽象化したりするかもしれません。しかし私はそうではなく、キャンバスを物の向こう側に置きたいと思います。物を自分の側に引き寄せるのではなく、物を見ているからこそ生じる感覚、物にフォーカスが当たっているときにこそ生まれる感覚を捉え、それを確かなものにしたいと考えています」
     
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    以上、ここまで「伊庭靖子は、画家として何を行っているのか」という問いをめぐって発せられた伊庭と関川の言葉をまとめてきた。最後に落ち穂拾いめくが、ここで取り上げることのできなかった、印象に残ったやりとりをいくつか、書き留めておきたい。
     
    関川「絵のモティーフを探しているとき、モティーフを自分から見出しに行っているような感覚を持っていますか?それとも、モティーフから何がしかのものがこちらに与えられる感じですか?」
    伊庭「作品を作ろうと思っているときには、自分から探しに行っている感じです。でも、時々は、風景や物の方から私に、何かが与えられた感じがすることもあります。どちらの方が良い作品になるということはないですが」

    安河内「伊庭さんのこれまでの作品を振り返ると、時期ごとにシリーズに分かれていますよね。いまは風景を描いていらっしゃいますが、かつてはクッションや陶器を描いていた時期がありました。なぜそういうふうに分かれているのでしょうか?」
    伊庭「たしかに時期ごとに作品は移り変わっています。でも、それはモティーフの移り変わりというよりも、作品で扱っている光の種類ごとにまとまっています。かつて陶器とクッションをモティーフにした作品を同時に手がけていましたが、そのときは、はっきりとした光沢と柔らかな光を対比したかったので、陶器とクッションの作品を同時に制作し、同じ展覧会に出品していたりしました。そんな風に時期ごとに追求したい光があるのですが、ある程度進めていくと、描き方がわかってくるようになります。そうなってくると描き方を端折ってしまって、絵が薄くなってしまうような感覚を覚えることがあります。そうなると、そのシリーズは終わって次のシリーズに行くことになります」

    関川「伊庭さんの作品はたとえ風景を扱っていたとしても、パースを強調するように描かれているわけではないし、ある部分は触覚的な感覚を喚起するものとして描かれていたり、絵の中にパースがありながら、それを打ち消すような構図になっていたりします。つまり、私がここにいて目の前に広がる風景を見ているというような古典的な風景画のあり方というか、目の前の風景が私に向かって収斂し、結果として私が再強化されるというような、私と風景の関係性を、伊庭さんの作品は形作らないですよね。伊庭さんの風景の作品を見るために壁に掛けられた絵と色々な距離をとって見てみると、ある距離のところで作品全体がホログラムのようにみえたことがありました。その状態になったとき、従来の風景画が与える、私がいて風景を見ているというような経験とは、決定的に異なった経験をする。伊庭さんの風景画はそういう経験を与えるものとして成立していると思います」
    伊庭「私の風景の作品は、風景のミニチュアのように見えると言われることがあります。そんなふうに、私の風景の作品を見て、そこに描かれている風景がどの視点から眺められたものか分からない感じがするのは、私が写真を撮影しそれを絵にする前に編集を加えているからですね。風景の作品を手がけ始めた最初から自覚していたわけはないのですが、このシリーズでは距離を操作することを意識して、自分が撮影した写真を編集しています。その結果、どこから眺められたか分からない風景になっていると思います」

    関川「僕たちは言葉になれているから、何かを見るときに、『これはペットボトルだ』とか、『机だ』と、すぐ概念に引きずられて見てしまいますよね。でも、概念に引きずられる前のただ物を見ている状態の感覚も、知っていると思います。これは伊庭さんの意図とは違うのかもしれませんが、伊庭さんの作品にはそうした瞬間的な、捉え難い感覚が定着されているように思います。伊庭さんの作品を見ると、そこに陶器やクッションや並木道を見ようとも、『いま自分が見ているものは何だったっけ?』と理解が立ち遅れるような感覚を覚えることがあります。稲垣足穂の『薄膜界』になぞらえることもできるのかもしれませんが、何かをはっきりと見ようと意図したときには見ることができなくて、ふと横を見たときにだけ一瞬垣間見えるような、捉え難い感覚と関わっているように感じます」
    伊庭「そう言っていただけると嬉しいです。遅れて理解する感覚は、絵を描くときに大切にしたいと感じています。このような言い方が適切かは分かりませんが、自分の作品が、頭で理解するのと体で理解するのが分かれるような作品になって欲しいと思っています」

    イベント概要

    • 日時

      2024年3月5日(火)~24日(日) *月曜休館

    • 時間(詳細)

      9:00ー17:00

    • 会場

      芸術文化体験棟 スタジオ302・304

    • 料金

      無料

    • 主催

      なら歴史芸術文化村

    • 助成

      令和5年度文化芸術創造拠点形成事業