「五重塔」の西側の山は、如意山(にょいさん)という真言宗派のお寺にとって非常に重要な場所。弘法大師・空海が、師事する恵果阿闍梨(けいかあじゃり)より授かった如意宝珠を、この山の頂上に埋めたという伝承が残っている。如意宝珠とは、如意輪観音が持っている、あらゆる願い事を叶えてくれるありがたい玉。昭和21年(1946年)に実施された、如意山頂上の石造納経塔の調査の際、実際に琥珀玉や巻物、当時の貨幣などが見つかっている。なお、それらは調査後に再度石造納経塔へと納められた。
如意宝珠が見つかったことも含め、如意山と室生寺は、真言宗にとって非常に大きな意味を持った場所といえる。同じ真言宗の大寺院でも、儀式の際にはこの室生寺がある方角に向かって拝むことがあるそうだ。室生寺に遺る建築や仏像の価値もさることながら、その存在の意味と価値を知って歩くと、ひと味違った楽しみ方ができるのではないだろうか。