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【室生寺】自然に包まれる女人高野を歩いて感じる四季と心の移ろい
女人高野の別称を持つ室生寺が、女性の参拝を許すようになったのは鎌倉時代以降。創建はもっと古く、白鳳9年(680年)という説と、天平時代の後半(770~780年)という説がある。この寺を歩いてみて気づくのは、大きな寺院建築が建ち並ぶ大寺院との違い。屋外にあるものでは日本最小の五重塔や、やわらかな表情をした観音様、そして草花に囲まれた景観‥‥。心がなごむ、という表現が、何ともしっくりくる。平安初期の美しい堂塔や、特色のある仏像の数々を拝見して歩きながら、室生寺の魅力を感じてほしい。
イメージ:【室生寺】自然に包まれる女人高野を歩いて感じる四季と心の移ろい
バス停から室生寺に向かって、室生川に沿った道を歩く。茶屋や土産物屋・料理旅館などが立ち並ぶ道を過ぎると、川に架かる朱塗りの反り橋が。これが、室生寺への入口となる「太鼓橋」だ。歴史長い室生寺の中で、この橋の建築時期は新しい。以前の橋は、昭和34年(1959年)の伊勢湾台風によって流されてしまい、現在の「太鼓橋」が再建された。橋の先には「表門」が見える。
「太鼓橋」から「表門」を望むその風景を写真に収める参拝客は多く、春は「表門」の背景に咲く桜が、秋は橋の左右に立つカエデの紅葉が美しい。ここは室生寺を訪れた者の目を楽しませてくれる、最初のスポットと言えるだろう。
「表門」の前には、「女人高野室生寺」と彫られた石碑がある。女人高野とは、女人禁制であった高野山に対し、女性の参拝も許されていた室生寺の別名だ。石碑の上部には、九目結紋(ここのつめゆいもん)という家紋が彫られている。これは、江戸時代の中期に、五代将軍・徳川綱吉の生母であった桂昌院の寄進により、室生寺の堂塔が修繕されたことによるものという。
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「表門」は普段、通行できないよう封鎖されているため、「太鼓橋」を渡ったら右へと歩き参拝受付へ。途中、3本の大きな杉の木があるが、これは「三宝杉」と呼ばれ、樹齢はおよそ150~200年ほど。幹まわりは3mほどあるだろうか。室生寺のある室生山には、これよりもさらに樹齢の長い杉がいくつもあるという。
参拝受付を終えると、すぐ目に入るのが「仁王門」。元禄に一度焼失し、その後長い間姿を消していたが、昭和40年(1965年)11月に再建された。門の両脇で構える仁王像も、昭和に再興されたもの。門の朱塗りも仁王像の色彩も、まだ色鮮やかで美しい。鎌倉時代の古地図によると、この「仁王門」のさらに奥には二天門があったと記録されている。
「仁王門」をくぐると、左手に変わった形の池を見つけることができる。この池は「バン字池」と言い、その名の通り梵字の「バン」の形をしており、大日如来を表している。古地図には、江戸時代の頃までこの場所には2つの池があり、それぞれの池の中には水天と弁天が祀られていたようだ。
色鮮やかな色彩が残る「仁王門」と「仁王像」。
バン字池。梅雨の頃、池の中にはオタマジャクシがたくさん泳いでいる。
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「バン字池」を過ぎてすぐ左側、視界に飛び込んでくるのは幅の広い石積みの階段。室生寺の名所の一つである「鎧坂」だ。自然石が積み上げられた階段の様子が、編み上げた鎧の様に見えることからこの名がついたという。
秋の「鎧坂」は、カエデの紅葉が美しい。
「鎧坂」の両側には、シャクナゲをはじめとした木々の枝が迫っている。春のシャクナゲ、秋の紅葉と、この「鎧坂」を下から仰ぐ風景はとても絵になる。実際に室生寺まで足を運んでいなくとも、その風景を写真などで見たことがある方も多いのではないだろうか。
室生寺は、シャクナゲの寺としても有名。高山植物であるシャクナゲにとって、海抜400mに位置する室生寺の湿度と適度な寒さは最適で、毎年見事な花を咲かせる。境内には約3,000本ものシャクナゲが育てられている。見頃は例年、4月末から5月の初旬ごろだ。
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歩く際の楽しみ方
歩く際の楽しみ方
室生寺は、女人禁制の高野山に対し、古くから女性の参拝が許されていたことから「女人高野」として親しまれています。
現在でも女性からの人気は高く、それは春の桜やシャクナゲ、秋の紅葉、さらに屋外では日本最小の五重塔や、やわらかな表情の仏像など、女性の気持ちをなごませてくれるポイントが多いから。いつもではないけれど、参道の途中に散った花びらや落ち葉が、ハート型に集められているなどの遊びごころも。カメラを持って、自然と建築物との調和や、ハート型の花びら・落ち葉を探して、写真に収めながら歩くのもきっと楽しい!
※仏像をカメラで撮影することは禁止されています。境内の建築物や植物、景観以外を撮影することは絶対に行わないでください。