【室生寺】自然に包まれる女人高野を歩いて感じる四季と心の移ろい
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「金堂」を出て、参道をさらに登る。次に見えてくるのは、室生寺の本堂である「潅頂堂(かんじょうどう)」だ。このお堂もまた国宝で、建立は鎌倉時代・延慶元年(1308年)。このお堂では、真言宗の重要な法儀である潅頂が行われる。
「潅頂堂」正面には、日本三如意輪の一つに数えられる如意輪観音菩薩像が安置されている。
なお、「潅頂堂」には悉地院(しっちいん)の扁額が掲げられているが、これはかつて室生寺にあった悉地院から移されたもの。如意輪観音菩薩像も、その悉地院に祀られていたという。
>> さらに詳しくはコラム「仏様との縁結び!本堂で行われる儀式「潅頂」とは?」へ
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「潅頂堂」に向かって左側に、次の石段がある。その石段の上方に目をやると、国宝「五重塔」が緑の木立に囲まれ堂々と建っているのが見える。石段を最後まで登りきり、塔の全貌を見ると、石段下から見た印象に比べあまりに小さいことにきっと驚くだろう。室生寺の「五重塔」は高さ16.22mで、屋外に建つ五重塔では日本で最も小さい。その小ささから、「弘法大師一夜造りの塔」と例えられることも。建立時期は室生寺の創建期である、天平時代末から平安初期まで遡る。
塔の最上部を飾る相輪もまた、ほかの五重塔には見られない珍しい形式となっている。九輪の上の水煙を置く部分に、受花つきの宝瓶を据え、さらに天蓋と竜車・宝珠をあげている。宝瓶の中には龍神がいて、塔を守っているのだとか。小さいながら、自然の景観と調和がとれた佇まいは、室生寺のシンボルとして参拝する者を魅了している。
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「五重塔」の後ろに、さらに山上へと続く道がある。「奥の院」へと続く参道だ。杉木立の、昼でも薄暗い急坂を進むと「無明橋」が架かっている。この辺りまでの山際は、暖地性シダ植物が自生する最北端の地として、天然記念物指定がされている。橋から先、370段余りの石段を登るとやっと「奥の院」に辿り着く。
奥の院の「御影堂」は、鎌倉時代の建物。厚板による段葺の屋根で、その頂上には石造の露盤がある。内陣には弘法大師四十二歳像という木像が安置されている。この「御影堂」は真言宗寺院に多い大師堂とは異なり、高野山御影堂の形式を伝える唯一の建物とのことだ。「御影堂」の傍らには、諸仏出現岩といわれる岩場があり、その頂上には七重石塔が建つ。
奥の院へと続く参道。奥に見える朱塗りの反り橋が「無明橋」で、そこから先は石段が長く続く。
奥の院「御影堂」の向こうに見えるのが、諸仏出現岩の頂上に建つ「七重石塔」。
歩く際の楽しみ方
歩く際の楽しみ方
室生寺は、女人禁制の高野山に対し、古くから女性の参拝が許されていたことから「女人高野」として親しまれています。
現在でも女性からの人気は高く、それは春の桜やシャクナゲ、秋の紅葉、さらに屋外では日本最小の五重塔や、やわらかな表情の仏像など、女性の気持ちをなごませてくれるポイントが多いから。いつもではないけれど、参道の途中に散った花びらや落ち葉が、ハート型に集められているなどの遊びごころも。カメラを持って、自然と建築物との調和や、ハート型の花びら・落ち葉を探して、写真に収めながら歩くのもきっと楽しい!
※仏像をカメラで撮影することは禁止されています。境内の建築物や植物、景観以外を撮影することは絶対に行わないでください。