熊野古道には、6つのルートがある。吉野と熊野本宮大社を結ぶ大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)、伊勢と新宮を結ぶ伊勢路(いせじ)、大阪と田辺を結ぶ紀伊路、田辺から内陸の本宮を結ぶ中辺路(なかへち)、海岸を伝って田辺と那智を結ぶ大辺路(おおへち)、そして高野山と本宮を結ぶ小辺路(こへち)だ。この巡礼路は、熊野三山(本宮・速玉・那智大社)と吉野山、高野山といった三つの異なる山岳霊場とそれらを結ぶ参詣道として、世界遺産にも登録されている。中でも距離が最も短いのが、名前の通り、小辺路(こへち)だ。小辺路の全長は、約70キロ。修験道の行場である奥駈道を除けば、一番の険路でもある。江戸時代、松尾芭蕉と共に奥の細道を歩いた河合曾良が近畿を旅したときの日記「近畿巡遊日記」には、高野山の麓から歩きはじめ、小辺路をたどって、わずか3日で本宮へ到着したと記されている。しかし、大部分の現代人は、水が峰、伯母子岳、三浦峠、果無峠と1日にひとつずつ大きな峠を越えて、3泊4日で歩くことになる。