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なら歴史芸術文化村滞在アーティスト誘致交流事業「文化村AIR」

▶滞在アーティストが決定しました
今年度の滞在アーティストである大槻唯我さんは、被写体となる土地のリサー チに基づき写真作品を制作しています。神話や古填が多く存在する天理市・桜井市という地を歩き、自身が持つ「場所を撮る」「死から生を捉え直す」という制作コンセプトに雷ねた考察から生ま れる作品に期待が高まります。
招聘アーティスト 大槻 唯我 おおつき ゆいが (東京都)
■略歴
1990年生まれ
2014年武蔵野美術大学造形学映像学科卒業
2023年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻博士後期課程修了。
■アーティストステイトメント
被写体となる⼟地の詳細なリサーチ、フィールドワークに基づいた写真作品を制作している。主なコンセプトは、「死から⽣を捉え直す」、「⾵景ではなく場所を撮る」、「思考する隙間を提供する」。現代における絶対的な価値を持つ⽣ではなく、死と⽣の連関や循環の⼀部として再考する。また、単に視覚情報として成⽴する表層的な画⾯ではなく、視覚から広がる⼟地の情報から歴史の端緒を掴み、⾵⼟や⼈の営み、地質や歴史などを有する場所として⼟地を捉え、普段⾒落とされがちなことや焦点が当たりにくいことについて制作を展開している。最近では、現代の⾃然との関わりや過疎の進む地⽅の⾏⽅についてのリサーチを兼ね、国内外のレジデンスに参加し、活動の場を広げている。
■文化村での活動提案
奈良というと数々の⽂化財は思い浮かぶけれど、その⽂化財それぞれの詳細な歴史や物語は⼤して知らず、その点と点を何が埋めているのか、京都以上に古いものが残り、脈々と保存されてきたものがあるにも関わらず具体像が浮かばないことに気づいた。その場所を写真におこしてみたい。特に道と、⾜で歩いて移動することを重視しており、⼭辺の道とその周辺のリサーチを⾏いたい。場所を知るということは、古代の⼈々が歩いた道を実際に歩き⾵景の変化と距離感を掴み、そして⾃分の居場所を知るということであり、⼟地と結びついた営みを把握することでもあると考えている。
■審査評
西尾 美也 (美術家/東京藝術大学 准教授)
本事業も3年目となり、これまでに滞在したアーティストが残してきた具体的な成果も影響してか、今回の応募者のプランには、リサーチや交流に基づき奈良の環境で自身のテーマを探求する、事業の趣旨に適う内容が多く見受けられました。当初から一貫して応募者の表現メディアに多様性が見られることも、本事業の大きな特徴だと思いますが、その分、お一人に絞ることは難しい作業でもありました。
その中で今回選出された大槻唯我さんは、「歩き、撮影する」というシンプルな場所への介入、また、写真という身近な手法によって表現を展開されてきました。大槻さんの場所や写真へのアプローチの特異性は、過去作に一貫して表れています。特に「自殺の名所」をリサーチした作品では、その着眼点と、死から生を捉え直す視点が秀逸です。奈良と掛け合わされるとき、「歩く」のに最適な山辺の道があり、「死と生」を考えさせられる神話や古墳があることを考えると、大槻さんがどのような考察や作品を生み出すか、その成果が大いに期待できるところです。
シンプルな介入であるからこそ、出会っていく人々との日常会話を重視している点も印象的でした。過去作で写真とともに掲示されているテキストからも、歩く写真家の思考や出会いの軌跡が感じられました。その意味で、地域交流計画で提案されていた、中学校での授業参加や座談会のアイデアが、大槻さんの今回の滞在制作を支える重要な要素になるのではないかと期待が膨らみます。
服部 滋樹
(graf代表/クリエイティブディレクター/2025年日本国際博覧会協会CDCアドバイザー/京都芸術大学 教授)
年々、地域での役割や、その専門性が様々な要素を引き出している。奈良県の歴史的背景や自然環境が、アーティストに新たな視点とインスピレーションを提供し創造性を揺さぶっている。これが既に魅力的な環境として、歴史芸術文化村の利点の一つだと思う。奈良の古代文化から繋がる豊かな自然は長き歴史の延長線上に生育した繋がりの中にある。彼等の創作は文化形成を繋ぐ間に存在し、そしてまた起点ともなる種を植えることになる。
リサーチや交流によって見いだされる意味を、より一層考える必要があるのではないだろうか?それぞれ個々のリサーチ方法が異なり、新たな発見が土地の姿形、輪郭を露わにしてくれる。まるで、作家との交換のように関係性が深くなればなるほど、その互いの証しとして、技巧的表現へと定着されていく。
何か宿ってきたモノとの交換。天理市、桜井市は飛鳥時代−奈良時代に挟まれた古墳時代のエリアでもある。近隣の身近に接する情報はこの古墳時代からの情報と考えても良い。これから始まる「対話」は、まだ私たちが見いだせていない何か時間経過によって育まれてきた時間軸の事柄や現代の関係性そして、これからあるべき姿へのヒントとなる事を願っています。
未来を見いだすに難しい世の中だから。先を選択する為に無数のアイデアが必要な時代なのです。作家を通して見いだされる、新たな見解は角度を変えて土地を見ると言うことなのです。ここで生まれてくる様々なヒントを手繰り寄せ、未来への道を探る。そんな仲間として、対話を重ねていきましょう。関係を深めましょう。
松本 耕士(なら歴史芸術文化村 プログラムディレクター)
今回で3回目となるAIR事業、主催施設のプログラムディレクターとしての立場で選考させていただき、大槻唯我さんを選出いたしました。「神話と古墳の地」と言っても過言ではない山の辺エリアに位置する文化村での滞在制作に、「生と死」をテーマに作品を制作されることに興味を持ちました。「生と死」というテーマには、これまでも様々なアーティストが向き合ってきましたが、場所ともリンクさせることによって、この地ならではの発想が生まれるのではないでしょうか。大槻さんの制作活動は歩くという実体験から始まります。「この地を歩く。」というプロセスによって、住まう方や訪れた方とリアルに繋がります。さらには、古代からも変わっていない歩くという行為によって、古人(いにしえびと)の見ていた風景もイメージ出来ます。私は、様々な方が来訪される当施設の特性を踏まえ、選考基準の一つとして「わかりやすさ」をこれまでも重視してきました。歩くことによって感じたイメージを写真というわかりやすい手法で表現された作品を通じ、この地のプレゼンスが地域の人々にわかりやすく伝わることが、当施設で実施する本事業の成果になってほしいと期待しています。最後に、大槻さんに期待する地域からの声を追記しておきます。・写真というストレートな技法だが、奈良を捉えなおす新たな視点を提示してくれることに期待します。・「場所を残す」ことによって、今後の桜井市、天理市の地域住民の方が芸術に対して身近に感じてくれることに期待します。
▼詳細はこちらから
https://www3.pref.nara.jp/bunkamura/air/