先週、文化村に1体の仏像が運び込まれました。
當麻寺の入口を守る、仁王像(金剛力士像)のうち阿形(あぎょう)像です。
仁王さんは口を開く「阿(あ)」と、口を閉じる「吽(うん)」の2体一対で、門の左右に配置され、寺院の境内を守っています。
當麻寺の仁王さんは阿形像の口からニホンミツバチが出入りするようになり、約30年の月日をかけてミツバチが頭の中で巣を作ってしまいました。昨年、1万匹ともいわれるニホンミツバチはお引越しが完了。その様子はテレビなどで多く取り上げられたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
當麻寺仁王像は江戸時代の作で、ヒノキ材の寄木造、眼には玉眼が嵌められています。大阪仏師であった田中主水家に伝わる仏師系図によると、作者は高福(1766年没)という仏師であると書かれています。仁王門は延享二年(1745)の上棟ですので、ほぼ同時期の作と考えられます。
仁王像は、葛城市の有形文化財に指定されています。
阿形像はニホンミツバチの影響で損傷が激しく、また経年の劣化で矧ぎ目が緩んできているので、解体修理が行われることになりました。これから2年間かけて美術院が文化村工房で修理を行います。
阿形像の修理完了後、さらに次の2年をかけて吽形像の修理が行われる予定です。
さて、阿形像の搬出作業は、美術院により3日間かけて行われました。
像高339cm。重量もあるので、チェーンブロックで吊り上げての搬出です。
お寺や関係者が見守るなか、慎重に門の外へ出します。
阿形像はトラックで文化村へ運ばれました。
5月末頃から、文化財修復・展示棟の地下1階で修理の様子を公開します。
火曜日から日曜日まで毎日開催される修復工房見学ツアーでは、より近くで作業現場を見ていただくことができますので、ぜひご参加ください。
搬出時、通りがかりのご参拝の方が、
「仁王さん、4年間も一人ぼっちになるなんて寂しいなぁ」
とつぶやいていらっしゃったのが印象的でした。
仁王さんが寂しくないように、皆さんも當麻寺にぜひお参りくださいね。(竹下)