つつじから美しく輝く霧氷まで豊かな四季の三峰山

文=加藤芳樹

(かとうよしき)紀行ライター。幼少時より自然に親しみ、大学卒業後、釣具メーカー勤務を経て、出版社・山と溪谷社大阪支局に勤務。山岳部門編集長を務める。2006年より、フリーの編集者およびライター。

御杖村(みつえむら)には何度か足を運んでいる。三峰山(みうねやま)は、その南端が三重県との県境であり、車を使えば何ということもないのだが、公共交通機関を使っていこうとすると、電車、バスを乗り継がなければならない。近鉄榛原駅から奈良交通バスで1時間近くかけて御杖村に入り、掛西口のバス停でさらに御杖ふるさとバスに乗り換えて、みつえ青少年旅行村手前の神末上村まで小型のバスに揺られる。
あえて電車とバスで行ってみようと思い立ったのは、少し山旅というものを感じたかったからかもしれない。日帰りの山では、奈良市近郊の山添村にファミリーに手軽な神野山があるが、ツツジの山だから季節ではないし、天川村の観音峰なども頭によぎったが、そうなるとどうせなら宿泊して大峰の山々にも足を伸ばしたい。日帰りではあるが、適度な距離感というものが今回三峰山に足を向けさせた。

休憩舎のある神末上村のバス停に降り立ち、バスの運転手に帰りのバスの時間を聞いてから、ひとり青少年旅行村に向けて神末川に沿って歩き始めた。晩秋のことで、点在する民家の裏山は雑木の黄紅葉に染まっていた。正面に三峰山が見えている。顕著なピークは見えず、ただ壁のようにゆったりと谷あいの空間を埋めている。

高見山遠望

高見山遠望

以前は登り尾コースを登路に、下山は不動滝を経由したが、今回は山頂から尾根伝いに西へ向かい新道峠を下山路にするつもりだった。
青少年旅行村の入口手前で大タイ谷に入るとすぐに登り尾コースの登山口があるので、植林の中を登り始める。コアジサイの黄葉が沿道を覆う。三峰山は、同じ山地に属する高見山と並んで冬の樹氷が有名な山だが、山頂近くに広がる八丁平周辺には白い花をつけるシロヤシオ(ゴヨウツツジ)が群生しており、6月ごろならば花の山としての楽しみを提供してくれる。秋にはこのシロヤシオが真っ赤に染まるために紅葉もすばらしい。

途中、トイレのある場所で林道を横切ると、少し開けたところがあり、秋色に染まる斜面を楽しむ。その先で北側に展望が空けて、曽爾高原の名山である倶留尊山(くろそやま)が見えた。
しばらくは植林と雑木林が交互に現れる。ひと登りすると、避難小屋があった。以前は不動滝の分岐点に古いトタンの小屋が一棟あり、今も半分朽ちながらも立っているが、こちらはその少し手前の高台にあって、ログハウス風だ。土間に囲炉裏がきってあるのはトタンの小屋と同じだが、なかなか立派な小屋でようやくここで一服することにした。小屋の前には立派なブナの木が四方に太い枝を広げていた。

避難小屋

避難小屋

小屋を発つとすぐに植林帯が終わり、ようやく自然林だけになった。と思うと、すぐに三畝峠に着いた。あとは尾根通しに山頂を目指すだけである。

樹木に囲まれた小広い山頂は、北側だけが展望が空けている。先に見た倶留尊山に大洞山も見えている。しかし休憩時間をたっぷりとるなら、この山頂よりもやはり高原状に広がっている八丁平に出たほうがよい。来た道をたどらずに南に下っていくと笹原が広がった。ここが八丁平で、南には台高山脈の展望が広がっている。うろうろしながら八丁平で一番高いところであろう丘を陣取って昼食にする。今日は平日とあって誰にも会わなかったが、三重県側から2人の登山者が登ってきたので、軽く会釈を交わす。下山は彼らの来た方向ではなく、八丁平の御杖村側の斜面につけられた道を下らなければならない。
正面に鋭鋒の高見山を垣間見ながら緩やかに道を下っていくと、先ほど歩いた山頂への道と合流、三畝峠をへて、尾根道を直進した。ゆるやかで広々とした尾根道は、とても気持ちがいい。登り尾峰を越え、右手にヒメシャラの群落を見ると新道峠に着いた。道標に従ってみつえ青少年旅行村に向けて下ることにする。
すぐに谷沿いとなり、鹿避けのフェンスを越えるとしばらく植林の山腹道となるが、やがて尾根に沿うようになり、なかなかいい雑木林となった。気持ちよく下っていくと再び植林となり、青少年旅行村へとつながる舗装路に出た。
青少年旅行村まで下ってのんびりともと来た道をたどっていくと、ちょうどバスがやってきた。行きの経路で帰るつもりだったが、道の駅「伊勢本街道御杖(いせほんかいどうみつえ)」にある姫石の湯で汗を流してから帰途についた。

※この紀行文は2009年11月取材時に執筆したものです。諸般の事情で現在とはルート、スポットの様子が異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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