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「記紀・万葉集」は、日本史の流れと深く関わっているのですね。 |
里中 |
面白いですよ。「記紀」の時代があったからこそ、いま、わたし達はこうやってかろうじて一つの国として存続しているわけです。
そういうことを考えて、奈良や九州を訪れたときには、古代の人が必死で守ってきた土地なんだなということを感じていただけたらと思います。
特に奈良県は幸か不幸か地形がほとんど変わっていませんので、風景としても、それを味わうことができると思います。
どこでもいいから古い建物をなでてみて、念じれば、何か見えてくるような気がします。 |
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難しく考えなくていいんですね。念ずれば通ずでしょうか(笑) |
里中 |
例えば『万葉集』でも、この歌がいいなと思ったら、この人はどんな人だったんだろうと、一人の人から調べてみる。
そんなところから入るといいかなと思います。
皆さん古代とか、古典というと難しく考えすぎで、詳しく知っていないと、何を見てもわからへんとか、この年でわかりませんでは恥ずかしいとかおっしゃる。
でも、知らないっていうことを言えるのが大人になった証拠ですよ。
古典といっても、たかだか1200年1300年前の同じ人間が作ったものです。
『日本書紀』は漢字で書かれています。
『万葉集』も万葉仮名という当て字が使われていますけど、歌を声に出して読むと、日本語として認識できるでしょ。
これってすごいありがたいことですよ。
民族大移動や、侵略や、時の権力によって言語が変わってきた国だったら、まったく違う言語になります。
ちょっとやそっと何かわからない字が書いてあるぐらいどうってことないんですよ。
「記紀・万葉集」に親しむことは、お勉強じゃありませんから、わからなくっちゃだめじゃなく、ちょっとわかるととっても楽しいと思ってほしい。
人生観が豊かになって、こんなにすばらしい人たちの子孫なんだと自分に自信と誇りが持てますよ。 |
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「記紀・万葉集」を読むと自分に自信が持てる。すばらしいことですね。
最後に、奈良県内で、記紀・万葉集にゆかりが深いスポットで、おすすめの場所を教えてください。 |
里中 |
どこと絞るのは難しいですねえ。
あえていうなら、ありきたりですが、甘樫丘(あまかしのおか)かな。
大和三山を見渡すことができ、視覚的に古代の雰囲気にひたれる場所です。
昭和54年に、太安万侶の墓(奈良市此瀬町)が発見されたときのことはよく覚えています。
実在していたかどうかはっきりしなかった人のお墓がちゃんとあって、しかもいつからか茶畑になって使われていた。
奈良ってやっぱり特別な土地なんだなと思いました。 |
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今日はどうもありがとうございました。 |
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2011年11月21日(月)東京・里中事務所にて |