【長谷寺】古くから人々を魅了する花の御寺 長谷寺を当時に思いを馳せて歩く
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続いて「本堂(観音堂)」へ。初瀬山中腹の懸崖に建つ大殿堂で、舞台からの眺望は雄大そのもの。国宝に指定されている。ほの暗い内陣の中には、本尊の十一面観世音菩薩像が祀られており、その無限の慈悲を秘めたまなざしに思わず手を合わせる。奈良時代、徳道上人の造立で、右手に錫杖、左手に水瓶を持つ。身の丈は三丈三尺(約10m)。度重なる火災で炎上しているが、頂上仏のみが焼け残ってきたと言う。今の観世音菩薩像は、天文7年(1538年)に仏師運宗らによって造立されたものだ。
観音像の裏手には来迎図が描かれており、裏に回って来迎図を拝んで極楽往生を願う。内舞台の南西角は、極楽の入口として信仰を集めていた。
内舞台に掲げられた西側と東側の絵馬は、もともとは一枚だったという。西の絵馬の牛若丸と、東の絵馬の弁慶が、夜ごとに絵から抜けだして大立ち回りをするので、二つの絵馬として分けたとか‥‥。
「本堂」の礼堂部分。
舞台部分からは初瀬の山々の景色を一望できる。
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「本堂」から西の「五重塔」へ。そのすぐ側には、「三重塔跡」がある。長谷寺の三重塔は、明治9年(1876年)の落雷で焼失した。そばの本長谷寺の地は、朱鳥元年(686年)に道明上人が銅板法華説相図を安置して祀ったのが長谷寺の草創という。
「五重塔」は、昭和29年(1954年)、戦没被災者慰霊のため建立された。内部には、本尊に大日如来を祀っている。5月中旬~6月上旬、塔の下には西洋シャクナゲが、11月中旬~12月上旬には、周囲に見事な紅葉を見ることができる。
「三重塔」の跡地。
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続いて「五重塔」側の階段を下り「本願院」へ。長谷寺を開山した徳道上人が晩年に住居した跡とされる「本願院」は、もとは聖武天皇の勅願寺であったという。7月下旬から10月上旬にかけて院の下付近にフヨウが咲き、9月下旬~10月中旬には付近に紅白の萩が咲く。
「本願院」より休憩所の前を通り、「開山堂」のある方へと歩く。「開山堂」には長谷寺を開き、西国三十三所巡礼を始めた徳道上人が祀られている。
「本願院」と「開山堂」の間には、お土産や飲み物を買える休憩所がある。
歩く際の楽しみ方
歩く際の楽しみ方
「隠国(こもりく)の初瀬」と古くから歌枕として、和歌に詠まれる長谷寺は、王朝文学の舞台ともなっている。境内に点在する歌碑をたどりつつ、今も昔も変わらない景観や、当時の人々の思いを感じてみてほしい。また、境内に点在する石造物を見つけて歩くのもおもしろい。石観音や手水鉢、石灯籠などを探しながら歩いてみるのはいかがだろうか。四季折々の花が目を楽しませてくれる花の御寺・長谷寺を、歌碑や石造物を発見しながら歩いてみて。