歩くまえに知っておきたい長谷寺にまつわる物語
古来より歌や物語にも。長谷寺は文化人が多く訪れた場所
長谷寺はその長い歴史の中で、様々な歌や物語に登場している。例えば、紀貫之の和歌や、小林一茶の俳句、物語では、紫式部の『源氏物語(玉鬘)』、菅原孝標女の『更級日記』、藤原道綱母の『蜻蛉日記』など。境内のいたる所には、歌が刻まれた歌碑も点在している。ここ長谷寺は、古来より多くの文化人が憧れ、そして訪れ、またその各々が自身の作品に遺した場所なのだ。
『源氏物語(玉鬘)』に長谷寺が登場する。光源氏に愛された夕顔の忘れ形見・玉鬘は、九州に住んでいた。そして美しく成長した玉鬘は、望まない強引な結婚を避けるため旅に出る。その道中で、夕顔の侍女であったが今は源氏に仕えている右近と出会い、二人は長谷寺に籠ることになる。その際に、右近は「二本の 杉の立ちどを 尋ねずは ふる川のべに 君を見ましや」と詠み、玉鬘は「初瀬川はやくのことは 知らねども 今日の逢う瀬に 身さへながれぬ」と返して詠んだ。なお、江戸時代の中頃まで、玉鬘が暮らした玉鬘庵は、現在の宗宝蔵と駐車場の中間あたりにあった。
歩く際の楽しみ方
歩く際の楽しみ方
「隠国(こもりく)の初瀬」と古くから歌枕として、和歌に詠まれる長谷寺は、王朝文学の舞台ともなっている。境内に点在する歌碑をたどりつつ、今も昔も変わらない景観や、当時の人々の思いを感じてみてほしい。また、境内に点在する石造物を見つけて歩くのもおもしろい。石観音や手水鉢、石灯籠などを探しながら歩いてみるのはいかがだろうか。四季折々の花が目を楽しませてくれる花の御寺・長谷寺を、歌碑や石造物を発見しながら歩いてみて。