【長谷寺】古くから人々を魅了する花の御寺 長谷寺を当時に思いを馳せて歩く
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「下登廊」を登りきったところに、「天狗杉」がある。この杉の名は、長谷寺第十四世能化(住職)であった英岳という高僧の小僧時代のある逸話から付いたようだ。英岳師が登廊に下がる灯篭に明かりを燈していたところ、夜になると天狗が現れ明かりを消して歩くいたずらをしていた。
これに発奮した英岳師がますます修行に励んだことで、その後能化職へと進むことになったという。境内諸堂の修繕のために、この周辺にあった杉を伐採して用材に用いようとしたが、「能化となったのも天狗のおかげ」と残した一本だという。なお、天狗の正体はムササビであったとか‥‥。
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「中登廊」を登りきったところに、「蔵王堂」がある。この「蔵王堂」のあたりに、吉野山から虹が架かり、その上を三体の蔵王権現が歩いて長谷寺までやって来たことからこの場所に尊像を祀っている。蔵王権現は、役行者が吉野・金峯山寺で修行中にお告げを得たという憤怒形の仏。金峯山寺の蔵王堂に祀られている、弥勒・釈迦・千手観音と同じ三体を祀る。
「蔵王堂」のすぐ側には、「縁結びの社」と「貫之の梅」が。「縁結びの社」は、諸国を行脚する西行法師とその妻であった尼僧とが、観音様のお導きによりこの場所で再会したことから建立された。また「貫之の梅」は、幼少期を長谷寺で過ごした紀貫之が、叔父である雲井坊浄真を訪ねて再訪した際に『人はいさ心も知らず故郷は花ぞ昔の香ににほひける』と詠み、その返歌として浄真は『花だにも同じ色香に咲くものを植ゑんけん人の心しらなむ』と詠んだことにちなむ。この場所付近では、2~3月にかけて梅や椿が咲く。
「縁結びの社」と「貫之の梅」。その奥には、小林一茶の句碑もある。
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「上登廊」を最後まで登りきり、正面の奥に見えるお堂が「愛染堂」だ。天正16年(1588年)、観海上人の再建。内陣には愛染明王像が安置されている。
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歩く際の楽しみ方
歩く際の楽しみ方
「隠国(こもりく)の初瀬」と古くから歌枕として、和歌に詠まれる長谷寺は、王朝文学の舞台ともなっている。境内に点在する歌碑をたどりつつ、今も昔も変わらない景観や、当時の人々の思いを感じてみてほしい。また、境内に点在する石造物を見つけて歩くのもおもしろい。石観音や手水鉢、石灯籠などを探しながら歩いてみるのはいかがだろうか。四季折々の花が目を楽しませてくれる花の御寺・長谷寺を、歌碑や石造物を発見しながら歩いてみて。