古墳の魅力新発見!橿原・明日香西部の古墳めぐり

文=谷五郎

(たにごろう)歌手、タレント、ラジオパーソナリティ。現在『谷五郎のこころにきくラジオ』(ラジオ関西 月曜~木曜、午後1時~4時)に出演中。 ウォーキングを健康法に、20キロ近くダイエットした経験がある。ウィットに富んだ文章を書くことでも知られ、端々から歩く愉しみがほとばしる。

ゆっくりと、奈良を、歩いてみたいと思っていた。でも、なかなかタイミングが合わなかった。というのは、表向きの理由。実は、奈良がちょっと遠かったのは(距離じゃなくて、気持ちね)、その歴史の重さ、なんですよお。奈良を歩くのに、「えー?そんな歴史も知らないの?」と、誰かにいわれそうな気が、勝手にしてたんです。それに、ホントのところ、僕、「世界史」派なんです。日本史の、それも古代は、ちょっと、苦手なんですよお…。そんな僕に、「古墳めぐりのコースを歩いてみませんか」とのお誘い。「古墳?あんなの、面白いのかねえ。でも、知らないからこそ、面白いかも」と、初めて奈良を歩くことになった。

スタートは、近鉄・橿原神宮前駅。ここから西に向かって新沢千塚(にいざわせんづか)古墳群や宣化天皇陵をまわり、その後南へ下って益田岩船を見物。その後、明日香村西部の岩屋山古墳、マルコ山古墳、高取町の束明神(つかみょうじん)古墳、市尾墓山古墳と歩き、ゴールの近鉄・市尾駅までのコースだ。距離にして17~18キロメートルといったところか。

明日香村の風景

明日香村の風景

はじめに訪れたのは新沢千塚古墳群。いきなり、でこぼこの山が、固まって現れる。えー、これって古墳?小山がボコボコといった感じで集まっている。ひとつの古墳の大きさは、直径10~20メートルくらいの、らくだのこぶみたいなやつだ。あっ、そうか、古墳って、みんな前方後円墳じゃなかったんだ。なんか、固定観念、ありませんでした?古墳は前方後円墳って。
ふーん、奈良では古墳は、こんな感じで、風景に溶け込んでいるんだ。古墳のきわきわまで住宅地になってるよお。あれもこれも古墳なんだあ。そう思いながら歩いていると、ちょっとした小山が、みんな古墳に見えてきた。なんか、気になりだしたなあ。
続いて、おー、なんじゃ、これは。山の中に、突然、でっかい岩が出現!しかも、中をくりぬいている。益田岩船の表示。なんで?なんのために?どうしてこの山の中なわけ?
ハハーン、穴の中に大きな柱を建てようとしたなあ。土台の石か?いや、これは、御神体になる岩だったのかも?いやいや、やっぱりお墓用の石か?途中であきらめたのか?いやあ、想像は、果てしなく広がっていく。
実は、これが奈良の、古墳時代の面白いところなんですよ。想像自由、妄想勝手。まだ解明されていないことがいっぱいなので、発想は自由自在。歴史書なんか、怖くないのである。ああ、おもしろっ!
でも、古墳の中って、どうなってるんだろう?これは気になるよね、やっぱり。するとどうだ、中を見られる古墳も、ちゃあんとあるんですよ。直接中が見えるようになっている古墳から、ガラス戸越しに見る古墳まで様々だ。

明日香村を見下ろす道を進む

明日香村を見下ろす道を進む

途中立ち寄った真弓牽牛子塚(まゆみけんごしづか)古墳で、中を懐中電灯でのぞいてみる。あ、そうそう、古墳ウォークには、懐中電灯は必需品ですよ。おお、きれいに天井をくりぬいてる。一体、誰のお墓?どこからこの石、運んだ?すごい技術だなあ、4~7世紀頃のことでしょ。それにしても、よく残ったもんだねえ、今日まで…。いろんな思いが次々ですよお。ええー!?古墳の上に登ってもいいの?そんなのもアリなんだ。明日香村のマルコ山古墳、ゴール付近の市尾墓山古墳に登ってみる。いいながめ。でも、いいのかな、古墳を踏みつけて…。結構、オープンな感じですね。

いやあ、実に多彩ですね。奈良の古墳って。歩いている途中の、まわりの景色も、また何ともいえずによかった。途中、あんまり人にも出会わなかったけど、なんか、落ち着くんですよ。昔からの自然と、その風景がそこにある、という感じでしょうか。そりゃあ、大和三山も、そのまま、ちょっと向こうにあるんだもんねえ。日本のふるさとの原点ですよねえ。最近、「ふるさと」って何かなって考えることがあるんですよ。ただ住んでいるだけじゃ、愛着ってわきにくいですよね。やっぱり、自分がその土地とどう関わったか、どんな関わり方ができたか、そして、そのことが次の世代にどう引き継がれていったか。そんなことがあればこそ、その土地を、自分の「ふるさと」って感じられるんじゃないかと思うんですよ。その意味でいえば、奈良って、本当にありがたいですよね。日本の歴史を我々の世代まで、きちんと引き継いできてくれたんですもんね。だからこそ、奈良は「日本のふるさとの原点」だといえるんだと思います。

今回歩いたコースの東側は、高松塚古墳や石舞台古墳のある超有名コース。もちろん、そんなコースも魅力的なんだけど、みんなにあんまり知られていない、おもしろコースがまだまだあるんですよ。奈良には。マップ片手にぶらっと、どうです?いやあ、古墳って、こんなに面白かったんだ。そして、気がついたら、自然と古代の歴史に興味がわいていた。また来ますわ、奈良には。

※この紀行文は2009年11月取材時に執筆したものです。諸般の事情で現在とはルート、スポットの様子が異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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