光と影の交錯した古代大和。建造物の大部分は、地面の下に埋まっている。が、「記紀」を通じて地の底から語りかけてくる言葉は生々しく、生気に満ちていて、心が躍る。飛鳥を舞台に、波乱に満ちた生涯をおくった女性がいた。天智天皇の娘・鸕野讃良皇女(うののさららひめみこ)その人である。大海人皇子(天武天皇)の妃となり、のちに持統天皇となる。持統は、夫・天武の亡きあとその遺志を継ぎ、行政機能も十分に整っていない時代に、自ら律令による国政を図り、わが国で初めての計画された都市・藤原京を造りあげたスーパーウーマンである。それも尋常でない、清濁をあわせのむ度量があった。この偉大な女帝を知るには、「持統天皇行幸(ぎょうこう)の道」をたどれば、そこここに女帝の軌跡が残っていることに気付く。