09年春、阪神電車と近鉄電車がドッキングし、神戸三宮から、梅田を通らず難波につながり、ダイレクトに奈良へ行けるルートが開通した。神戸以西に住む私には、奈良がいちだんと近くなった感がある。おかげで、例年に増して、四季折々に奈良へと出かける機会がふえた。千三百年紀を迎えようという奈良は、行けば、遠い先祖が遺してくれた宝を我々子孫に思い出させてくれる。近鉄奈良駅からは、わずか10分歩くだけで、もう歴史の扉が開いている。興福寺、東大寺、元興寺、新薬師寺、そして国立博物館……。鹿たちが遊ぶ奈良公園周辺から、若草山、聖武天皇陵のあたりまで、歩いて回ることのできるエリアだけでも、国宝がぎゅっと詰まっている。短時間に、できるだけたくさんの国宝を見たいという横着な現代人にはありがたいエリアだろう。