本物の魅力を発信

奈良墨と奈良筆

墨と筆

奈良墨、奈良筆の製品が並ぶコーナー

 

 

■伝統産業の魅力を発信

 

奈良の伝統産業を代表する奈良墨と奈良筆。時を越えて受け継がれてきた本物には絶対的な力があります。

 

伝統工芸品ショップでは開村当初から、奈良独特の技で生み出される墨と筆の魅力を発信してきました。文化村から世界へ、次世代へ。奈良が大切に育んできた文化が着実に広がっています。

■高品質でシェア95% 

 

7世紀初め、推古(すいこ)天皇の時代に始まったとされる日本の墨づくり。当初つくられたのは松を燃やして集めた煤(すす)を膠(にかわ)で練った「松煙墨(しょうえんぼく)」でした。その後、菜種や胡麻など植物油の煤を用いた「油煙墨(ゆえんぼく)」が登場すると、黒々とした発色や、すり心地の良さなど圧倒的な高品質がたちまち多くの支持を集め、墨の主流となりました。

 

日本の「油煙墨」づくりは室町時代、興福寺二諦坊(にたいぼう)で始まったとされています。墨の代名詞ともなった、この「南都油煙」こそが、今、約95%のシェアを誇る奈良墨のルーツです。

 

奈良の老舗では今も、素焼きの皿をずらりと並べ、燈明のように植物油を燃やして煤を集める手焚採煙(てだきさいえん)が行なわれています。

墨と筆     

現代の売り場には『奈良らしさ』をアピールする製品も

■「練り混ぜ法」で絶妙の書き味

 

奈良は日本の筆づくり発祥の地。9世紀ごろ、遣唐使として唐で学んだ空海が帰国後、大和国の坂名井清川(さかないのきよかわ)に毛筆のつくり方を伝授し、完成した筆を嵯峨(さが)天皇に献上したとの記録が残っています。

 

奈良筆の特徴は、複数の動物の毛を原料とする技法「練り混ぜ法」にあります。イタチやタヌキ、シカなど十数種類の動物の原毛をそれぞれ水に浸して固め、目指す筆の特徴に合わせて混ぜ合わせることで理想の書き味を追究する技法は、より繊細な線が求められる、かな文字の普及によってもたらされました。

 

ちなみに良い筆をつくるには毛先があることが重要ですが、一度刈った毛に毛先はありません。赤ちゃんの髪の毛で作った筆は今、記念の品として人気ですが、生まれたばかりの赤ちゃんの毛髪は筆の材料としても優れたものだったのですね。

墨と筆

売り場には英語の解説も 

■多様な製品、外国の人も購入

 

伝統工芸品ショップでは奈良墨、奈良筆のさまざまな商品を取り扱っています。

 

墨は煤と膠を充分に練り合わせた後、木型に入れて成型、乾かした後、表面の文字や絵柄に彩色して仕上げますが、売り場では正倉院文様を模した木型を用いたものや東大寺大仏殿の鴟尾をかたどって金箔を巻いたものなど、墨の工芸品としての魅力も存分に発信しています。

墨と筆

東大寺大仏殿の鴟尾をかたどった墨

 

 

筆は繊細な線を描き分けられるものや、力強い書に適したものなど、それぞれの用途、好みで選べる多彩な品ぞろえ。硯と墨はもちろん、早速、般若心経を写せる写経用紙も手に入ります。

墨と筆

多彩な筆から自分が求める一本を

 

 

「海外からのお客さまが筆と墨のセットを目指して来店されたり、書に詳しい僧侶の方が豊富な品ぞろえを知って来店されるなど、『奈良墨、奈良筆の魅力を伝えたい』という私たちの思いが浸透してきたのを感じます」とスタッフさん。

■次世代とのコラボで未来へ


ふと見ると、売り場の棚に温かみのある手書きの解説が…。

 

奈良墨、奈良筆の由緒、特徴を簡潔にまとめたボードは、奈良佐保短期大学(奈良市)でマーケティングを学ぶ学生がつくりました。

 

伝統を理解し、伝える次世代の主体的な発信も、とっても心強いですね。

墨と筆

短大生がつくった解説ボード