■高品質でシェア95%
7世紀初め、推古(すいこ)天皇の時代に始まったとされる日本の墨づくり。当初つくられたのは松を燃やして集めた煤(すす)を膠(にかわ)で練った「松煙墨(しょうえんぼく)」でした。その後、菜種や胡麻など植物油の煤を用いた「油煙墨(ゆえんぼく)」が登場すると、黒々とした発色や、すり心地の良さなど圧倒的な高品質がたちまち多くの支持を集め、墨の主流となりました。
日本の「油煙墨」づくりは室町時代、興福寺二諦坊(にたいぼう)で始まったとされています。墨の代名詞ともなった、この「南都油煙」こそが、今、約95%のシェアを誇る奈良墨のルーツです。
奈良の老舗では今も、素焼きの皿をずらりと並べ、燈明のように植物油を燃やして煤を集める手焚採煙(てだきさいえん)が行なわれています。
現代の売り場には『奈良らしさ』をアピールする製品も