10月15日(日)まで文化財修復・展示棟地下1階の展示室で開催中の第3回企画展「すごいぞ!レプリカ~文化財を未来に伝える~」は、奈良を代表する仏像や絵画、考古遺物などのレプリカを集めた、ちょっと珍しい展示です。
レプリカと聞いて、「なんだ本物じゃないんだ」「どうせコピーでしょ」なんて思ったそこのあなた。ぜひとも会場へ足をお運び下さい。きっとレプリカの真価に気づき、「本物」の文化財を身近に感じるようになること、間違いなしです。
まずは展示中のレプリカから、いくつかご紹介しましょう。
次に木屎(こくそ)(漆に木粉や木くずを混ぜたペースト状のもの)を盛り付けて細部を造形していきます。
さらに漆(うるし)を塗って金箔(きんぱく)を押し、彩色(さいしき)を施して完成です。
でも、このお顔、何だかちょっとイメージが違うような…。それもそのはず。この鮮やかな彩色は8世紀半ばとされる完成当初の姿を復元したものなのです。
さて、こちらは、聖林寺十一面観音菩薩像の原寸大の右手です。多くの仏像ファンを魅了してきた美しい指先を心ゆくまで堪能できるレプリカ。ずっと眺めていたくなります。
こちらは奈良県立橿原考古学研究所附属博物館に所蔵される、高松(たかまつ)塚(づか)古墳(こふん)壁画(へきが)の複製陶板です。
壁画表面の凹凸の計測、色彩の再現など、最新技術を駆使して、昭和47年に発見された当時の壁画の状態に近づけています。
発見されたことで環境が大きく変わり、壁画にカビが発生するなど文化財保護の難しさを象徴的に物語る壁画ですが、令和の技術が時の流れを越え、飛鳥美人を見事によみがえらせました。
この大きなレプリカは、赤土山(あかつちやま)古墳の円筒(えんとう)埴輪(はにわ)出土状況模型です。
天理市櫟本町(いちのもとちょう)にある赤土山古墳では、大きな円筒形の埴輪が横倒しになった状態で出土しました。地震による地滑りが起きた、そのままの状態で出土したという非常に貴重な遺跡です。
型取りし、樹脂でつくられたレプリカが、地滑りが起きた事実を記録し続けています。
こちらは吉野町の金(きん)峯(ぷ)山寺(せんじ)、国宝の二王門(におうもん)に安置される2軀(く)の金剛(こんごう)力士像(りきしぞう)(重要文化財)のレプリカです。像高5メートルを超える実物は、3年前に保存修理を終え、二王門の修理が完了する令和10年度(予定)まで奈良国立博物館で公開されています。
会場に展示されている10分の1サイズのレプリカは、保存修理に大活躍しました。
金剛力士像は当初、天衣(てんね)(肩から腕に掛けるショール状の布)をまとっていましたが、いつの時代にか天衣は外れ、バラバラの状態になっていたのです。
今回の修理では、これら天衣の断片を元の位置に取り付けるため、10分の1サイズの縮尺レプリカを用いて取り付け位置を検討する方法が採用されました。
実物は像高5メートルを超える大型像です。10分の1サイズのレプリカだからこそ取り付け位置のシミュレーションができたのですね。
今回は、先ほどご紹介した高松塚古墳壁画の複製陶板をはじめ、触れることのできるレプリカも展示されています。
直接手で触れて、それぞれの質感や形状を体感できるのもレプリカならでは。
触れる時は、もちろん、そっと優しく、を守ってくださいね。
会場では、天理市の荒蒔(あらまき)古墳から出土した馬形埴輪(はにわ)のレプリカも展示されています。木でできたこのレプリカには乗ることもできるんです。同じ古墳から出土した人物埴輪の顔ハメパネルと並んで、記念撮影はいかがでしょう?
ここでご紹介した以外にも、展示ではさまざまなレプリカをご覧いただけます。実物の文化財とは異なる価値をもつレプリカの世界を、ぜひ楽しみながらご覧下さい。
展示は10月15日(日)まで。
皆さまのお越しをお待ちしております!