子どもは100の言葉をもっている。イタリア発の幼児教育法「レッジョ・エミリア・アプローチ」 子どもは100の言葉をもっている。イタリア発の幼児教育法「レッジョ・エミリア・アプローチ」

子どもがもつ
100の可能性を
失わせない。
一人ひとりの発想と
個性を尊重する
教育法。

なら歴史芸術文化村が
子どもを対象にした
アートプログラムで参考にする
レッジョ・エミリア・アプローチ。
これはアートを中核に
「創造」と「共同(協同)」を育む
イタリア発の教育法で、
世界中から注目されています。
“個性を伸ばす”、“発想力を育てる”
という幼児向けの教育法は
多く存在しますが、
いったい何が違うのでしょうか。
まずはレッジョ・エミリア保育の
創設者の一人、
ローリス・マラグッツィの詩からご覧ください。

「でも、100はある。ローリス・マラクッツィ」 「でも、100はある。ローリス・マラクッツィ」

子どもには
100とおりある。
子どもには
100のことば
100の手
100の考え
100の考え方
遊び方や話し方
100いつでも100の
聞き方
驚き方、愛し方
歌ったり、理解するのに
100の喜び
発見するのに
100の世界
発明するのに
100の世界
夢見るのに
100の世界がある。
子どもには
100のことばがある
(それからもっともっともっと)

けれど99は奪われる。
学校や文化が
頭とからだをバラバラにする。
そして子どもにいう
手を使わずに考えなさい
頭を使わずにやりなさい
話さずに聞きなさい
ふざけずに理解しなさい
愛したり驚いたりは
復活祭とクリスマスだけ。
そして子どもにいう
目の前にある世界を発見しなさい
 そして100のうち
99を奪ってしまう。
そして子どもにいう
遊びと仕事
現実と空想
科学と想像
空と大地
道理と夢は
一緒にはならないものだと。

つまり
100なんかないという。
子どもはいう
でも、100はある。

 

大人の価値観を押し付けず自然な問いかけから
「なぜ?」と「気づき」を導く。

上記の詩で最も印象的なのは「けれど、99は奪われる」のフレーズではないでしょうか。この詩からもわかるように、レッジョ・エミリアで大切にしていることは、大人の考え方や都合を幼児教育に持ち込まないこと。作品を完成させることを一番の目的にせず、創る過程で子どもが何をしたいのか、どんな発見があるのかという心の動きを尊重して、その子どもがもっているものを引き出すことを一番大切にしています。その心の動きの起点は「なぜ?」「なに?」という問い。子どもの中に芽生えた問いに対話を通じて向き合うことから、新しい気付きを生み出していきます。

墨や和紙など奈良の素材を使った
アートプログラムを実践。

なら歴史芸術文化村では、このレッジョ・エミリア・アプローチに基づいた幼児向けのアートプログラムを行います。作品制作や観察などをテーマにした多彩な内容で、使うのは奈良ゆかりの和紙、墨などの他、落ち葉などの自然の素材も予定。自由なアート体験を通じて、「自ら学び、考え、判断して行動する」、つまりは「生きる力」の土台づくりになることを願っています。

開村に先駆けて
「光と和紙のワークショップ」を開催しました。

2021年1月にアートプログラムのプレイベントを開催。まずは永渕先生が子どもたちに「光」について質問した後、木と和紙の関係を説明していよいよ実験タイムへ。子どもたちは紙と光をテーマに、さまざまな種類の和紙やライト、虫めがね、顕微鏡、プロジェクターなどの道具を使って試行錯誤を繰り返し、自由に観察と創作を行いました。和紙をちぎってみる、くしゃくしゃにしてみるというだけでもさまざまな発見があり、予定時間が過ぎてもまだやりたいと取り組む姿が目立ちました。

  • 畿央大学現代教育学科准教授
  • 永渕 泰一郎氏