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木村さんは、奈良県内のボランティアガイドのまとめ役としてご尽力いただいています。
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木村 |
奈良県内に33のボランティアガイドの会があります。
それぞれの市町村ごとに独自で活動しておられる点を尊重しながら、連絡会では情報交換と交流が主で、一緒にやれることがあれば協力して、奈良の観光に役立てようという組織です。
最近は、ボランティアガイドの活動も広域化してきています。
数年前までは、自分の市町村のことだけ案内できていたらそれでよかったのです。
ところが、お客さんのニーズとレベルが上がってきました。
これはインターネットの影響もあって、例えば、橿原市内をガイドしているときにも、近隣の明日香村や桜井市にもこういうところがありますよと、そういう情報提供ができないと満足していただけないようになってきています。
我々はガイドの広域化といっています。
そういう変化に対応する目的もあって、連絡会では、情報交換する会議を年に4回、各地を訪れる研修を年に2回行っています。 |
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木村さんが、この観光ボランティアガイドというものに足を踏み入れられたきっかけは?
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木村 |
歴史に本格的に興味をもったのが今から約30年前、40歳のころです。
きっかけは、白橿町というニュータウンに住むようになったとき、郷土の勉強をするサークルを作ったことです。
そこで、『古事記』とか『日本書紀』の輪読をすることになりました。
同時に読むだけではなく、やっぱり現地に行こうということで、県内のゆかりの地を見て回ったんです。
そのうち、記紀だけでなく、『万葉集』やほかの文献のゆかりの地も回るようになりました。
古代史に限定したわけでもないんですが、奈良県の場合はやっぱり古代史がなんといっても華やかですから、どうしても古代中心になるんですけどね。
その後、平成12年、僕の定年退職から2年後に橿原のボランティアガイドの募集を知り、応募しました。
自分の知識が生かせるし、ガイドをするのも自分の任務のひとつかなということで、やりだしたんです。
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それまでのお仕事は、歴史と関連する業種だったのですか?
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木村 |
まったく関係ない会社でしたね。
個人的に本とか歴史が好きだっただけで。
30年ほど前までは、「記紀・万葉集」をひもといてみようという人も少なくて、だからこそちょっと集中的にやってみようという気持ちになったんです。
今回、奈良県がこういうプロジェクトを組んで、にわかに脚光を浴びてきたことはうれしいです。
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ところで、『古事記』と『日本書紀』を輪読で全部読むにはどれぐらいかかりますか?
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木村 |
月2回ずつで、現代語訳ではなく、読み下し文を輪読して、ペースによって違うと思いますが、僕たちの会では『古事記』で2年、『日本書紀』で7年はかかりました。
それを二回ずつやりました。 |
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すごい。頭にしっかり入るでしょうね。
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木村
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いやいやそんなの、入りませんって(笑)。
二回読んだから終わりじゃなくて、積み重ねに意味がある。
輪読して、親しみがわいたという程度で。
でも、輪読会という形をとったのが続いた秘訣です。
個人で読んでても続かへんですよ。
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ぜひ、これから「記紀・万葉集」を通読したいという人は、仲間といっしょに始めると、途中で挫折しないかもしれませんね。
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木村
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人数は5人から10人ぐらいが、ほどよく順番が回ってきて、おすすめですよ。
記紀の場合は、意味がこまかくわからなくても、とにかく声を出して読むということが大事だということを実感しました。
僕たちも最初はね、なかなかすらすらは読めません。
僕たちの会には、学者さん、研究者はひとりもいませんでしたしね。
それでも続けていって、ああでもない、こうでもないと意見を出しながらやっていくうちに、慣れてきて。
慣れるということが大事です。
それから、『日本書紀』より『古事記』のほうがいくらかとっつきやすい。
だから、今年は古事記編纂1300年の節目の年でもありますし、ぜひ『古事記』からどうぞ。
それと、現代語訳もいいですけど、まずは読み下し文を苦労しながら、読むことをおすすめします。
記紀の独特の言葉とか、言い回しとか…けっこう面白いんですよ。
例えば、「な怠りそ」で「怠ってはいけない」という意味になるとか。
天皇と書いて「スメラミコト」と読むとか。その響きを楽しんでみてほしいです。
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