境内に、国指定史跡である吉野最古の古代寺院・比曽寺の跡が残る。比曽寺の創建は多くの謎に包まれているが、奈良時代(8世紀頃)には、東西に塔を配置する薬師寺式の伽藍があったと考えられている。 比曽寺は、日本書紀の欽明天皇14年(553年)条に示される「吉野寺」だとされており、「吉野」の地名の発祥になったとの説もある。また、平安時代には「現光寺」とも呼ばれ、吉野地域を代表する仏寺巡礼地のひとつとして知られていた。 世尊寺境内には比曽寺の塔跡の礎石が残されており、東塔跡に建っていたとされる、高さ約25mの鎌倉・南北朝時代の三重塔は、豊臣秀吉によって伏見に移された後、徳川家康によって滋賀県の三井寺に寄進され、現在は国の重要文化財となっている。※建物内の拝観をご希望の場合や、説明をお聞きになりたい場合は事前にご連絡を。TEL/0746-32-5976(世尊寺)◆太子堂◆ 太子信仰の象徴で、県指定文化財。高さは礎石から棟まで約7.8m。創建年代はわかっていないが、建物の軒丸瓦には、後醍醐天皇から賜った寺名である「栗天奉寺(りってんほうじ)」の「栗」の字が残されている。また、角屋の鬼瓦には享保7年(1722年)の銘が、棟の鯱瓦には寛政8年(1796年)の銘があり、同年の修理札も見つかっている。◆阿弥陀如来坐像◆ 世尊寺の本尊。日本書紀によると、欽明天皇が命じて造らせたもの。◆木造十一面観音立像◆ 木造の十一面観音像としては吉野で最も古く、高さ約2.18mの奈良時代の巨像。県指定文化財。◆現光寺縁起絵巻◆ 飛鳥時代の創建から鎌倉時代の再興までの現光寺(比曽寺)の縁起が記されたもの。県指定文化財。(模写本のみ公開。)