ならの彩りさん!

谷瀬集落【十津川村・谷瀬】

豊かな自然を生かした谷瀬の魅力づくり

谷瀬集落【十津川村・谷瀬】

<インタビュー>
谷瀬集落 副総代
北谷 忠弘さん

皆さんの取り組みについて教えてください。

集落の過疎化が進み、村おこしをしたいという想いは以前からありました。「谷瀬の吊り橋」という名所があって、観光客の方がたくさん来てくれます。少しでも村の収入になればと、つり橋茶屋をつくりましたが、やはり、谷瀬に住んでくれる人を増やしたい。吊り橋を訪れた人たちに足を伸ばしていただき、集落の中を見ていただいたら、ここに住んで見たいと思う人があらわれるかも知れない。そういう考えもあって、村おこしに積極的に取り組もうと考えるようになり、専門家の方にご協力いただきながら、皆で話し合いを始めました。
まずは集落に来ていただこうということでつくったのが「ゆっくり散歩道」です。それまでは集落の方針もあり、観光客は中に入れないようにしていましたので、大きな決断だったと思います。集落の人たちが力を合わせて間伐をし、その間伐した木を使って散歩道の階段や手すりを整備しました。最初は自分たちだけで進めていたのですが、そのうち、奈良女子大学や奈良県立大学の皆さんが協力してくださることになり、大きなプロジェクトに発展し、散歩道だけでなく、展望台までつくることになったのです。展望台は森山という山の中にあり「森山展望台」と呼ばれていますが、「日本一の吊り橋」にちなんで「日本一の展望台」と呼ぶ人もいます。以前は木がなく、吊り橋がよく見える見晴らしの良い場所だったという話を聞き、木々を伐採してつくることにしました。実際その通りで、吊り橋はもちろん、十津川の美しい眺望がご覧いただけるようになり、いまではたくさんの観光客が訪れる人気スポットになっています。

  • 雄大な景色が望める「日本一の展望台」

  • 谷瀬集落の未来を語る、北谷副総代

  • イベントなどで一役買う、副総代の奥様・文子さん

  • 豊かな自然を散策できる「ゆっくり散歩道」

  • 谷瀬の吊り橋を渡ったところに案内板

観光面での効果はいかがですか?

観光客が一気に増えましたね。特に休日になると大勢の人が散歩道や展望台を訪れてくれます。この「こやすば」も、そういう方々の憩いの場にしていただこうと整備しました。学生の皆さんも手伝ってくれて、大掃除をして綺麗にしました。ここでは、さまざまなイベントも開催し、皆さんに楽しんでいただいています。「ゆっくり体験」と題して、手づくりのドラム缶の釜でピザを焼いたり、めはり寿司づくりや茶もみ体験など、集落の人たちと観光客の皆さんの良い交流の場になっています。そうした機会を通じて、谷瀬集落の良さを感じていただき、また訪れていただけると嬉しいですね。
観光客が増えて、村にも活気が出てきました。いろんな人の顔が見え、言葉を交わすことで、集落の人たちもイキイキとしています。集落を開放したことは、本当に良い決断だったと思っています。
その他にも、新しい特産品をつくって村おこしにつなげようと、酒造りを始めました。棚田を利用して「吟(ぎん)のさと」という酒米を栽培し、その米でできたのが純米酒「谷瀬」です。この企画にも学生の皆さんが協力してくださり、醸造には吉野町の美吉野醸造さんに協力していただきました。十津川村としても初めての純米酒で、村おこしの良いきっかけになればと期待しています。

散歩道の途中にある憩いの場「こやすば」

移住についての取り組みをお聞かせください。

移住者第1号となった、黒岩さん(左)と村おこしの最前線で取り組む、坂口総代(右)

「谷瀬で暮らす」というPR冊子をつくり、集落の魅力を伝えたり、集落特有の習慣や決めごと、また電気・ガスなどの生活環境について詳しく紹介しています。実際に生活するとなると、やはり不便な面も出てくる。それらも含めて、ここで暮らすことの魅力や素晴らしさを感じていただき、谷瀬で暮らしたいと思っていただけると嬉しいです。そのためにも、移住者の住居の確保が重要な課題ですので、その取り組みを進めています。谷瀬には、ずっと住んでいる人もいれば、家を残したまま集落を離れ、年に何度か帰ってくるという人もいますので、空き家バンクへの登録者もまだ少ないのが悩みの種です。
初めての移住者を迎えたのが平成26年10月。第一号の黒岩さんは十津川村で玉置神社の賄いとして働き始めたのを機に谷瀬に移住し、翌年、観光でここを訪れた女性と知り合い、結婚しました。谷瀬の吊り橋で行われた結婚式は大きな話題になり、新聞やテレビなど多くのメディアでも取り上げられるほどでした。集落の人たちも企画から参加するなど全面的にサポートし、集落あげての一大イベントになりました。それ以降、移住を希望される方も少しずつあらわれ、現在、移住者は4世帯になりました。若い人が増えて、赤ちゃんが生まれたという朗報を聞くと、私たちもますます元気が出ますね。

谷瀬の未来について、どんなお考えをお持ちですか?

自然景観を整備し、散歩道や展望台をつくり、イベントを開催するなど、それらの取り組みは非常に大きな成果がありました。谷瀬の良さを多くの人に知っていただき、移住者が増えれば、集落の未来にも、もっと明るい光が見えてくると思います。谷瀬には豊かな自然があります。ゆったりと流れる時間の中で暮らす魅力は、ここでしか味わえません。そんな魅力をこれからもどんどんアピールしていきたいと思います。そして、谷瀬の未来を新しい人たち、若い人たちに託したい。そんな希望を抱いて、夢のある取り組みを続けていきます。

来村者の暖かい思い出に溢れる旅のノート

※インタビュー記事の内容は取材時のものです。
[取材日]平成29年10月5日

関連する方々の活動や景観・施設

  • 十津川村一番の観光名所「谷瀬の吊り橋」

  • 学生の発案による手作り案山子

  • 要所要所で案山子さんが道案内

  • 手書きの案内板もいたるところに

  • 人気の天然水は抜群の湧水量の隠れた銘水 

  • 観光客を楽しませようと、みんなで手作りした水車

  • 散歩道は神社への参道から展望台へ続く

  • 展望台山頂の縁結びの神様、竹原八幡神社 

  • 「こやすば」は、くつろげるスペース&ギャラリー