ならの彩りさん!

宇陀市【佛隆寺】

多くの人々の想いと力が守り育てる彼岸花

宇陀市【佛隆寺】

佛隆寺 住職
鈴木 隆明さん

佛隆寺の彼岸花についてお聞かせください。

佛隆寺の彼岸花は、自然に咲いたものが徐々に増えて、いつのまにか石段の参道沿いを覆い尽くすようになりました。もともとは参道脇にある樹齢900年を超えると言われる千年桜のほうが有名でしたが、いまでは彼岸花の名所として知られるようになりました。ところが数年前から、シカやイノシシが出没するようになり、新芽を食べたり、土を掘り返したりしたため、3年前にはほぼ全滅状態。本当に残念で、悔しい思いをしたものです。
そんな状況を見て、地元の皆さんや宇陀市役所の方々が立ちあがってくれました。参道を囲むように獣害防護柵を設置してくださったおかげで、シカやイノシシの被害に遭う心配がなくなりました。そして、地元や観光協会関係者などボランティアの方々が協力し、県内外から寄贈された球根を植えてくださったのです。その話を聞いた時は本当に嬉しかったですね。同時に「これは大変な作業になるな」と思いましたね(笑)。
当日は30人以上の方が集まり、4500個の球根を一つ一つ手作業で植えていったのですが、もともとここの土壌は石が多いため、球根を埋めるための穴を掘るのもひと苦労でした。そして、今年は宇陀市の方が再度、ボランティアを募集してくださり、50人以上の方々が力を合わせて2万個もの球根を植えてくださいました。この3年間の苦労が実り、今年はたくさんの彼岸花が美しい花を咲かせてくれました。何度も訪れてくれている皆さんが「たくさん咲くようになりましたね」と喜ぶ姿を見て、私もほっとしています。以前の状態を取り戻すまでには、まだ時間がかかりそうですが、いま植えている球根が土の中で分球して、数がどんどん増えていけば、数年後には、また参道周辺を埋め尽くす彼岸花が見られると思います。

  • 彼岸花と千年桜

  • 彼岸花への想いを語る佛隆寺の鈴木住職

  • 参道の彼岸花

  • 球根植栽ボランティアの皆さん(2017年6月)

  • 急な斜面で穴を掘る作業

復活しつつある彼岸花を見てどんなお気持ちですか?

球根を寄贈してくださった方々、そして一緒に植えてくださったボランティアの方々には、感謝の気持ちでいっぱいです。皆さんのお気持ちに応えるためにも、大切に育て、増やしていかなければと思っています。日頃の水やりはもちろん、定期的に草刈りをして日光をあて球根が分球しやすい環境づくりをしています。急斜面であるため、草刈りをするのも大変です。ヤギを飼って放して、草を食べさせたらどうか、という話も出るくらいです(笑)。シカやイノシシの被害に遭う心配はなくなりましたので、これからはしっかりと育てて、数を増やして、以前の姿を早く取り戻したいですね。いまはまだ植えたばかりで休眠状態の球根もたくさんあるので、来年、再来年は、もっと多くの花が咲くでしょう。協力してくださった皆さんにも、自分の植えた彼岸花が元気に咲き誇る姿を見て、喜んでいただきたいです。

日頃の手入れを任される住職の奥様・田鶴子さん

★球根を寄贈されている宇賀さんにもお話を伺いました。

3年前から佛隆寺に球根を寄贈している宇賀さんご夫妻

今日は、彼岸花が気になって妻と一緒に大阪からやって来ました。想像していたよりもたくさんの花が咲いているのを見て、ほっとしました。植えた球根の6割以上は咲いていると思います。来年はもっと咲くでしょうね。彼岸花は分球して増えていく花なので、その間は花を咲かせません。だから、毎年、追加して植えていかないといけないんです。
最初に球根を寄贈したのは3年前。当時、地元の事業で公園に彼岸花を植えていました。プランターに植えるのですが、どんどん分球して増えるため、球根をどこかに移さないといけないと考えていました。ちょうどその時、佛隆寺の彼岸花が被害に遭って全滅状態になっていると聞き、やって来たら、咲いているのは7、8本だけ。そこで住職に相談し、掘り出した球根を4000個、寄贈させていただきました。ダンボールで送られてきた大量の球根を見て、住職もびっくりされたそうです(笑)。その球根を宇陀市役所や地元のボランティアの方々に協力いただいて植えたのが3年前でした。そして、翌年には環境に馴染んで美しい花を咲かせてくれました。球根は、毎年寄贈させていただいていますが、数としてはまだまだ。目標は、あと10万個です。そうすれば、3年後には以前の姿に戻ると確信しています。住職にも「あと3年、頑張りましょう!」と言いました。来年は、白い彼岸花も植えたいですね。

★宇陀市役所農林商工部商工観光課の川村課長補佐から、ひと言。

ご住職、宇賀さんのお力はもちろん、地元の方々、ボランティアの方々のご協力のおかげで、佛隆寺の彼岸花が以前の姿を取り戻しつつあります。市の広報誌などで球根の寄贈を呼びかけたところ、宇陀市だけではなく、市外・県外からもたくさんの球根が集まりました。球根を寄贈してくださった方々や、植え付けを手伝ってくださった方々も、気になってまた足を運んでくださいます。そうした皆さんの想いが着実に実りつつあることを実感しています。佛隆寺の彼岸花を絶やさぬよう、獣害対策も含め、これからも皆さんと力を合わせて取り組んでいきたいと思います。

彼岸花の復活に力を注ぐ宇陀市役所の川村課長補佐

※インタビュー記事の内容は取材時のものです。
[取材日]平成29年9月25日

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  • お抹茶も楽しめる境内

  • 白い彼岸花も育成中