ならの彩りさん!

緑友会【天理・里地里山づくり】

歴史ある奈良の景観を守る

緑友会【天理・里地里山づくり】

緑友会 会長
柴田 宗明さん

設立の経緯とおもな取り組みを聞かせてください。

緑友会は平成14年11月、奈良県立高等技術専門校・造園技術科の修了生が創立総会を経て設立しました。当初の会員数は104名でしたが、現在では約230名の規模で活動(ボランティア)を続けています。もともとは同窓会として活動を始め、平成20年3月の平城宮跡東院庭園での剪定ボランティアを皮切りに、さまざまな景観保全活動に取り組んでいました。平成23年には「奈良ボランティアネット」に入会し、平成26年には「なら生物多様性保全ネットワーク」、「春日山原始林を未来へつなぐ会」に、平成27年には「奈良県協働推進センター運営協議会」に、平成29年には「『きれいに暮らす奈良県スタイル』推進協議会」に参加し、景観保全活動と自然環境の保護に取り組んでいます。
専門校で習得した剪定の技術を生かした公共緑地における樹木の剪定がおもな活動でしたが、平成23年からは奈良市大宮通り油阪交差点において花壇の花植えと管理活動も行っています。さらに平成26年からは「古都法買入地景観形成事業」に参加し、“里地里山づくり”として、ここ天理市柳本町と、奈良市西ノ京でも年間を通じた活動を行っています。その他、羅城門跡公園や万葉の森(橿原市)、県立医科大学、県立奈良高等学校など、現在の活動場所は奈良県内8施設における11箇所になります。

  • この日の活動に集まった緑友会の皆さん

  • 活動内容について語る、緑友会・柴田会長

  • 活動の進捗を見守る、青木活動リーダー

  • 今ではたくさんの柿が実ります

  • 植樹した栗の木にも実が生りました

山の辺(南)エリアでの活動内容を教えてください。

ここは奈良県が植栽計画として進める「なら四季彩の庭づくり」の山の辺(南)エリアに属する場所で、北には長岳寺、南には崇神天皇陵や櫛山古墳があり、近くを通る山の辺の道には歴史を求めて多くの人々が散策に訪れます。緑友会は平成26年の秋からこの地(古都法買入地景観形成事業地)で活動を始めました。面積は約4,500平方メートルで、うち約1,400平方メートルが竹林です。もとは果樹園だった場所で、主に樹齢50年を超えるカキやスモモが植わっています。
空き地となっていた所には平成27年の春にクリとスモモの苗木を各10本植樹しています。私たちが目標としているのは、奈良の歴史的景観に相応しい果樹園の風景を復元することです。おもな活動は、草刈り、果樹の育成、剪定、および竹林整備です。
会員は皆、造園技術科の修了生で、専門校で学んだのは庭園設計と築造、樹木の植栽や剪定技術や技能の習得です。庭園樹としての果樹剪定は学びましたが、果実を取るための果樹栽培技術は学んでいません。ここでの活動を始めるにあたっては、果樹栽培に詳しい講師を招いて手入れの指導をお願いしました。その当時、この事業地はしばらく手つかずであったため、樹木の枝も伸び放題。造園用語で徒長枝(とちょうし)と言うのですが、そのままにすると花芽がつかないため、徒長した枝をすべて切り落としました。以降、剪定は毎年行っています。剪定をする場合、私たちは「開心自然形」という形にしています。上のほうの高い枝を切り払い、横に枝が広がるような形です。そうすることにより、日光が当たる面積が広くなり、風通しも良くなるため、害虫が発生しにくくなります。また、手入れがしやすいというメリットもあります。

手入れされ次の実りを待つカキ

活動において苦労されることは何ですか?

ポンプで汲み上げた水を散水する、渋谷さん

夏には、新たに植えた果樹の幼木育成に水が必要となります。事業地内には井戸があったので、初めての夏にはある財団から頂いた助成金で貯水タンクを購入し、潅水を必要とする場所に据えました。そして会員から借りた水中ポンプと当会所有の発電機で井戸水を揚水して、灌水を試みました。しかし、井戸が低い場所にあったため貯水タンクまで水が上がりきらず、途中でホースからバケツに水を受け、手運搬したのを思い起こします。次の年度にいただいた助成金では真っ先にエンジンポンプを買いました。いまでは随分、ラクになりましたよ(笑)。
ほかに苦労していることは獣害です。事業地内にはイノシシが出没しているらしく、土地を掘り起こして地表が凸凹となります。このため、草刈りなどの作業がやりづらくなり、活動に支障を来たしています。間伐した竹や剪定した枝を使って柵を設けていますが、できれば獣害防止の金網を設置したいですね。

今後の取り組みについて課題としていることは?

奈良県立高等技術専門校・造園技術科修了生の半分近くは、私たちの活動に共感し、入会してくれます。最近、造園技術科の履修制度が変わり、履修期間が半年間から1年間へと延長されたため、年間の修了生が半減しました。このため入会者もほぼ半減しました。会員の大半は60歳以上ですので、今後のことを考えると、若い人がもっと増えてくれればと思っています。また、ほとんどの会員は仕事を持っているため、毎回は参加できない人もいます。この活動地の担当は35名ですが、いつもは10名前後で作業にあたっています。緑友会の活動箇所も広がっていますので、会員数を増やすことも今後の課題の一つでしょう。私たちの活動は、歴史ある奈良の景観を守ることで、この地を訪れる多くの皆さんに喜んでいただけるという、やりがいのある取り組みです。専門校で身につけた技術を生かせるという点でも、これほど有意義なものはありません。これからも、緑友会メンバーが力を合わせて、奈良県の景観保全に取り組んでいきたいと思います。

取り組みについて熱弁を振るう、木村さん

※インタビュー記事の内容は取材時のものです。
[取材日]平成29年9月24日

関連する方々の活動や景観・施設

  • 雑草で埋まる活動当初の頃 (平成26年10月)

  • 現在の様子 果樹園も沿道も綺麗に整備

  • 眺望が広がり空が高くなりました

  • 井戸から汲み上げた水を貯水タンクへ

  • 果樹育成エリアへの水やりは今でも一苦労

  • 果樹の下草刈り払い作業

  • 果樹の手入れも習得しました

  • 作業で道路に散った枝や草も丁寧に除去

  • 活動地から見える崇神天皇陵と櫛山古墳