インタビュー記事

2021.06.25

国産材で建てる、憧れの木の家。予算、失敗しない住宅会社の選び方。

木は古くから私たちの生活や文化にとって欠かせない存在です。特に日本の建築物の多くに木が使われており、現在も国内の戸建て住宅の多くは木造といわれています。木材には、大きく分けると丸太から切り出したままの「無垢材」と、複数の板を重ね合わせて作られる「集成材」がありますが、今回は「無垢材」を使った木の家に着目します。

奈良での家づくりの専門誌・ウェブサイトの一つとして、地元の住宅会社を紹介している『奈良すまい図鑑』編集部の渕上さんと青木さんに、木の家の魅力や理想の家づくりに役立つアドバイスを伺いました。

目次

心地よい手触りや香り、自然が生み出した木目の美しさなど、木には気持ちを落ち着かせリラックスさせる効果があるといわれています。渕上さん自身も実家のリフォームで奈良県十津川村の無垢材を使い、その魅力を実感されたそうです。特に無垢材のフローリングが気持ちよく、子どもたちが自然と家の中を裸足で歩くようになったというエピソードも。読者の方からは、シックハウス症候群が和らいだという声も聞くのだとか。

「屋内で靴を脱ぎ床に座ることが多い日本人にとって、無垢材のフローリングはとても居心地が良いものだと思います。『奈良すまい図鑑』で住宅の取材をする中で、ビニールなどのクロスに比べて、木の壁や床の方が香りが良い・暖かい・紫外線やブルーライトの反射が少なく目に優しいといった特長も挙がっています」と、渕上さん。
木材の「調湿作用」も家づくりにおける大きなポイントです。調湿作用とは、湿度が高くなると空気中の水分を吸収し、乾燥しているときは内に含む水分を放出する働きのこと。特に蒸し暑い夏や乾燥する冬に室内の湿度を調整してくれることから、木材を使った家は日本の気候に適しているといわれています。

さて、そんな無垢材を注文住宅やリノベーション・リフォームで取り入れるにはどうしたらいいのでしょうか? 家づくりにおいてとても重要な住宅会社の選び方、予算に合わせて木を取り入れる方法などについて伺いました。

木の家かそうでないかに関わらず、まず多くの方が悩むのが家づくりを依頼する住宅会社選びです。住宅会社には、規格化されたプランが用意されている「ハウスメーカー」、独自の要望やこだわりを主に設計面で実現してくれる「建築事務所」、地域密着型で施工対応してくれる「工務店」があり、得意分野や特徴は会社ごとにさまざま。特に工務店は、規模や技術力、デザインの傾向など多種多様です。

その中からどうやって自分に適した住宅会社を選べば良いのか、さまざまな工務店や建築事務所を取材してきた渕上さんに尋ねると「予算や性能、デザインなど、“良い家”の定義は人それぞれ。まずはどんな家にしたいか、どんな家が心地よいか、住宅会社のウェブページなどで施工事例を見ながらイメージに合う会社をいくつかピックアップした上で、深く調べてみてください」とのこと。また、自分の希望だけでなく、事前に家族できちんと相談して、どんな家が良いのか方向性を固めておくことも肝心です。
各会社のウェブページだけでなく、発行されている住宅会社の情報誌も参考になります。奈良で家づくりをされる方は、ぜひ奈良県の住宅情報を深く掘り下げて紹介している『奈良すまい図鑑』もチェックしてみてください。

  • 『奈良すまい図鑑』発行雑誌

住宅会社が決まったら、どのような家にしたいのか担当者にイメージを伝えていきます。その会社の施工事例以外でも、ウェブ上で見つけた画像などがあれば活用してイメージを共有しましょう。家づくりにおいては、担当者との相性も重要。初めての家づくりで具体的なイメージが湧かないという場合も、それを引き出して形にしてくれるような相性の良い担当者と出会えるかどうかが成功の秘訣です。

ここからは、理想の家づくりをする上で、木を取り入れたいという方に向けて、具体的な取り入れ方についてお話ししていきます。
上質な木材をふんだんに使うのが予算的に難しいという場合は、こだわりたい箇所に重点的に使うという方法もあります。家族が集まるスペース、お客さんの目に触れるところ、寝室など、こだわりたいところに上質な木材を使い、逆に汚れや傷が気になるキッチン周りや子供部屋などは手入れしやすいクロスにするなど、ライフスタイルや価値観に合わせて快適な空間をつくりましょう。
最近はデザイン面でも、木とアイアン、タイルといった異素材との組み合わせが人気なのだとか。例えば、壁全面を木にするのではなく一面だけタイルの壁にするなど、メリハリをつけたデザインが増えているそうです。
住宅会社に相談すれば、予算に応じた提案をしてくれますよ。

  • 壁がタイル/照明がアイアンフレーム
  • 階段がアイアン/奥の壁が石のタイル

渕上さんと青木さんに、木の家をつくる際に特に気になるポイントをまとめて伺いました。

Q.木を家に活用したい場合、どのようなことを重視して住宅会社を選んだらいいでしょうか?

A.木の良さを活かすのが得意なところに頼むのが良いと思います。普段から木材を使っているからこその仕入れルートがあると思いますし、木のことをよくご存知で扱いにも慣れているはず。例えば、天井の板でも一枚一枚の木目や色味を見て美しい組み合わせを考えているところと、そうでないところだと、材料や図面が一緒でも仕上がりが違います。そういったこだわりや得意分野は、ウェブページや施工事例を見れば分かると思います。
そして、候補をある程度絞ったら、見学会やモデルハウスを見に行くことをおすすめします。木を使った家は行ってみると素晴らしいのですが写真映えしないことが多く、本来の魅力をなかなか静止画に収められないのです。そのため、実際の質感や雰囲気を知るために、実物は絶対に見るべきだと思います。より木の家に住むイメージが湧くと思いますよ。

Q.家づくりに木を取り入れる際の平均的な費用を教えてください。

A.規模や素材によって幅広いので、費用の目安を付けるのは難しいですね。坪単価が提示されていることもありますが、そこに基礎工事の費用が含まれているかなど、含まれる工事内容が違うこともあるので、見積もりを取ってみる以外ないと思います。施工事例を見て「これくらいの坪数で建てられた他の家の費用はどのくらいでしたか?」と尋ねてみるのも良いかもしれません。
一般的には、同じくらいの規模のものだと新築の注文住宅の方が高く、中古物件を買ってリノベーションする方がコストを抑えられる場合が多いと思います。

  • リフォームした家の内観

編集者として奈良の家づくりに触れてきた渕上さんと青木さんに「奈良の木」の魅力について伺いました。

節が少なく美しい木目を活かして壁や床、建具などに使われることが多い奈良の木。密植でゆっくり丁寧に育てることで細かく均一になった年輪は、見た目の美しさだけでなく、密度が高いことから強くたわみにくいのも特長。一般的な木材を上回る強度があり、工務店や材木店の方からは「構造材として活かしてほしい」という声もあるそうです。構造材が強ければ次世代に住み継げる丈夫な家になります。

「『強い』というのは建ててすぐには分からないので実感してもらうのが難しいのですが、地震などにも強く、20年後、30年後の歪みやずれなどに差が出てくると思います」と、渕上さん。家を建てる際に費用を安く抑えるよりも十分な費用をかけた方が、住み続けるとトータルでかかる金額は安く済むといいます。また、木は熱を通しにくく家の断熱性を高め、湿度も自然と調整してくれるので、初期費用は高くても、長い目で見ると電気代や修繕費が抑えられたり、健康で快適に暮らすことができるなど、さまざまなメリットが。

さらにシロアリなどの害虫に強いことも建材としての特長の一つ。そもそも国産材のスギやヒノキは白アリに強い樹種ですが、奈良の木は年輪幅の狭さから、同じ樹種の中でもよりシロアリに強い傾向があるということが分かっています。
また構造材としての「強さ」とは逆に、床や壁に木を使うと、転んだ時などに衝撃を和らげてくれるという特長も。「ぶつけてもそこまで痛くないということから、介護施設の床材に使われていたりもします」と、青木さん。

昭和30年代の木材輸入の自由化をきっかけに海外からの輸入材が増えたことや住宅の洋風化などにより、日本の木材の利用が減り、山では森林の荒廃や林業の担い手の減少による後継者問題が叫ばれるようになりました。しかし今後、国産材の消費が増えれば、木を植える、育てる、伐るというサイクルが再び森を育て、ひいては山や海を守ることにも繋がります。

  • 森林サイクル

「なにより、木のある空間にいると、まるで自然の中にいるようで、心が落ち着きますよね」と、青木さん。

人生の一大イベントである家づくり。木の家で過ごす心地良い暮らしはもちろん、何十年、何百年先の未来のことにも少し想いを馳せて、「奈良の木」をはじめとする国産材を家づくりに取り入れてみませんか。

奈良すまい図鑑

奈良の活性化を目指し、2009年より雑誌・ウェブサイトを通じて、地元奈良で住まいづくりを手掛ける住宅会社の魅力を発信。
注文住宅やリフォーム&リノベーションなど、年4回家づくり関連雑誌を発行。
ウェブサイトでは、地元工務店が行うイベントや見学会の案内など最新情報の発信を続けている。 さらにメディアの枠を超えて、地元工務店とユーザーをつなぐ「家づくり相談カウンタ―」を今秋オープン予定。

公式サイト

 

取材・文:岩永茜
編集:奈良の木のこと編集部
取材協力・写真提供:奈良すまい図鑑

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