記紀・万葉講座

「こんなにゆかいな日本の神話(古事記のものがたり)」

記紀・万葉リレートーク 第5回 河合町

2012年12月1日(土) 13:30~
会場・河合町 まほろばホール

講師・作家 小林 晴明(こばやし・せいめい)氏/作家 宮崎 みどり(みやざき・みどり)氏
演題・「こんなにゆかいな日本の神話(古事記のものがたり)」

チラシにリンク


 

概況

平成24年12月1日に、河合町まほろばホールにて、第5回目の「記紀・万葉リレートーク」を開催しました。
13時30分から開演し、奈良県観光局ならの魅力創造課長の挨拶のあと、作家の小林晴明氏、宮崎みどり氏による、「こんなにゆかいな日本の神話(古事記のものがたり)」と題した講演会を実施しました。
夫婦漫才のような二人のやりとりに、時に会場内は笑いにつつまれました。古事記について、わかりやすく、面白くお話しいただき、古事記の初心者にも、これから古事記に親しみ、興味を持ってもらえるきっかけとなるような講演となりました。


 奈良県ならの魅力創造課長の挨拶/会場の様子

 

講演の概要

「日本最古の古典・『古事記』は、今から約1300年前、天武天皇の勅命により、稗田阿礼が暗誦していた神語り を太安万侶が三巻の巻物に編纂したものです。原文は漢字仮名まじりで書かれているため非常に難解で、長い間 人々から敬遠され忘れ去られていました。

しかし、上巻(神代の巻)をじっくり読んでみると、その中にはおとぎ話の原型となった面白い話がいっぱいなのです。最近、小学校の教科書に載るようになった「いなばの白兎」を始めとして、八つの尾と八つの頭を持つヤマタノオロチという恐ろしい怪物から美しい娘を助け出す「ヤマタノオロチ退治」、浦島太郎の原型となった「海幸・山幸」、イザナギとイザナミの二神が協力し、泥海をかき回して日本の国を生むという「国生み」、その他にもアマテラス大御神が岩戸に隠れ世の中が真っ暗になった時、八百万の神々が知恵を出し合って岩戸の前で踊り歌って大宴会をし、アマテラスを岩戸から引っ張りだして再び世の中を明るくしたという「天の岩戸開き」、笑う門には福来の原型などなど・・・。

 小林晴明氏/宮崎みどり氏


『古事記』は人と仲良くする方法、幸せに暮らす方法、心身ともに健康になる方法など、先人達が連綿と受け継いできた多くの知恵を物語の中に織り込んで今の私達に伝えてくれている書物なのです。

大国主が白兎の怪我を治す為に、「水門みなと」に行って体を洗いなさいと教える場面や、死んだ妻を迎えに黄泉の国に行ったイザナギが、死者の国の穢れを払うために体を洗って禊をした時、大切な三人の尊い神さま「アマテラス・ツクヨミ・スサノオ」が誕生する場面では、いずれも海と川の出会う場所が重要なキーワードになっています。

この「水門・小戸」とは川と海の出会う河口のこと、つまり汽水域のことなのです。真水と海水が入り混じってちょうどいい塩分濃度(0.9%)になったこの汽水域こそが地球の長い歴史の中で、生命誕生の謎(エラ呼吸→肺呼吸)を秘めた場所であり、魚や貝類が豊富に採れ、美味しい塩も作れる場所と言われています。そして、この0.9%という塩分濃度は胎児を育む母体の羊水の塩分濃度と同じというのもとても神秘的なことです。

いまでこそ、汽水域の大切さとその浄化力は一般の人々にも広く知られるようになりましたが、私達の祖先が古事記の中にそのことを物語りに織り込んで書き残してくれていたのです。「神話を忘れた民族は滅びる!」と言われています。今こそ、古事記を子ども達に伝え、自分たちのふるさとに誇りを持って育って行ってほしいと強く願ってやみません」。


【講師プロフィール】
右:小林 晴明(こばやし・せいめい)/作家
兵庫県丹波篠山生まれ。大阪文学学校にて小説、詩を学ぶ。 環境雑誌「グローバルマインド」の編集部を経て独立。1999年、サン・グリーン出版を設立し宮崎みどりとの共著「古事記ものがたり」を出版。
左:宮崎 みどり(みやざき・みどり)/作家
岡山県和気郡生まれ。関西外国語短期大学卒業。大阪文学学校にて小説、詩を学ぶ。「いい話の新聞社」編集部を経てフリーランスのライターとなる。