記紀・万葉講座

古事記特別講座 春日の杜で、『古事記』を声に出して読む

日本書紀を語る講演会 第11回 古事記特別講座

2016年3月20日(日)13時00分~15時00分
会場・春日大社 感謝・共生の館
講師・古事記朗誦家 大小田 さくら子(おおこださくらこ)氏
演題・春日の杜で、『古事記』を声に出して読む

パンフレットにリンク


 

講演の内容

「やまとかたり」と名付けたこの『古事記』の朗誦を始めて、今年で10年になる。日本は昔から言霊の幸ふ国と言い、言の葉というものを大切にしてきた。古代の人たちがその時に感じている言葉の力というものをしっかりと受け取るには、やはり一緒に声を出すことが大事である。


『古事記』は天武天皇が681年に編纂を命じ、元明天皇までの4代をかけ、稗田阿礼が歴史を誦習して、太安万侶が4カ月で筆録し、元明天皇に奏上するという形で712年に完成した。私の朗誦での発音は1200年前のものとは違うが、私にしかない声というものは、いにしえよりつながる命の響きであって、それを体から思い切り出すことによって、その響きが古代と通じることができると思っている。


声を出し、横隔膜を動かして自律神経にアプローチすることで、気持ちの良い生活を送ることができるようになる。「あ・お・う・え・い発声法」を紹介する。自分の前に大きな玉を抱えて、その玉を声が回っていくような気持ちで声を出す。「あ」の音をまず全部出して、尾骨のあたりに響かせることで大地のエネルギーが下から流れてくる。「お」の音でそのエネルギーを自分の体に蓄える。おへその下、丹田を意識する。次の「う」の音で、胃の辺りに響くように柔らかく振動させると、体の力が抜けて、何でも受け入れられるような気持ちになる。「え」は胸のあたり、水が胸をすっと広がって包み込んでいくように「え」を出す。「い」は喉。光が真っすぐ、遠い星まで届くような感じで発声する。最後に「ん」と頭に響かせて、第3の目の感覚を開いていく。是非海などで、そこの空気を自 分の体に取り込んで、命を頂いていくという感覚を感じてみてほしい。


「あめつちのはじめのとき」と宣言した瞬間、今この瞬間がはじめのときなのだという感覚が立ち上がる。続いてたくさんの神様の名前を読み上げて行くと、神様の力、自然の働きや宇宙の摂理など、古代の人たちが言葉に移し替えてきた目に見えない働きを感じることができる。人の気配を感じながら声を合わせるということは、人々が共感、共鳴できるという働きがあるはず。古代の人たちが自然の中から知恵を頂いて言葉に移し替えたものを声に出して読むことで、日本を愛する気持ち、自然に対する畏敬の念というような気持ちが、自然と体の中に入ってくる。『古事記』や神話というのは、自分たちの言霊を理解することで、それぞれの中に解釈していくもの。本を読んだらこうだった、ではなく、原文を声に出して読み、古代の人々が未来に何を託したのか、ということを、 体を通して感じさせてくれるものだと思う。


 

 


【講師プロフィール】
大小田 さくら子(おおこだ・さくらこ)/古事記朗誦家
北海道、十勝生まれ。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科で舞踊教育学を専攻。
「古事記」をよみ唱え、波音や風の中で声を出しながら自然の抑揚、リズムが生まれた独自の語りの世界「やまとかたり」を追求し、国内外における縁ある聖地、社寺にて奉納朗誦を行う。様々な講師を歴任し、現在、早稲田大学国際言語文化研究所招聘研究員。
「古事記」や「日本書紀」などの原文での朗読、古来よりのやまと言葉、和暦、日本神話を伝える会、やまとかたりと笛や琴などの楽器、舞と合わせたコンサートや、言葉と音の響き、体で捉える発声法による心と体のための講座などを開催。
著書に、「やまとかたり あめつちのはじめ」や「やまとかたり いづものくに」などのCD本がある。