キーワードで識る記紀・万葉

剣(つるぎ)

1.大蛇の尾にひそんでいた神剣

速須佐之男命(はやすさのおのみこと)は、酒を飲んで眠り込んだ八俣(やまた)のおろちを自らので切り刻みます。ところが、尾を切ったときにの刃が欠けてしまいました。不思議に思って尾を切り裂いてみると、出てきたのが都つむ羽の大刀。速須佐之男命(はやすさのおのみこと)は、この大刀を天照大御神(あまてらすおおみかみ)に献上しました。

『古事記』上つ巻 「八俣の大蛇退治」より

2.怒りでふるう神度剣

阿遅志貴高日子根神(あぢしきたかひこねのかみ)と天若日子(あめわかひこ)は親友でした。天若日子(あめわかひこ)が亡くなり、阿遅志貴高日子根神(あぢしきたかひこねのかみ)は弔いに訪れましたが、天若日子(あめわかひこ)と瓜二つだったため、妻や父は天若日子(あめわかひこ)がよみがえったと思って抱きつきます。死者と間違われたことに怒った阿遅志貴高日子根神(あぢしきたかひこねのかみ)は、を抜いて大暴れ。この剣は、大量(おおはかり)、またの名を神度剣(かむどのつるぎ)と呼ばれました。

『古事記』上つ巻 「天若日子の派遣」より

3.国ゆずりを成した武神の大刀

高天原の神々に命じられ、出雲に降り立った建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)らは、大国主神(おおくにぬしのかみ)に国をゆずるように迫ります。建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)は波間に刃を上にして立てたの剣先に、あぐらを組んで座ってみせました。それを見て、大国主神(おおくにぬしのかみ)らは、国をゆずると約束しました。

『古事記』上つ巻 「建御雷神の派遣」より

4.天皇軍をよみがえらせた大刀・布都御魂

神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと・神武天皇)は日向からヤマトに進軍してきました。紀州熊野に差しかかった時、大きな熊がちらりと姿を現して消え、神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと)も軍も気を失って倒れてしまいました。そこで、熊野の高倉下(たかくらじ)という者が大刀を捧げると、皆たちまち回復しました。この大刀は建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)が国ゆずりに使った大刀で、またの名を布都御魂(ふつのみたま)とも記されています。今も天理市の石上(いそのかみ)神宮には剣の霊威である布都御魂大神が祀られています。

『古事記』中つ巻 「東征」より

5.倭建命の命を救った神剣「草薙剣」

倭建命(やまとたけるのみこと)は東方への遠征中にワナにかかり、野原にいるところを火で囲まれてしまいました。しかし、叔母の倭比売命(やまとひめのみこと)からさずけられた刀、草なぎの剣で草をなぎはらい、無事に脱出することができました。草なぎの剣は、後に三種の神器のひとつとされました。

『古事記』中つ巻 「倭建命の東征」より