1.黄泉で再会した妻の正体を暴いた櫛
黄泉の国の住人となった伊耶那美命(いざなみのみこと)に会いに行った伊耶那岐命(いざなきのみこと)。しかし、湯津々間櫛(ゆつつまくし)の太い歯を折って火を灯してみると、伊耶那美命(いざなみのみこと)にはウジ虫がたかり、雷神をまとった変わり果てた姿になっていました。伊耶那岐命(いざなきのみこと)は驚いて逃げ出します。
『古事記』上つ巻 「黄泉の国」より
2.ピンチを救った櫛の力
醜い姿を見られ、恥をかかされたと怒った伊耶那美命(いざなみのみこと)は、黄泉醜女(よもつしこめ・黄泉の国の醜い女)をつかわして伊耶那岐命(いざなきのみこと)を追わせます。必死で逃げる伊耶那岐命(いざなきのみこと)は、湯津々間櫛(ゆつつまくし)の折った歯を投げるとタケノコになり、黄泉醜女(よもつしこめ)がそれを食べている間に黄泉の国から脱出することができました。
『古事記』上つ巻 「黄泉の国」より
3.櫛となった美しき乙女
乱暴なふるまいの末に、高天原を追われた速須佐之男命(はやすさのおのみこと)。降り立った出雲の山で櫛名田比売(くしなだひめ)とその両親に出会い、比売が八俣(やまた)のおろちの人身御供であると知ります。そこで速須佐之男命(はやすさのおのみこと)は娘を湯津爪櫛(ゆつつまくし)に変え、髪にさして大蛇を退治します。
『古事記』上つ巻 「八俣の大蛇退治」より
4.海に消えた愛妻の形見の櫛
東方へ遠征に出た倭建命(やまとたけるのみこと)が海を渡ろうとしたとき、海の神が荒波を起こして邪魔をします。そこで、妻の弟橘比売命(おとたちばなひめのみこと)が神を鎮めるために自ら海に身を投げました。するとたちまち波は静まり、船を進めることができました。それから七日後、弟橘比売命(おとたちばなひめのみこと)の櫛が海岸に流れ着き、御陵を作って形見として納めたといいます。
『古事記』中つ巻 「倭建命の東征」より