「古事記」にはたくさんの神様や古代の天皇とその周辺の人々が登場します。神様なのに失敗したり、悩んだり、天皇一族なのに思い通りに行かなかったり…そこが「古事記」の魅力のひとつだという人もいるぐらいです。そこで、カウンセリング仕立てで、「古事記」のエピソードを紹介してみましょう。もしかしたら現代を生きる私達に役立つヒントも見つかるかもしれません。
高天原(たかあまのはら)をおさめる天照大御神のもとへ弟の須佐之男命がやってきたとき、須佐之男命は田の畔を荒らしたり、大嘗をなさる御殿に糞をまき散らしたり、散々なふるまいをします。 ついに服を織っている部屋の天井から、皮をはいだ馬を落とし入れ、驚いた服織女(はとりめ)が死んでしまうという事件が起こります。それを見た天照大御神は弟の力を恐れ、天の石屋(あめ いわや)にこもってしまいました。高天原も葦原中国(あしはらのなかつくに)もすっかり暗くなり、あらゆる災いがすべて起こりました。こまった神々は相談をし、思金神に、天照大御神が天の石屋から出てくる方法を考えさせるのでした。
小碓命(おうすのみこと)(のちの倭建命)は、父の景行天皇から、朝夕の食事を一緒 に取らない兄・大碓命(おおうすのみこと)を教えさとすように言われました。とこ ろが、小碓命は兄を討ったばかりかその亡骸をこもに包んで投げ 捨ててしまったのです。それを聞いた天皇は我が子の猛々しく 荒々しい心を恐れ、西の熊曾建(くまそたける)、出雲建(いずもたける)を征伐し、さらには 東の十二の国の服従しない者どもの平定を次々に命じるのでし た。倭建命は「天皇である父は、私なんか全く死んでしまえとお思 いになっていらっしゃるのです」と嘆き悲しみます。そんな倭建 命に、叔母である倭比売命は草なぎの剣と嚢(ふくろ)を授け、励ますので した。