『古事記』『日本書紀』では神武東征の通過地として、また多くの天皇らが訪れた場所として登場する吉野。よく知られているのは、兄の天智天皇の臨終を前に出家し、吉野宮に移った大海人皇子だろう。大海人皇子は後に吉野から挙兵し、壬申の乱に勝利し、天武天皇となる。天武天皇の皇后であった持統天皇も生涯30回以上吉野宮へ行幸した。
ほかに、応神天皇、雄略天皇、斉明天皇、文武天皇、元正天皇、聖武天皇も吉野へ行幸している。なお、ここでいう吉野は、いわゆる吉野山ではなく、宮滝付近を指すと考えられている。
また、『万葉集』には吉野(芳野も含む)を詠んだ歌が60首余りもある。
しかも、柿本人麻呂、山部赤人、大伴家持といった『万葉集』を代表する歌人がそろって吉野を題材にしている。