ならの彩りさん!

橿原市【大和三山(香久山)】

万葉の時代の大和三山を蘇らせる

橿原市【大和三山(香久山)】

橿原市役所 まちづくり部 緑地景観課
森本 泰昭さん
橿原市役所 魅力創造部 観光政策課
平林 書仁さん

事業の目的とこれまでの経緯を教えてください。

一番の目的は大和三山の眺望の確保です。きっかけとなったのは、平成19年の夏にあった豪雨の被害により香久山の登山道が崩れたことでした。橿原市と奈良森林管理事務所、県の文化財保存課、そして地元の方々と協力し合い、復旧・整備にあたることになりました。何度も話し合いを持つなかで、登山道の整備だけでなく、樹木が繁茂し過ぎていることから、この機会に眺望を妨げている木を剪定・伐採して、山頂からの眺めを良くして欲しいという地元からの要望もあり、眺望確保も含めた景観整備を行うことになったのです。
大和三山(香久山・畝傍山・耳成山)は歴史的風土特別保存地区に指定されており、平成17年には国の「名勝」にも指定された歴史的・文化的価値の高い地です。そのため、森林法をはじめ、古都保存法や都市計画法上の風致地区であるなど数々の規制がかかっています。それらの法的問題や森林保護の趣旨を踏まえながら、整合性のとれた事業として推進していくことが非常に困難な課題でした。

  • 香久山山頂からの藤原宮跡・畝傍山・二上山の眺望

  • 森本さん(左)平林さん(右)

  • 大和三山の夕景

  • 樹木で視界が悪い剪定・伐採前の山頂

  • 整備された香久山登山道入り口

事業を進める上でポイントとなった点はなんですか?

橿原市が世界遺産の暫定登録リストにも入っており、大和三山はその構成資産にも含まれています。そうした面でもさまざまな配慮が求められ、入念な事前調整が必要でした。整備を進めるにあたり、森として自然のままに育てていくべきという意見や、「名勝」指定という側面では藤原宮跡から見たそれぞれの山のかたちが剪定・伐採によって変わってしまってはならない、という声も大きかったのです。それらの意見を汲み入れながら、話し合いを繰り返し、実際に事業がスタートしたのは平成24年でした。

最初に着手したのが香久山と畝傍山で、その後は三つの山をローテーションで順に剪定・伐採していくという計画が立てられました。眺望確保については、山頂から他の二つの山が見えること、そして藤原宮跡が見えるようすることが重要なポイントです。
ほかには、いま問題になっているナラ枯れ対策です。以前も大和三山がマツクイムシの被害にあったことがあり、その時にナラやカシの木が植栽されて現在の状態になったのですが、維持管理が難しく、最近またナラ枯れが広がっています。剪定・伐採や植栽と並行して、取り組んでいかなければならないと思っています。

耳成山の登山道にクチナシを植栽

観光スポットとしての魅力も高まったようですね。

山頂に設置された案内板

観光客の方が増え、眺望が良くなったという声をたくさんいただいております。なかでも香久山は万葉集に数多く詠まれており、舒明天皇の国見の歌でも有名です。「国見をすれば 国原は 煙立つ立つ 海原は 鷗立つ立つ」と詠まれた眺望が復活したことは、非常に感慨深く、観光スポットとしても大きな魅力アップにつながったと感じています。
いま植栽計画として、万葉の歌に登場する植物を登山道に植えようという計画も進めています。香久山ではウワミズザクラ、耳成山ではクチナシというように、大和三山にふさわしい植物を増やし、より魅力ある場所にしたいですね。

今後の取り組みについてお聞かせください。

眺望を維持するためには定期的な剪定や伐採は不可欠です。しかし、日当たりが良くなると樹木は繁茂するのも早いため、継続的な管理が重要です。登山道についても、登山される方が歩きやすいよう道を整備し、新たな案内板の設置なども行う予定です。
また、奈良県では香久山の麓にある森林公園「万葉の森」の整備も進めており、県と連携を取りながら、一体的な活用を目指していきたいと考えています。山頂からの眺望はもちろん、下から見ても美しい姿を楽しんでいただけるよう取り組むとともに、かつての万葉の時代の山容を彷彿させる大和三山を蘇らせていきたいです。

登山道入り口に整備された「香久山観光トイレ」

※インタビュー記事の内容は取材時のものです。
[取材日]平成29年9月11日

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  • 大和三山

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  • クチナシも植栽され歩きやすくなった耳成山登山道

  • 香久山登山道のウワミズザクラの植栽

  • 3DCGによる藤原京復元図と耳成山