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2018.08.29

知ると面白い!奈良の木が住まいになるまで。「山」と「市場」編

日本屈指の高い品質を誇る奈良の木。吉野スギ・吉野ヒノキに代表される奈良の木材は、私たちに癒しや温もりだけでなく、香りを感じたり触れたりすることで、心身ともに健康で快適な暮らしを与えてくれます。ところで、奈良の木が、どのようにして皆さんの住まいになるのかご存じでしょうか。山からはじまり、市場、製材所、流通、工務店という流れがあり、何より関わる人々が誇りを持って仕事をする姿に、歴史とともに築かれてきた奈良の木の価値に気づきます。まずは、山と市場についてお伝えしましょう。

惚れ惚れするほど美しい吉野の木材は「山」を守る職人がいるからこそ

500年を超える歴史がある吉野林業。吉野スギや吉野ヒノキといったブランド材を育ててきたことで名高く、日本の林業の模範ともいわれてきました。吉野の5大林業家として知られ、今も吉野の広大な地に人工林を保有している「北村林業株式会社」の山林部長 森田 剛さんに「山」のお話を聞きました。

「吉野の山々は、年間雨量が多く温暖な気候をもち、保水と透湿性のどちらにも優れた森林土壌です。木々の育成に必要な栄養が多く含まれるなど恵まれた自然環境を背景に、吉野林業には長い歴史があります。そのひとつが[密植]と呼ばれる独自の植林方法。地域により異なりますが、吉野林業では約1㏊(1万㎡)あたりに、8,000本から1万本もの木を植えます。普通は3,000本ほどですから、かなり密集させて植えるんですね。そうすることで木の成長を遅らせ、年輪の間隔を狭くし、強く美しい木を育てます。苗を植えた後には、下刈り(草刈り)をして、育ってきたらこまめに枝打ちをするという手間も欠かせません。枝を落とし過ぎても枯れてしまうので、木の高さや太さといった木の状態を見抜くことが大切なんです。手をかけて綺麗に枝打ちをすることで、節の無い美しい木材になります。節の無い木材は、[四方無地]といい製品価値がとても高いし、誰もが目指すところ。密集させて育てる木の中で、どの木が素晴らしいかなんて育ててみないとわかりません。ですから、すべて同じように手をかけて間伐を繰り返します。正直、効率は良くはありません。ただ、見た目が美しく強度や耐久性が高い、他にはない高品質の木材をつくり続けることが、吉野林業の伝統を守る私たちの誇りです。」

  • 間伐され、管理が行き届いた吉野の森林は明るく、下草まで光が届く。

「また、もう一つ歴史を物語るのは[山守制度]です。これは、山を所有する[山主]と山を管理する[山守]を分ける独自の制度。木が育つまでお金が入らない一般的な林業とは違い、この制度では、山主から毎年世話代をもらうことができ、木の購入権も優先的に認められるので、山守は懸命に木を育てます。そこで、山主と山守の信頼関係が生まれていくんですね。」

※密植…間隔を開けずに植物を密に植えること。
※山主…山林を所有する者。
※山守…山林所有者(山主)が山林所在の地域住民の中から信用のある者を選んで山の保護管理を委託した人のこと。この管理制度を山守制度という。

  • 1cmに8年輪も詰まっている吉野スギ。赤身の芯と周辺部分の白太が特徴的で切り口が美しい。

「最近は、値段の安い輸入木材も増えており、吉野林業は厳しい時代を迎えています。しかし、海外では、天然林が枯渇しつつあるといいます。一方、日本の林業は数百年にわたり植え直してきた林業。循環型の林業は、二酸化炭素の問題だけでなく、治山治水の面からも有効なはず。奈良の木の良さ、吉野材の良さを多くの人に知ってもらい流通させることで、良い循環を取り戻していきたいです。今伐っている木は、100年も200年も前から先人が植え、丁寧に育ててきた木。そのおかげで今、1本の木が姿をかえて、私たちの住まいとなっています。山に感謝し、木に感謝する。やっぱり吉野の木が一番ですね。」

山の仕事が称賛される「市場」で働く人々の思い

山で伐採された奈良の木は「市場」へ。奈良県下では、いくつか木材市場があり、規模の大小はありますが、毎月それぞれに原木市を開催。細い木を売るのが上手な市場や大木がよく出る市場など、市場ごとに特徴があり、扱う木はさまざま。銘木専門といわれる「奈良県銘木協同組合」は、住居だけでなく神社やお寺、文化財に使われるような高品質の木がたくさん出ることで有名。全国から製材所や材木屋の買い付け人が集まる「奈良県銘木協同組合」の原木部長 吉野俊哉さんに「市場」のお話を聞きました。

「原木市の準備は前日から始まります。クレーンを使い原木をずらりと並べ、あらかじめ値段を見積って帳面に記しておくんです。当日は、木の上に乗って市を仕切る「振り子」が鐘を鳴らすと、人々が集まりはじめ、賑やかに原木市がスタートします。競りがはじまると、「買い方」と呼ばれる買い付け人が、木をいくらで買いたいのか指を使って「振り子」に伝えます。駆け引きの末に、カラン!と鐘の音がしたら原木が競り落とされた瞬間。振り子の独特のリズムによる言い回しが延々と続く中、競りがトントン拍子に進む様子はなかなか圧巻ですよ。買い付け人からは[奈良の山は、密に木が植えられていても枝打ちがきちんとされ、木の根元に太陽の光が当たっているのがわかる][山をひと目見ただけでその仕事の丁寧さがわかるので頭が下がる]といった声をいただくことも多いです。」

  • 市を仕切る「振り子」を担当する吉野さん。鐘を片手に「早いもん勝ち、買うたってー!」

「吉野ヒノキは、淡いピンク色が美しいだけでなく、強くて耐久性があります。また吉野スギは、赤みを帯びた色ツヤが申し分なく、年輪が均等かつ密で芯が詰まっているのが特長。私たちの市場では、年間通して原木市を行いますが、原木が多く出回る秋から冬にかけては月2回開催します。ほかにも原木市で製材所に売られた木が、製材加工され、またここに戻って売りに出される製品市も開催しています。磨き丸太や天板、建具、突き板に使われるフリッチという半製品など、製品の種類はさまざま。変わり種の自然木は、店舗などのアクセントにも需要があるんですよ。」

  • 製品市で並ぶ、美しく光る磨き丸太
  • テーブルやカウンターに最適な無垢の一枚板

「ちなみに、夏に木を伐ると虫の被害を受けやすいので、夏場は原木が少ないんです。食材に旬があるように、原木にも季節感があるのは、木が生きているからこそです。木の価格は、常に変動し安定しない時価のようなもの。輸入木材の影響を受けたり、家を建てることが減ってきたという需要の問題もありますが、私たちは林業家の方々が安心して木を提供できる流れをつくりたい。何より市場で木を売ることで、山に還していく気持ちを大切にしています。」

「山」で木をつくり「市場」で木を売る―。社会情勢の変化などの課題はあるものの、「山」や「市場」に携わる人々の思いは、きっと次の世代へも受け継がれていくでしょう。奈良の木の価値に気づき、もっと多くの住まいや建物に使われるようになれば、先人たちが築いてきた山と伝統を守ることに繋がります。

山からはじまり、市場、製材所、流通、工務店へと続く奈良の木のストーリー。この5つの業種にそれぞれのプロがいるからこそ、奈良の木は皆さんの住まいに届き、未来に挑むことができるのです。

文:土井淑子
写真・参照:「奈良の木」BOOKより
(「奈良の木」マーケティング協議会(2015年))

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