インタビュー記事

2018.11.16

伝統文化の新たな発信地「mikuri & MIHA shop」が思うこと。吉野スギの箸やトレイに込められた想い。

日本に伝わる暮らしの道具や日本の贈り物をテーマに、オリジナルプロダクトや日本各地の伝統工芸品を扱う生活雑貨店「hitofushi」。その2号店として、「食卓から伝えることができる日本の伝統」がコンセプトのダイニング&カフェ「mikuri」、hitofushiとアートショップ MEZIのアイテムを扱う「MIHA shop」を併設し、2018年4月にオープンしたのが、今回訪れた「mikuri & MIHA shop」です。

hitofushiによるオリジナルプロダクトの中心となっているのは、デザイナーでもある店主の水本理恵子さんが手がける吉野スギの箸やトレイ。暮らしの道具を通して、日本の伝統産業の魅力を発信している水本さんに、奈良の木への想いをお聞きしました。

インタビュー:水本理恵子氏(デザイナー/mikuriプロデューサー/hitofushi代表)

──デザイナーの水本さんが、箸やトレイなど、奈良の木の製品をつくられるようになったきっかけは? 

私は、奈良県吉野の下市町出身で、父方が吉野スギ箸の問屋、母方は箸をつくる職人の家なんです。子どものころは、おじいちゃんのお箸の工場が遊び場でした。吉野で自然に囲まれて、実際の木と触れ合って育ったことは、デザインの仕事における私の核になっていると思います。

吉野は木があるだけでなく、歴史があることも私の中では大きくて。多分ずっと吉野に住んでいたら興味がなかったのかもしれませんが、いったん地元を離れてみると、ものすごく特別なところで育ったんだと感じました。

後醍醐天皇に献上したのが吉野スギ箸の発祥と伝わることもそうですし、もっと昔の時代から伝わるようなものや習わしが身近にあるのは歴史ある土地ならではのことですね。そういったことに奈良を出てから興味を持ち、古事記を読んだりするようになったことが、仕事やデザインの面でも活かされてきたような気がします。

──そういった環境で育ったことが「hitofushi」や「mikuri & MIHA shop」の設立に繋がっているのでしょうか? 

そうですね。吉野で、お箸に関わる家業で育ててもらっているので、吉野スギ箸の使われる機会が減っている中で、自分も何らかの形でお箸に恩返しする仕事をしたいと思ったのが「hitofushi」を始めたきっかけです。

でも、いざ始めようと周りをみると、継承問題を抱えているのはお箸だけではなくて、奈良の中だけでみても、葛や和紙など、伝統産業は皆似た状況下にありました。だったら、残していきたいなとか、最後に伝えておきたいな、と思うものを、地元である吉野や奈良といった小さな枠だけでなく、自分が出会えるだけ出会って、私と言うフィルタを通してご紹介していけたらなと。

生活の道具を販売していますが、hitofushiでは別に「物売り」をしたいわけではないんです。昔から続く伝統産業は、いろいろな歴史を持っているのでそのバックボーンを伝えたり、「製品」だけでなく、芸能や製法、何てことない家庭で続けているような習慣など、おもしろい日本ならではの文化を発信したり、そんな拠点であれたらいいなと思っています。そういった想いから、お節句やお花見といった日本独特の文化にフィーチャーしたイベントなんかも企画してきました。

──「hitofushi」でいろいろな伝統産業を扱う中、「mikuri & MIHA shop」で“食卓”に焦点を当てているのはなぜでしょうか?

日本各地の伝統文化に関わる中で、食卓から伝わる文化の大きさを感じて、台所や食卓といったところから伝えられる部分に、もう少し広がりを持てるようなスペースが欲しいという想いがありました。また、お箸をはじめとする食卓の道具を実際に使っていただいたり、台所で使っている様子を見ていただいたりもしたかったんです。

カフェで使っているのは、お箸はもちろん、「季節の小箱」でお菓子を詰める器も箱が吉野ヒノキで蓋は吉野スギ。それから、「二十四節気の御膳」などでおかずを盛り付けるトレイも吉野スギです。

このトレイは、もともと「吉野杉のフシノアルトレイ」としてショップで扱っているもの。吉野スギは“節がない”真っ直ぐな木目の美しさが一つの売りなので、製材所さんでは、節のある部分は捨てられることもあるんですよ。でも私は、“吉野スギの節”という魅力があるかなと思って。一つひとつの節の違いとか、穴が開いていたり、欠けていたり……じつはこれ真四角でもないんです。もちろん食器として普段使いできるように加工は施していますが、形としては、本当に刻まれたままで。普通に切られたような板に何かが盛られて出てくる、作り込まれてないのが面白いじゃないですか(笑)

──「二十四節気の御膳」では、自然から切り出したような吉野スギの上だからこそ、料理の季節感がとても映えるように感じます

キャンバス感がありますよね。季節感が味わえる料理というと、やっぱり本格的な日本料理とか、ちょっとハードルが高いでしょう。日本ならではの季節の素朴な景色を、気軽なお惣菜で感じてもらえるようにと思って始めたのが、「二十四節気の御膳」です。

内容は、私が二十四節気に合わせて原案を考えて、料理長と一緒に味付けや食感のバランスなども細かく相談してつくっています。私の無理難題を料理長が美味しくかたちにしてくれて(笑)。 例えば、10月8~22日頃にあたる「寒露」は、北の国から渡り鳥の雁が渡ってくる頃なので、雁の肉に似せてつくった精進料理が由来の雁もどきを自家製で。もちろん秋刀魚の生姜煮など、旬の食材も取り入れています。

──実際にカフェで奈良の木の食器を使った方の反応はいかがですか?

お箸やトレイは、「mikuri & MIHA shop」のオープン前から人気がある商品ですが、カフェで食事をした方が、同じようにお家で使ってみたいと買って帰られることが多くなりました。「hitofushi」に以前から来てくださっている方で、ここでお箸を使ったのをきっかけに、「hitofushiに置いてました? すごく使いやすくて」と、何年か越しで買ってくださったこともありました。実際に使っていただいたことがきっかけで優しい使い心地を感じてくださるのはうれしいことですね。

それから、家でもちゃんと使えるのか、メンテナンスできるのか不安に思われる方も、お店で実際に使っているのを見て、店で使えるなら家でもできるかな、と思ってもらえるみたいです。お渡しする際には、使う上でのアドバイスやメンテナンスなど、木の性質なども理解していただけるようにお話しして、少し専門的なところまでしっかりフォローできるように心掛けています。

使う人に木の性質を理解していただかないと、せっかく手に取っていただいても、きちんとメンテナンスできず、早く劣化させてしまうことになります。それは、木の現場にとってもマイナスなこと。しっかり需要を生み出せるよう、きちんと使う人に木の扱い方を伝えていくのも、売り手としてのとても大切な役割だと考えています。

「hitofushi」というブランド名には、作り手の現場と使う人を繋ぐ一つの節目という想いも込めているんです。奈良の木の道具も、きちんとフォローしながら、暮らしの中で改めてその魅力を感じてもらえるよう、発信していきたいですね。

Profile

水本理恵子氏(デザイナー/mikuriプロデューサー/hitofushi代表)

奈良県出身。吉野杉箸の製造と問屋の両家のもとに生まれ育つ。グラフィックデザイナーを経て日本の伝統産業や工芸のセレクトショップhitofushiを立ち上げ、商品を企画・販売すると共に、イベントやワークショップを通して暮らしの中にある日本ならではの伝統や習慣の面白さを伝える。Dining&Cafe mikuriのプロデューサーとして季節や文化を食卓から伝えることにも注力する。

Shop Information

mikuri & MIHA shop

住所 〒550-0001
大阪府大阪市西区土佐堀3丁目1−5
Instagram https://www.instagram.com/mikuri_osaka/?hl=ja

取材・文 : 岩永茜
写真:鈴木誠一

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