インタビュー / レポート記事

2018.01.10

吉野スギを使う奈良県内の木造住宅メーカー「イムラ」が3年連続でグッドデザイン賞を受賞。今年はキッズデザイン賞とW受賞も。井村社長に木材の地産地消について訊く。

初代は木材業を1927年に創業。2代目で製材業も行い、現在、木造住宅メーカーとして吉野スギで建てる健康住宅で知られるようになった『株式会社イムラ』。同社は奈良県だけでなく大阪をはじめ関西一円で約800戸の施工実績を持っている。奈良県吉野郡川上村の『川上さぷり』と提携して吉野スギを使うようになったのが約18年前のこと。これをきっかけに、地元の吉野材の良さを再確認した家づくりを行い、3年前からグッドデザイン賞(日本デザイン振興会主催)を受賞するようになったと、井村社長は話します。

インタビュー:井村義嗣氏(株式会社イムラ 代表取締役社長)

―― 吉野スギは何をきっかけに使うことになったのでしょうか?

2000年に吉野林業の中心地、奈良県吉野郡川上村の川上産吉野材販売促進協同組合「川上さぷり」と出会ったことですね。そもそも「川上さぷり」の代表理事上嶌さんのことは、木材と製材業をしていた当社2代目の下で働いていた頃から知っていて顔見知りでした。「吉野材を住宅建材に使用しないか」という話を聞いて、これだ!と思ったんです。

当時は、シックハウス症候群が出始めたこともあり、天然木材を多用する健康を考えた住宅も人気になってきていましたから、吉野材を使うのはいいなと。また当社の住宅は、大手住宅メーカーの攻勢には勝てず、何か特徴が欲しいと思っていた時だったので、吉野スギを使った木の家を建てようと決意し、それから2年後には「吉野杉の家」だけで勝負し販売するようになりました。

最初は紆余曲折がありました。吉野スギを使っても現代に合う住宅であることや、リーズナブルな値段でお客様にご提供しないと、私たちがする意味がないですし。原木のことは知っていても、例えば建材用の木材パーツとなると「川上さぷり」よりも私たちの方が知っていますから、イムラが欲しい製材品をつくってもらうために、大工とともに現地へ行き丸太や柱などについてとことん話し合いました。その一つが、2017年にキッズデザイン賞(NPO法人キッズデザイン協議会主催)を受賞した「吉野杉の床」です。

―― 2017年のキッズデザイン賞受賞「吉野杉の床」とグッドデザイン賞受賞「代官屋敷の古民家再生」について教えてください。

樹齢約100年の吉野スギを使用しているのが「吉野杉の床」です。節が少なく美しい木目で自然塗料仕上げ、厚み15mm幅18cmの無垢材を「川上さぷり」と専属販売契約をしています。何より香りが良いんですよ。よく眠れる、ストレスが軽減されるということに、カビが生えにくいとか、大腸菌が発生しにくいということもプラスされています。お客様からの声でいえば「冬は温かく夏はベトつかない」ということをお聞きしており、私の家もこの床材ですが、家に帰れば冬になっても年中素足で気持ちいいですし、孫にも安心です。

「代官屋敷の古民家再生」は、公称築200年としていますが、それは文献で遡ればの話で、実情はおそらく築300年の古民家。増改築を繰り返していたので歪みもありました。基礎部分だけを残して解体して再生までに約1年かけて行いましたが、単に綺麗にするだけではなく、耐震のこと、高齢の方が住むことも考えバリアフリー化のことも考えましたね。古民家は寒いので断熱材を入れて窓も全部サッシに変更するなど、今の時代に合わせた住空間にするには手間のかかる作業でした。しかし「川上さぷり」から樹齢200年の吉野スギを入れてもらったことで、快適な住空間と歴史的な景観を両立することができたのだと思います。

何より、私たちが「川上さぷり」と行った吉野スギを使い健康住宅を建てたことが認められた、2015年の「林業再生事業システム[500年の吉野林業を住まいづくりで守る!川上村との取り組み]」。そして、樹齢150年の吉野スギの赤柾(あかまさ)を使う洋風建具が、次世代につなげるモノづくりの基本姿勢だと評価された、2016年の「木製内部建具[GENPEI]」に続き、3年連続でグッドデザイン賞を受賞できたのは、私たちにとって本当に嬉しいことでした。

―― これからの「株式会社イムラ」は?

私たちの住宅は、1棟に約40㎥吉野スギを使います。これは一般住宅の国産材の5倍以上といわれていて、いわば全部家ごと吉野スギ。良い材料には良い職人が必要です。吉野スギを知り吉野スギをちゃんと使える大工・職人の育成をしていきたいと思っています。

専属の大工を17組33名抱えていますが高齢化が進んでいるので、家づくりの会社としては、吉野材を扱える職人がいなくなる前に、ちゃんと育てておきたいと思っています。実は、今もしていることです。でもなかなか難しい。現在は社員大工が3名いますが、できれば10年かけて10人くらい育てたいなと思っています。

また、イムラは吉野スギを使うだけの木造住宅メーカーではいけないと思って、樹齢60年くらいの吉野スギが2000本くらいある山を分けていただき、樹齢100年になるまで山の仕事を手伝い、木を育てていこうとしています。「川上さぷり」と一緒に、「吉野杉の家」を気に入ってくださったお客様を山にお連れして、苗木を植えていただくなど、吉野スギのことを知っていただく取組みもしています。

地元の木材である吉野スギを使って家を作るという簡単な話。高級木材として高嶺の花だった昔では考えられないですが、今はそれが成立していることは、奈良県民である私にとって嬉しいことだと思っています。

INFORMATION

株式会社イムラ

住所 〒630-8013
奈良県奈良市三条大路三丁目2-7-1
電話 0120-59-5510(代表)
URL https://www.imura-k.com/

レポート:「吉野杉の家」を体感できるモデルハウスでイムラの住まいづくりを拝見

地元の木材にこだわる、いわば原点に立ち返った「吉野杉の家」。奈良県と大阪府内にある、吉野スギを見て触れて感じることができる6展示場あるうちの2つをご紹介します。

株式会社イムラ本社に隣接している「平城山(ならやま)パルク展示場」。開放的なエントランスから一歩中へ入れば、木の香りが心地よく広がります。そして、2017年にキッズデザイン賞を受賞した「吉野杉の床」が真っ直ぐ伸びる床の美しさにうっとりとしてしまいます。寒い時期にも関わらずスリッパを履かなくても温かみを感じるのが不思議なほど。

ロフトのような吹き抜けの空間になっている2階には、吉野スギを中心とした天然の大谷石(おおやいし)や珪藻土などの自然素材が使われています。冷蔵庫に入った吉野スギと他の国産スギを取り出して触るという体験ができるのも、展示場ならでは。もちろん吉野スギが冷たくないことは、あえて詳しくご報告するまでもありません。

最も新しい展示場がABC奈良・登美ヶ丘住宅公園内にある「登美ヶ丘展示場」です。広いエントランスから吉野スギの格子で目隠しをしたシューズクロークなどの収納スペースがあり、「吉野杉の床」の使い方で縦と横のラインの面白さを感じさせます。

家に上がりリビングに入ると、薪ストーブとタイル壁のある吹き抜けが開放感を演出。ここでは、夏涼しくて冬暖かい呼吸する家、省エネルギーシステムの「シーズンブレス工法」、人にも家計にも優しいという高断熱仕様に自然を採り込む技術をプラスした「IM’s ZEROHAS(イムズゼロハス)」、そして、高齢の方に多いヒートショック予防の「高気密・高断熱」のことなど、株式会社イムラが推奨する健康住宅の様々なスタイルを提案しています。一般の木材と比べて、吉野スギがどれだけ耐久性に優れたものかがわかる比較展示もあり、素材の良さについてしっかりと理解することで納得して家づくりができそうです。

吉野スギを使う洋風建築の中に、和室も備えた、今の時代に合った開放的な住宅。優美なデザイン性といい、自然素材が使われているからこその居心地の良さといい、株式会社イムラの住まいづくりの集大成がここにあります。まずは訪れて、吉野スギの良さを実感してみるのがいいですね。

INFORMATION

平城山(ならやま)パルク展示場

住所 〒630-8013
奈良県奈良市三条大路三丁目2-7-1
電話 0742-36-5515/ 0120-59-5510(代表)
URL https://www.imura-k.com/
INFORMATION

登美ヶ丘展示場

住所 〒631-0003
奈良県奈良市中登美ヶ丘5-14-1
(ABC奈良・登美ヶ丘住宅公園内)
電話 0742-44-5515

取材・文:土井淑子
写真:畑中勝如

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2017.12.18

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