Create 木の3Dプリント 木の3Dプリント

Company
株式会社カブク
「木の3Dプリント」
インダストリアルデザイナー
横井康秀氏

高度な技術を備えた職人の世界ともいえる木彫刻のアート。思いのままに木を削り、自由に形を掘り出すには長年におよぶ修行が必要で、木で何かを表現したいと思っても多くの人は十分な加工技術がないために、満足な作品づくりができません。そんな難易度の高い表現世界の裾野を広げ、誰もが簡単に参加できるようにすることで、木の造形の新しい可能性を探っていけないだろうか。しかも日本だけでなく、世界のクリエイターとともにその夢を実現したい。一見、夢物語にも思える大胆な計画を打ち上げ、真剣に取り組んでいる人たちがいます。東京都に居を構える株式会社カブクは、世界中のデジタルクリエイターの活動をサポートするマーケットプレイスサービス「Rinkak」を提供する企業。クリエイターはカブクのサービスに登録すれば、独自のデザインデータを用意するだけで世界中の3Dプリンタ設備を使用して作品づくりを行うことができ、さらにカブクの提供するサイト上で自分の作品を販売することもできるのです。この会社では、日本の伝統技術とクリエイターのマッチングを一つのキーワードとしており、これまでにも漆や藍染の技法を取り入れた3Dプリントサービスを提供してきました。そのような中、いま新たな試みとして注目を集めているのが木の3Dプリントなのです。

2つのリボンがからまったような複雑な形状も、
思いのままに実現できます。

経験やスキルの壁に阻まれていた造形の可能性のトビラを3D技術で開こう 経験やスキルの壁に阻まれていた造形の可能性のトビラを3D技術で開こう

プラスチックなら想像がつくものの、木の3Dプリントとは…。一体どういう仕組みでしょうか。この新サービスに立ち上げ段階から携わってきたデザイナーの横井さんに尋ねてみました。「このサービスでは、間伐材を原料とする木の粉に“つなぎ”のバインダー剤を混ぜた『ウッドライク』という素材を用います。これを3Dデータ通りにレーザーで一層ずつ焼き固めていくことで、複雑な形状も手軽に実現できるのです」。作品例を見せてもらうと、人の手では再現が困難と思われる細かな模様や、鎖のように連結した複雑な形状が見事に形づくられていました。これまでの木彫刻の概念では考えられない形のため、作品を見た人はだまし絵を見たような不思議さを感じるかもしれません。横井さんは、このサービスの可能性をこう語ります。「木のプロダクトをつくるのに、修行も要らない、手間もかからない。そうなれば誰もがどんどん気軽に作品づくりのトライ&エラーができるようになり、もっと面白いモノが生まれるはず。興味を持っているクリエイターの方はぜひ、このサービスを利用して造形の可能性を探ってみてほしいですね」。アイデアが生まれたらまず形にしてみて、出来映えを見ながら何度も繰り返し調整を行っていく、という発想。ソフトウェアの世界では当たり前に行われている創作プロセスを、木の造形というハードウェアの世界でも実現することが横井さんらの狙いです。とはいえ、現状のところ木の3Dプリントには課題も多く、木の粉を固めて造形するため、衝撃や水に弱いという側面があります。しかし、それらの課題点を差し引いても、期待は広がるのではないでしょうか。これから技術の精度が高まれば、もっと強く、もっと質感の美しい3Dプリントも可能なはず。それが具体化していけば、木のプロダクトはいままでにない世界を急速に広げていくのかもしれません。

ウッドライクと3Dプリンタを活用すれば、3Dのデジタルデータに基づいて、自由なカタチをつくることが可能に。従来の工法では考えられない形状を生み出せることが一番の魅力です。また一層一層焼き固める3Dプリンタ独特の工程が、まるで木の年輪のような模様をつくることにも驚かされます。この模様は、本来3Dプリンタでは改善すべき課題ですが、ウッドライクの作品においてはそれも味わいといえそうです。
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