木と文化

和食×木

おもてなしを極めた1ツ星レストランで、お盆の上に置かれた割り箸。その心は?

五條
源兵衛

和食の心は、一期一会。
一人ひとりに、向き合うために

江戸の風情がいまに残る五條新町通り。その趣のある町家に軒を連ねている和食レストラン「五條 源兵衛」は、地元の旬の野菜を中心に据えた料理を提供するお店。とくに朝摘み野菜ならではの深い味わいが楽しめるとあって近年話題を集めています。料理長の中谷さんに、“和食と木の関わり”についてお聞きするためにこのお店を訪ねました。築250年の町家を改築されたお店ののれんをくぐり、席に通していただいて最初に気づいたのは、お盆の上に置かれた割り箸でした。ミシュランで星を取る名店ではてっきり、お客さまに上質な塗り箸を出されるのかと思ったのですが…。「実は和食と割り箸は、切っても切れない関係にあるんです」と中谷さん。「この割り箸は“利休箸(りきゅうばし)”といってもともとは千利休が客人を招く際、当日の朝に一本一本を自分で削ってもてなしたという由来があります。私自身も一期一会の精神でお客さまをお迎えしていますから、その方のためだけに、心を込めて最高級品とされる吉野の割り箸をご用意することにしています」。あらためて用意された割り箸を眺めてみると、柾目(まさめ)が美しく、芳香もあり、感触がやさしい。しかも命ある木だからこそ、どの一本も微妙に異なっており、まさに一人のお客さまにしっかり向き合うおもてなしに相応しい箸といえそうです。

芳しいスギの香りを、野菜へ。
お客さまにより一層の感動を

また中谷さんの料理は、畑で自分が野菜をかじったときの感動をいかにお客さまにも味わっていただくかを一番大切にされているそうです。「この五條という土地には、大げさではなく本当に宝物のような野菜があります。ですから私の仕事は、その特色を最大限に生かすことに尽きると思うんです」。そんな考えから、「郷土の味をカッコ良く」を合言葉に、中谷さんはさまざまな演出の工夫をされているのだとか。この日紹介していただいた一つに、「杉板焼き」という料理法がありました。これは焼いた杉板で野菜を挟んで香りを付け、燻製にして召し上がっていただく料理です。料理法は“超”がつくほどシンプルなのにもかかわらず、スギの香りが五條の野菜を引き立て、絶品のご馳走に。ほこほこした大根や芋を口に入れてみると、爽やかな香りとともに、野菜本来の味わいや甘みがより鮮やかに感じられます。このような和食の演出にも、木が活躍していることを知り驚きました。この工夫によってお客さまは、この場所でしか味わうことのできない感動を経験することができるのです。「五條 源兵衛」の中谷さんとお話しして見えてきたのは、和食というのはイマ・ココにある一期一会の出会いを非常に大切にする文化であるということ。その出会いの場をよりかけがえのないものにするために、木という素材が古くから私たちにとって大切な役割を果たしてくれているようです。

割り箸と
環境

国産割り箸から始まる森林保護

割り箸というと環境破壊をイメージされる方もいらっしゃるようですが、実は、国産材でつくられる割り箸は、丸太から柱や板材を切り出した残りの部分(背板など)から製造されています。本来捨てられてしまう部分を割り箸として有効に活用することで、森林から運び出され売買される丸太の価格が上がります。その結果、森林を管理する方々の収益が上がるため、間伐などによる山の手入れがすすみ、森林を守ることに繋がるのです。

■INFORMATION

五條 源兵衛

住所:奈良県五條市本町2丁目5-17
電話:0747-23-5566
営業時間:昼/11:00~14:00(予約優先)
夜/17:30~20:30(完全予約制)

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