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  • 2023.02.27

    文化財修復・展示棟 修復工房見学ツアー

    受付で配布の整理券

                     受付で配布の整理券

     

    来月OPENから1周年を迎えるなら歴史芸術文化村。道の駅でもある当施設には毎日のようにバスツアーやハイキングツアーのみなさんがショッピングやトイレ休憩に立ち寄っていきます。

    日々、さまざまなツアーの立ち寄り場所として利用されていますが、実は文化財修復・展示棟でも“ツアー”を毎日開催しています。

     

    今回は、文化財修復・展示棟の「修復工房見学ツアー」をツアー担当者がご紹介したいと思います。

     

    このツアーは、文化財修復・展示棟で公開している4分野(考古遺物、歴史的建造物、絵画・書跡等、仏像等彫刻)の修復工房を専門職員の解説付きで巡ります。

    所要時間は約40分、ですが参加者のみなさまと盛り上がってしまって時間がオーバーすることもしばしば。

     

    ツアーでは、中で作業している方たちのご紹介、修理している文化財について、そもそも文化財修理ってどんなことをしているのか、各分野全工程を紹介しはじめるときりがないので、ぎゅぎゅっと要点をわかりやすくお話しするように心がけています。

    とはいえ、修理や文化財の話がメインなので「ソウコウブンカザイ」*1や「イチボクヅクリ」*2「ヒワダブキ」*3など聞いたことがあるようなないような…耳で聞くだけだと意味や構造がぱっと思い浮かばない単語も出てきます。(*1装潢文化財-主に紙や絹を中心とする素材で構成された絵画や書跡といった美術工芸品、*2一木造-像の主要部分を1本の木から刻み出したもの、*3檜皮葺-檜の樹皮を用いた屋根葺き)

     

    ツアーを聞いていて「よくわからない

    そう思ったら気軽にわたしたちにお尋ねください。

    参加人数は最大でも10名程度の少人数なので気軽に質問が出来ますし「なぜ?」「どうして?」と思ったことを知って、もっとそのことについて知りたくなる、知ったことから興味を持ち好きになってもらえたらと思っています。

     

    文化財はどれも作られてからずっとたくさんの人たちが残したい、守りたいと思って今まで受け継がれ残ってきました。そして、文化村で修理してさらに未来へ繋ごうとしています。

    ここ文化村で文化財の魅力を知って、身近な文化財をさらに未来へ伝えよう、そんな思いをもつ文化財ファンを増やしていきたい、そんな気持ちでツアーをしています。

     

     

    修復工房見学ツアーは、休館日を除く毎日13時から文化財修復・展示棟の受付にて整理券を配布しています。先着10名程度なので、日によってはすぐいっぱいになってしまうことも。どうしても参加したい!と思ってくださる方は13時より少し早く来てください。

     

    ツアーは14時30分からで、集合場所は1Fロビー奥 薬師寺三重塔模型の前あたりです。

    (2023年3月1日よりツアー開始時刻は14時に変更になります。)

     

     

    みなさまのご参加をお待ちしています。

  • 2023.01.10

    多坐弥志理都比古神社本殿の修理現場を見学!

    多神社

     

    現在、なら歴史芸術文化村の歴史的建造物修復工房では、奈良県文化財保存事務所が田原本町に位置する多坐弥志理都比古神社本殿(おおいますみしりつひこじんじゃほんでん)(県指定文化財)の修理を行っています。

    先日、文化財保存事務所の方にご案内いただき、多坐弥志理都比古神社(通称、多神社)の修理現場を見学してきました。

    現在、拝殿の奥にある本殿は素屋根に覆われて解体修理が行われています。

    素屋根

      

    写真は今年の6月に撮影したもの。

    屋根の銅板葺(どうばんぶき)を剥がすと野地板(のじいた)が見えてきます。

    (左奥が解体中の銅板、右手前が野地板。)

    野地板

      

    さらに野地板を解体すると、旧野垂木(のだるき)と旧野地板が見えてきました。

    見学させていただいた時は、この旧野地板の解体作業をしているところでした。

    旧野垂木

     

    本殿の屋根は昭和52年(1977)に桧皮葺(ひわだぶき)から銅板葺に改変されており、桧皮葺屋根の下地である旧野地板や裏板が一部残っていることを確認できました。

    この旧野地板や裏板に、桧皮を固定する竹釘が残っているところも見せていただきました。

    修理では、このように部材の年代を調査・記録しながら解体を進めていきます。

     

    また、第一・二殿は墨書から享保20年(1735)に建てられたことがわかりましたが、第三・四殿は建立年代がわかる資料が見つかっておらず不明です。

    発掘調査によって、昔は現在の拝殿の場所に旧本殿があったことが明らかになっています。

    拝殿は宝暦9年(1759)に建てられましたので、第三・四殿は享保20年から宝暦9年の間に建立されたと考えられるそうです。

     

    現本殿を建てる時に、旧本殿の部材を転用している可能性があり、特に第三・四殿には転用材が多く使われていることがわかりました。

    写真中央の四角い穴がある材は、現在、本殿の肘木として使われていますが、この穴は活かされていないため、別の建物の転用材と考えられるようです。

    転用材

     

    部材をよく見ると、一つひとつに白いラベル(番付札)が貼られています。

    文化財の修理では、できる限り部材を再使用することが原則ですので、解体後に元の場所に戻せるよう場所を記載した番付札を貼ります。

    現本殿は各殿とも約160種類もの部材で構成されているようです。

    全てに番付札を貼り、図面も書いていく作業はとても大変な作業であることが想像できます。

    番付札

      

    ちなみに、部材の一部が傷んでいる場合はその部分のみを補修して使います。

    一方、再使用できない部材は新しい部材に交換し、今回の修理で取り替えたことがわかるよう焼印を押します。

    この方法は奈良県では明治30年ころから実践していますが、今では文化庁としてのルールになっているようです。

     

     

    修理に携わる方からの解説を直接聞くことができて、あっという間に見学時間が終わり、多くのことを学ぶことができました。

    ここでご紹介できたものはほんの一部ですので、ぜひ修復工房見学ツアーにご参加いただき、お伝えできればと思います。

    また、文化村の工房内では主に年代などを調査し記録する作業が実施されています。

    ぜひご来村ください!

     

     

    ※2022年11月23日に修理現場を見学するバスツアーが開催されましたが、現在は多神社本殿の一般公開はしておりません。

    ※各修理団体の休業日(主に土日祝日)には、原則として修理技術者が不在となります。

    なお、作業日においても常時作業が見学できるわけではなく、作業内容によっては修理技術者が不在となる場合があります。あらかじめご了承いただきますようお願いいたします。

     

  • 2022.11.27

    幼児向けアートプログラムvol.1「和紙」

    【幼児向けアートプログラム てでかんがえるvol.1和紙】

     

    9月に開催された全6回のプログラム。

    同じメンバーで「和紙」という素材と向き合い、子どもたちは大人が想像する行動を超えて、見る・触る・匂う・試す、それぞれの方法で和紙を確かめ、発見したことを声に出して伝えてくれました。

     

    触る

    「ざらざら」「けばけば」「ずっとさわっていたい」

    ちぎる

    「ホコリみたいなのがでてきた」「さらさらしてる」

    画用紙と比べる

    「あたたかい」「ちょっと和紙とはちがう」

    色水を垂らしてみる

    「あながあきそう」「なんであかないんだろう?」「かわくとパリパリになる」

     

    子どもたちからは「なぜ?」と「発見」を繰り返す姿が見られました。

     

    和紙1

     

    5歳のNくん

    「和紙ってかみだからとんでいきそう」といって紙飛行機を折り、その後も畳んだり丸めたり、ちぎったりして和紙を確かめていました。

    4日目は、お気に入りの和紙を選んで外へ。

    「ういてる」「なぜ?」「とんだ」「くっついた」

    Nくんが部屋に戻ってからも風を楽しめるように、と思いサーキュレーターを準備。

    サーキュレーターを見つけるとすぐに方向を変えたり、持ち上げたりして、「和紙と風」を楽しんでいました。

    和紙だけでなく他の素材も飛ぶのかどうか実験し、量りを使って重さを確かめる姿も見られました。

     

    和紙2和紙3和紙4和紙5和紙6

     

    4歳のHちゃん

    和紙を触ったときに、「ずっとさわっていたい」「よごれてるようにみえる」と言っていました。

    2日目に白楮(しろこうぞ)が室内に置いてあることに気が付き、触ってみてどうだった?と聞くと「かさねてみればちょっとしかきもちよくないけど、かさねなかったらきもちいい」と応えていました。

    和紙を汚れているように見えると言っていたのはどこかな?と聞くと、楮の木をしばらく見つめてから「もしかしたらこれかな?」と指を差していました。

     

    和紙7和紙8

     

    また、各週の子どもたちの気持ちを繋ぐために和紙をお持ち帰りして、Hちゃんはエビフライを作ってくれました。

    「しっぽはあかいマジックでぬったけど、ここ(衣の部分)はちょっときいろだからそのままにした」と言って和紙は真っ白ではなく、色があることを発見していました。

     

    和紙9

     

     

    子どもたちは日を重ねるごとに、自分の疑問と向き合い、「はっけんはっけん!」「みんなみて!」など物凄いことを発見したんだという自信に溢れた姿が増えました。

    最終日には、和紙はみんなにとって何?と投げかけると「最強!」と応えてくれた子どもがいました。

     

    和紙10和紙11

     

     

    10月には『てでかんがえるvol.2粘土』を実施し、子どもたちが疑問を持ち、発見する姿のほか、たくさんの成長が見られました。

    そざいきちは12月から1階体験学習室に移動し、13日(火)~27日(火)に『つむ・ならべる・つながる』のプログラムを行います。

    ぜひご参加ください!

  • 2022.10.13

    大事なものを失ったときのエピソード~アートコミュニケーターの活動

    「もしよかったら、大切なものをなくしたエピソードを教えてもらえませんか」

    文化村に滞在し(2022年8月~9月)作品を制作したアーティストの中尾美園さんの成果展の会場で、学生さんが話しかけます。

    エピソード

     これは、なら歴史芸術文化村が取り組んでいるアートコミュニケーターの活動の一端です。文化村に来ていただいた方に、アートをより身近に楽しんでもらうための架け橋の役割を、現在、奈良芸術短期大学の14名の学生さんが担ってくれています。

     中尾さんは、解体される家にのこされた様々なものを拾い上げ、四角形に切り取り、日本画の技法で模写し作品化しました。今、私たちの身の回りで失われていくもの。それが、百年後千年後には、貴重な文化財になるかもしれない。ものに対する視点、気づきがテーマの一つです。
     アートコミュニケーターの活動は、アーティストが伝えたいことを、来村者にどうアプローチするかが難しいところです。「大切なものをなくしたエピソード」は、中尾さんのアドバイスを受けながら学生さんが企画しました。
    アドバイス 学生さんの問いかけに、この日は3時間ほどの間に10人の方がそれぞれのエピソードを文章にしてくれました。ある方は、古い建物で拾ったという石をこすり絵で表現してくださいました。「作品について深まった」「もう一度作品を観にいきます」など好評でした。

    森本さん益子さんエピソード10石
    学生さんも「みなさん、エピソードがあっていろいろ聞かせてもらえてうれしかった」「時間のない方もいるので「今お時間いただいていいですか」からはじめるとスムーズだった」「正面に立つのではなく横や斜め後ろに立つ」など、コミュニケーションを通して得ることが多いようです。
     アートコミュニケーターは、主体的なプレイヤーです。これまで、来村者と会話を楽しみながらの作品鑑賞や鑑賞ポイントに関連したワークショップなど、学生さんならではのアイデアを活かした様々な活動を行ってきました。

     芸術文化体棟で展示などが行われている期間中の土日祝日を中心に活動しています。文化村に来られた折には、アートコミュニケーターとの対話を楽しんでいただけたらと思います。この看板が目印です。

    看板


     

     
  • 2022.09.26

    ”アートの架け橋” 学生の「アートコミュニケーター」活躍中!

     なら歴史芸術文化村では、対話や体験を通して気づきを広げ、新しいことを知る楽しさへとつなげていくことを活動の理念としています。芸術文化においても、来村者が作品をより深く知ることでアートを楽しめるよう、アーティストや作品と来村者をつなぐ担い手としての「アートコミュニケーター」を育成する事業に取り組んでいます。
     今年度は、奈良県唯一の芸術系大学である奈良芸術短期大学の学生さんが参加し、意欲的に活動を行っています。
    ただいま実施している、中尾美園さん(なら歴史芸術文化村令和4年度前期滞在アーティスト)の作品展示でも下記のとおりアートコミュニケーターの皆さんが活動します。
     “アートの架け橋”として活躍している学生のみなさんとの、アートを通じた交流に是非ご参加ください。

                            

    1.活動日時:10月1日(土)、10月2日(日)
    今後も展覧会にあわせて活動予定

    2.場所:なら歴史芸術文化村 芸術文化体験棟3階

    3.活動するアートコミュニケーター

    10月1日(土)奈良芸術短期大学美術科デザインコース2年生2名 日本画コース   1年生1名

    ・10月2日(日)奈良芸術短期大学美術科日本画コース 1年生1名 クラフトデザインコース 1年生1名
    4.参加方法:事前予約不要、参加費不要
      現地のアートコミュニケーターに気軽にお声がけください。

  • 2022.08.16

    企画展「文化財研究中!―なら歴史芸術文化村×連携4大学―」開催中!

     

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    文化財修復・展示棟の地下1階展示室では第2回企画展「文化財研究中!―なら歴史芸術文化村×連携4大学―」を開催しております。

     

    なら歴史芸術文化村は大学と連携し、文化財の調査研究をはじめ保存や活用、次世代を担う人材育成にかかる取り組みを行っており、現在は天理大学、立命館大学アート・リサーチセンター、奈良県立大学、東京藝術大学の4大学と連携協定を結んでいます。

    本展では各大学の特色ある文化財の調査研究やなら歴史芸術文化村との取り組みについて紹介しています。

     

    天理大学 「発掘調査の裏側見せます」

     調査道具や映像などを通して発掘調査をリアルにお伝えします。

     明治時代に廃寺となった内山永久寺を、絵図を元に再現した模型も展示中!

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    立命館大学アート・リサーチセンター「アジア仏教寺院のデジタルアーカイブと可視化」

     當麻寺西塔の3次元計測データを用いて制作した模型や、構造を透視して見ることができる映像等を展示中!

     また、今は見ることができないボロブドゥール寺院のレリーフをタッチパネルで自由にご覧いただけます。

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    奈良県立大学「仏像のアナログ化」

     普段触ることができない文化財や訪れにくい場所にある文化財を3Dプリンタで再現した複製を展示しています。

     写真の「仏足跡」(手前)とレリーフ(奥)は触ることができます!

     

    東京藝術大学「仏像文化財の保存と修復、そして伝承へ」

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     写真奥から木心乾漆造り、一木造り、木寄せ構造を可視化した模刻。

     仏像の制作技法の変遷を辿ることができます。

     ※写真中央の「唐招提寺 伝薬師如来形立像 復元模刻」は8月21日(日)までの展示です。

      8月23日(火)からは「唐招提寺 如来形立像 石膏像」が展示されます。

     

     

    なら歴史芸術文化村では大学と連携して、未指定文化財の調査を行っています。

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    展示中のこちらの仏像は桜井市北山区にある平安時代の薬師如来坐像です。

    展示後に東京藝術大学の保存修復彫刻研究室にて修復される予定です。

     

    また、こちらの薬師如来坐像は奈良県立大学とのコラボ企画として、「#みんなで仏像」を行っています。

    ご来場のみなさまに薬師如来坐像を撮影していただき、SNSにアップされた写真を元に、3Dデータをつくるというプロジェクトです。

    さまざまな角度から撮影することで、よりよい3Dデータが完成しますので、ぜひたくさん写真を撮ってみてください。

    Twitter、Instagram、Facebookに「#みんなで仏像」のタグを付けて投稿をお願いします!

     

     

    本展の関連イベントとして、これまでにギャラリートークと仏像講座を開催しました。

    実際に発掘調査を担当した天理大学の学生によるギャラリートーク。

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    仏像講座では、国宝・聖林寺十一面観音菩薩立像の光背の3Dレプリカの拓本をとるワークショップを開催しました。


     

    今後も連携4大学座談会やギャラリートークが開催されますので、ぜひお越しください!

     

    【連携4大学座談会「ここでしか聞けない!文化財のウラ話」】 要申込

     4大学の先生方が一同に会し、調査研究のご経験を踏まえて、奈良県の文化財やその魅力、今後の文化財研究について語っていただきます!

     8月21日(日)10:00~11:30

     登壇者:小田木治太郎さん(天理大学 教授)

         田中覚さん(立命館大学 教授)

         山田修さん(奈良県立大学 特任教授)

         岡田靖さん(東京藝術大学 准教授)

     会場:なら歴史芸術文化村 芸術文化体験棟1階ホール

     定員:100名

     

    【ギャラリートーク】 (申込不要)

     調査研究に関わった方たちによるギャラリートークを開催します。

     お時間になりましたら、地下1階展示室にお越しください。

     8月20日(土)13:30~14:30

      山田修さん(奈良県立大学 特任教授)× 岡田靖さん(東京藝術大学 准教授)

     9月3日(土)13:30~14:00

      立命館大学の学生によるトーク

     

     

    【展示概要】

    開催期間:2022年7月23日(土)~9月19日(月・祝)

    休 館 日:月曜日(月曜が祝日の場合は翌平日)

    会  場:なら歴史芸術文化村 文化財修復・展示棟 地下1階展示室

    主  催:なら歴史芸術文化村

    共  催:天理大学、立命館大学アート・リサーチセンター、奈良県立大学地域創造研究センター、東京藝術大学文化財保存学保存修復彫刻研究室

  • 2022.06.21

    ヤギがお待ちしています。「ー間(あいだ)のことー RIMI TAKAGAKI」

    芸術文化体験棟では、奈良ゆかりのアーティスト交流プログラムvol.1「­-間(あいだ)のこと-­RIMI  TAKAGAKI」を開催しています。(~626日(日))

    会場では、奈良県橿原市在住の彫刻家・高垣リミさんの作品が展示されています。

     

    搬入、展示の舞台裏、鑑賞のポイントを紹介します。  

     5月31日(火)、高垣さんのアトリエで梱包。
    この日は朝から小雨がパラパラ。
    アトリエから輸送トラックまで屋外を通るので、空模様を心配しながらの作業です。
                     

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    nekkuresu  この「東と西の間」というヤギの作品は、漆を精製するときの綿で制作されたものです。全部で32頭からなり、今回、そのうち28頭を展示させていただいています。

     この日は、 映画『ホームアローン』のように置いてきぼりにならないよう、高垣さんが事前にヤギたちの首にナンバーを記したネックレスをつけてくださいました。(ありがとうございます)


        tennzi1 トラックへの積み込み時には、心配していた雨も上が り、芸術文化体験棟に、28頭が無事搬入されました。

    このように横たわっている姿は、このときだけのもので、壮観です。
     一番奥に脚を上げているヤギがいます。なにやら体操しているようで、くすっと笑ってしまいます。高垣さんによると、この作品は、「ひーくん」という名前だそうです。会場では、窓ぎわの先頭にいます。ぜひ「ひーくん!」と声をかけてあげ てくださいね。


     鑑賞ポイントの一つ、ヤギたちの眼(まなこ)にぜひご注目ください。

     高垣さんが絵付けした磁器がはめ込まれており、一頭一頭それぞれ異なります。
     ヤギが見た光景が、高垣さんの感性で抽象化され表現されています。
     ヤギたちはどんな光景を見て、どんなことを考えているのでしょう。

     今回の交流イベント、6月19日(日)に行われたアーティストワークショップ「あのときの眼をつくる」では、参加者それぞれが、これまで自分の眼に焼き付いた光景を透明半球に立体造形しました。

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    雲が波間に映る沖縄の海、高垣さん、ヤギ などなど。

    まぶたは、文化財修復工房からいただいたヒノキのかんなくずを利用しています。

     

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    美しい景色とともに、お待ちしております。

    ぜひ、お越しください。




    奈良ゆかりのアーティスト交流プログラムvol.1「ー間のことーRIMI  TAKAGAKI」

    会期:2022年6月26日(日)まで(月曜休館)

    時間:9:00~17:00

    会場:なら歴史芸術文化村 芸術文化体験棟3階

    主催:なら歴史芸術文化村

     



                                                              

                                                            

     

     

     

     

     

     

     

  • 2022.06.01

    企画展「観音のいます地 三輪と初瀬」開催中です。

    文化財修復・展示棟の展示室では第1回企画展「観音のいます地 三輪と初瀬」を開催しております。

     

    奈良県桜井市の三輪・初瀬地域は、大和国が形成される中心地であり、古来神が宿る地として篤い信仰を集めてきました。本展では桜井市に伝わる著名な十一面観音菩薩像である、長谷寺十一面観音像と聖林寺十一面観音像に注目しています。
    今回は特に長谷寺十一面観音菩薩像の歴史と、本展示の見どころをお話します。
     

    長谷寺本尊十一面観音菩薩像は、古来霊験あらたかな像として名声を集めてきました。奈良時代の造立当初より幾度もの災禍に見舞われ、現在の像は八代目です。長谷寺本尊像は、ほかの十一面観音像にはみられない特徴を持っており、その姿を模した像が多数つくられ信仰されました。

     

    長谷寺本尊十一面観音菩薩像の特徴
    ① 方形の台座に立つ
    ② 錫杖(しゃくじょう・杖状の法具)を持つ
    ③ 脇侍に難蛇(なんだ)龍王と雨宝(うほう)童子を配する

     

    今回展示している上之坊十一面観音菩薩像(出陳No.4)や一乗寺十一面観音菩薩像(出陳No.6)は、制作当初は一般的な十一面観音像としてつくられたものの、長谷信仰が隆盛を極めるにつれて、錫杖を持たせるようになったと考えられます。


     一乗寺 十一面観音菩薩像 平安時代(12世紀)

      

    また、長谷寺慈眼院に伝わった十一面観音菩薩像(出陳No.1)は、近年の調査によりクスノキでつくられている可能性が高いことが分かりました。本体の頭から体、足まで一つの木で彫りだしているのも大きな特徴です。よくみると足の前に垂れる天衣(細長い布)も本体と同じ木から彫り抜いていることが分かります。一本の木から彫ろうという意識がとても高かったことが分かりますね。

     

    本展示の会期も残り3週間を切りました。この機会にぜひ、十一面観音さまに思いを馳せ、1000年以上続く信仰のありようを感じとっていただけたら幸いです。(中井)
       

      

    【展示概要】
    第1回企画展「観音のいます地 三輪と初瀬」
    会期:令和4年4月29日(金・祝)~6月19日(日)
    会場:なら歴史芸術文化村 文化財修復・展示棟B1階 展示室
    主催:なら歴史芸術文化村
    協力:東京藝術大学、奈良県立大学、桜井市
    午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)、月曜日休館



  • 2022.05.25

    當麻寺仁王像の修理が始まります

     

    先週、文化村に1体の仏像が運び込まれました。

    當麻寺の入口を守る、仁王像(金剛力士像)のうち阿形(あぎょう)像です。

     

    仁王さんは口を開く「阿(あ)」と、口を閉じる「吽(うん)」の2体一対で、門の左右に配置され、寺院の境内を守っています。

    當麻寺の仁王さんは阿形像の口からニホンミツバチが出入りするようになり、約30年の月日をかけてミツバチが頭の中で巣を作ってしまいました。昨年、1万匹ともいわれるニホンミツバチはお引越しが完了。その様子はテレビなどで多く取り上げられたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

     

    當麻寺仁王像は江戸時代の作で、ヒノキ材の寄木造、眼には玉眼が嵌められています。大阪仏師であった田中主水家に伝わる仏師系図によると、作者は高福(1766年没)という仏師であると書かれています。仁王門は延享二年(1745)の上棟ですので、ほぼ同時期の作と考えられます。

    仁王像は、葛城市の有形文化財に指定されています。

     

    阿形像はニホンミツバチの影響で損傷が激しく、また経年の劣化で矧ぎ目が緩んできているので、解体修理が行われることになりました。これから2年間かけて美術院が文化村工房で修理を行います。

    阿形像の修理完了後、さらに次の2年をかけて吽形像の修理が行われる予定です。

     

    さて、阿形像の搬出作業は、美術院により3日間かけて行われました。

    像高339cm。重量もあるので、チェーンブロックで吊り上げての搬出です。

    お寺や関係者が見守るなか、慎重に門の外へ出します。

     

    阿形像はトラックで文化村へ運ばれました。

     

    月末頃から、文化財修復・展示棟の地下1階で修理の様子を公開します。

    火曜日から日曜日まで毎日開催される修復工房見学ツアーでは、より近くで作業現場を見ていただくことができますので、ぜひご参加ください。

     

    搬出時、通りがかりのご参拝の方が、

    「仁王さん、4年間も一人ぼっちになるなんて寂しいなぁ」

    とつぶやいていらっしゃったのが印象的でした。

     

    仁王さんが寂しくないように、皆さんも當麻寺にぜひお参りくださいね。(竹下)

  • 2022.03.25

    企画展「観音のいます地 三輪と初瀬」のチラシができました。


     

    文化財修復・展示棟の展示室では開村記念特別展「やまのべの文化財」を開催中ですが、次回展示の準備も進めております!

     

    4月29日から開催する企画展「観音のいます地 三輪と初瀬」をご紹介します。

     

    奈良県桜井市にある三輪と初瀬は、大和の信仰の要地でした。

    その周辺に残る十一面観音菩薩像を紹介する展示です。

     

    十一面観音菩薩は、疫病や災難を取り除き、暮らしを幸せにしてくれる仏として信仰されてきました。

     

    長谷寺で最も古い十一面観音像や、平等寺の秘仏本尊、聖林寺十一面観音像の忠実な模刻像などが一堂に会します。

    今回出陳する仏像のなかには初めて展示で紹介される像もあります。

    会期中には長谷寺のお坊さんによる講演、聖林寺ご住職のトークセッション、こども仏像講座などのイベントも開催します(お申し込み方法は近日中にお知らせいたします)。

     

    新緑の季節、文化村で展示を見ていただき、三輪と初瀬の地へお出かけされてはいかがでしょうか?

    皆さまのお越しをお待ちしております!

     

    安楽寺から望む初瀬の山々

     

     

    【展示概要】

    第1回企画展「観音のいます地 三輪と初瀬」

    会期:令和4年4月29日(金・祝)~6月19日(日)

    会場:なら歴史芸術文化村 文化財修復・展示棟B1階 展示室

    主催:なら歴史芸術文化村

    協力:東京藝術大学、奈良県立大学、桜井市

    午前9時~午後5時(入館は午後4時30分まで)、月曜日休館